流動性で適当なことを言わせない為に

“1日の出来高が1億円だと十分じゃない!証券会社から出来高3億円はないと機関投資家が入ってこない“と証券会社の方に言われるんで流動性対策に困ってますと僕のところにくる経営者やIRの方が多いので、これについて、誰でもできる分析法を伝えたい。

以前、投資家によって基準は異なるが時価総額は、その会社が投資対象になるかどうかと言う観点では重要だと話した。それと並んで、この“流動性“も重要なのは事実だ。

けど、これについては超適当な説明しか今まで提示されなかったので明確にすることが目的だ。

ここでは、1つ、“こうやって考えれば良いんだよ“と言う案を提示する。これは、CEOの方やIRから問い合わせがあると、いつも答えていることなので、普段お話ししている方には繰り返しになってしまいますが、お付き合いを!

そして、小学生のような算数を使うだけなので、折角なので、今後頭の片隅においておいて欲しいと思う。

大切なのは以下の3つである。

1) AUM(その機関投資家の運用サイズ;asset under management)
2) その機関投資家の組入銘柄数
3) investment guidelineで決められているその機関投資家がポジション解消までに必要とされる日数;liquidation

例えば、銘柄Aの過去30日の平均出来高が1億円/日としよう。

それに対して、HFマネージャーBさんのAUMは200億円(片道)、銘柄組入数100銘柄(ロングサイド)、ポジション解消までの日数制限が7営業日だとしよう。因みに、マーケットインパクトを与えたくないので、関与率の最大値を1日の出来高の30%としよう。

先ずは1銘柄あたりの平均組入サイズは1/100(銘柄)=1%
1銘柄あたりの組入額イメージ = AUM*1% = 200億円 * 1% = 2億円
2億円を組み入れるのに要する日数 = 2億円 / (平均出来高* 最大関与率)
                = 2億円 / (1億円*30%) = 6.7日

このように計算すると、ポジション解消までの日数制限7営業日の範囲内で入っており、この運用者は銘柄Aへ投資することが可能となる。

HFマネージャーBさんの運用金額が多くなりAUMが300億円(片道)になったとしよう。
上記と同じように考えると、3億円を入れるのに要する日数は 3億円/(1億円*30%) = 10日となる。この場合、残念ながら、investment guidelineで決められている流動性の制限である7日を超えてしまってるので、このままでは買えない。

ただ、Bさんはどうしても銘柄Aが魅力的だと考えており投資に踏み切りたいと考えていたとする。この場合はどうしたら良いのか?

非常に単純である、投資ウエイトを下げて買えば良いのだ。例えば、AUMの1%ではなく、半分の0.5%しよう。

その場合、AUM300億円に対して0.5%に組入れとなると、銘柄Aへの投資額は300億円*0.5% = 1.5億円となる。この金額を組み入れるのに要する日数は 1.5億円/(1億円*30%) = 5日となる。
これにより、investment guidelineで定められている7日以下となり投資に踏み切ることが可能となる。

このように、1日の出来高が1億円だから機関投資家が入れないとかない訳である。

特にIRの方は無駄なポジショントークに惑わされないように注意しましょう。

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