Style Flipうんぬん言う前に

1. Style Flipとは?

投資における”Style Flip”とはプロの世界では”割安株(Value)投資”を期待されている人が”成長株(Growth)投資”に手を出したり、反対に、”成長株(Growth)投資”を期待されている人が、”割安株(Value)投資”に手をだして、本来の自分のスタイルとは異なることをやってしまうことを指す。

相場は循環的な要素が強いことから、例えば現在のように成長株全体の調子が良くなるなかなか儲かることが難しい局面だと、ついつい、その逆にある調子のよい銘柄群に自分のポートフォリオの一部を傾けたくなるのが人間の性であり、何の制約もなければそれを実行する人が世の中には多いはずだ(その制約については後日お話しする予定)。

そんなことなので、Style Flipは一般的に”好ましくない”と解釈される。

2. Style Flipの前に

そもそも、自分のStyleというのをどうやって確立してきたのか?そもそも、そのStyleで本当に強みを発揮してきたのか?というものを、この手の話しをする前に確認しておきたいと思ったのが今回の目的である。

投資を始める人が、最初から「自分はこういう信念をもって、こういうスタイルで投資プロセスを行う。」と考えて相場に臨む人は少数派だと思う。よくあるパターンとしては以下か。

① 廻りで儲けている人の話しを聞いて真似してみて何となくフィットした
② 様々な投資手法を検討して自分はこの手法でアルファが出やすいと感じた
③ 投資の仕事をしており「お前はこのスタイルでやってくれ」と言われ否応なく始めた

きっかけはどうでも良いのではあるが、①から③のどれでも、実際投資を始めた段階から、小さく小刻みに投資のPDCAを廻して成果を上げていくことを目指すのは共通である。
それでは、①と②で主に個人投資家で行うことと、③で機関投資家が行うことで大きな違い目があるのはどこであろうか?

それは、③であると、そのStyleの中での優劣を競わせられるということだ。

例えば、過去1年のリターンがTopixで+10%、自分のポートフォリオが+15%だとする。①と②の個人投資家の多くは、そもそも+15%というリターンに満足してしまうだろう。ちょっと相対リターンを勉強している方だと、Topixに5%勝っていることで満足するであろう。そして、それだけで実は十分ではあるかもしれない。

ただし、③で競争に晒されているPMは、同様のStyleを採用しているファンドの平均パフォーマンス(例えは、GrowthのインデックスやValueのインデックス)が+20%であったとすると、自分のポートフォリオの+15%というリターンは実は相対的に-5%となり、パフォーマンス的には見劣っている(アンダーパフォーム)と判断されてしまうのだ。
つまり、実はそのStyle自体で継続的に勝つことがその人の能力では難しいと判断されてしまうリスクがあるのだ。

ここで何を言いたいのかというと、①や②で投資を始めて、実は相対的(同様のStyleの中)には自分の成績は見劣っているのにそれに気付かず(=自分がそのStyleでは優位性はない)、絶対パフォーマンスや対Topixとの相対パフォーマンスの良さだけを捉えて自分はこのStyleで勝ち続けていると考えStyle Flipをしないで運用し続けるのと、③のように同じStyleの人の中で相対的な競争優位性がなく、このStyleで勝つのは得意ではないと判断してStyle Flipしてしまうのと、どちらが良いんだろう?というと、実は、誰にもその答えは分からないというしょうもない結論になってしまうのだ。
結果として、そのStyle Flipというのは違った角度からの話しでその善悪を判断するしかなくなるのだ(後日、お話し予定)。

3. 結論

Style Flipの善悪が判断される枠組みについては結論を持ち越すが、上記で①や②であった人に少なくとも現段階で問いたいのは、同じようなStyleで運用している人との相対比較を行いましたか?ということである。

これを問うことで、実はもっと投資手法の改善ができた(できうる)可能性もあったのではないか?ということだ。

どこまでの時間と労力をつぎ込むかという問題もあるが、本当に自分がそのStyleで競争優位性があるのか、たまたま、そのStyleの風が吹いてそれに乗っかってうまく儲けることができたのかは少なくとも把握した方が良いですという結論で今日は終えたい。

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