ヘッジファンドの報酬って高いの?

ヘッジファンドの報酬体系
高額で知られるヘッジファンドの報酬体系は千差万別だが、オーソドックスな体系を紹介する。まずはサラリーマンと同様に年ベースの固定給与があるものの、インセンティブボーナスが固定給与を上回ればインセンティブボーナスのみが収入となる。このインセンティブボーナスの決定方法は極めてシンプルである。基本的には、自分が獲得したリターン(自分が儲けた利益総額)に対してペイアウト(リターンの内自身の収入になる割合)が10~20%程度で決められる。

例を示そう。仮に自分に任されるキャピタル(運用する元手の資金)が300億円、パフォーマンス(キャピタルに対する年間での運用利益率)20%だったとしよう。前提として、固定給与は2000万円、ペイアウトは15%とする。


キャピタル
300億円

パフォーマンス
20%

固定給与
2000万円

ペイアウト
15%

この場合、

運用リターン:300億円×20%=60億円

インセンティブボーナス:60億円* 15%=9億円

になる。

鋭い人は既に分かってると思うが、自分のパフォーマンスはある程度は予測できても、それはやってみないと分からない。そのような中で「キャピタル」,「ペイアウト」の2つの要素がインセンティブボーナス算定に当たって重要になる。ペイアウトは約20%が上限になるだろう(パススルーの仕組みにより、最近ではシタデルやBALが25%を提示しているという話も聞く)。キャピタルは実績によってついてくるが、多い人であれば500億円程度まではいけるであろう(グロスではない)。

以下がインセンティブボーナスの式のまとめである。

リターン=キャピタル*パフォーマンス

インセンティブボーナス=リターン*ペイアウト

運用者が気を付けるべきこと
ヘッジファンドの運用は、これだけ儲かるなんてあり得ない仕事だなと言われることもあるが、一方でリスク管理については非常に厳しい。基本的にはHigh Water Markというシステムが採用されており、自己更新の利益から5%低下(ドローダウン)したら、強制的にキャピタルが半減される。そして、ピークから10%低下したら雇用契約が打ち切られるのだ。

下の図で考えてみよう。当初、+10%までは順調にリターンを残せたものの、そこから苦しみ、3%低下して運用開始から+7%まで低下した。ここはピークの利益から3%しか落ち込んでないので、今までのキャピタルで運用されることが許される。そこから、更に順調にパフォーマンスを残し、運用開始から+15%までリターンを残した。ただし、その後は、銘柄選択に苦しんでピークの+15%から5%だけパフォーマンスは低下して運用開始から+10%まで戻ったとする。

画像1

この場合、運用開始から+10%の好成績にもかかわらず、ピークからのパフォーマンスが-5%となっているので、強制的にポジションが半分に減らされてしまうのだ。

これを対策するには、ポートフォリオを特定のリスクに傾けることを避けなければならない。例えば、Growth一辺倒とか、Value一辺倒、若しくはヘルスケア一色、テック関連一色、更にはデルタで大きなポジション(買い-売りのポジションの傾き)を持ったりするのは避けなければならない。

それと同時に、確信度が高くても、ある程度利益が乗ったら利益確定をした方が良いし、損失確定もそんなに躊躇している暇はない。ここが非常に難しいところだ。

これを考えると、ヘッジファンドの運用者が身を削って市場と戦っていることが分かるであろう。


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