空売り残高に対するプチメモ

毎日、以下の添付のように日証金から空売り残高が報告されている。この、空売り残高の主体には国内及び外資系の証券会社の名前が並び、個人投資家などがよく“機関投資家の売り仕掛け“と叫ぶ光景を目にする。“機関投資家の売り崩し“など極端なものもある。ここで1回整理することが重要だと考えた。

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例えば、売りの主体にあるモルガン・スタンレーやCredit  Suisseなどの証券会社は実は、これらの銘柄を実際に彼らがショートをしている訳ではなく、彼らの裏側にいるヘッジファンドなどの顧客が売っているものをまとめて報告しているに過ぎないのだ。これは俗にプライム・ブローカー(PB)業務と言われるものだ。つまり、株を借りて売っているのは、ヘッジファンドなどの投資家である。

つまり、この売り残の報告を見て間違えてはいけないのは、1;証券会社が売っているのではなく、あくまでもPB業務を通してサービスしている顧客が売っている、2;1社が売っているケースもあるが、複数社が売っているケースもある、ということだ。特に、2は重要で、PBを通して証券会社がサービスを行っているヘッジファンドの数が多く、得てしてショートの対象になる銘柄も似たようなものが多くなるので、大抵の場合は何社にも重なって売っているパターンが多いだろう。(例えば、PBのサービスを提供している10社がある銘柄をショートしても、報告は証券会社が一括して行う)

次によく個人投資家が言う“売り崩し“と言う表現だ。より、本質的な問題は後で言うが、そもそも売り崩しなどコンプラ体制強化の下でできる訳ない。まず、ショートのダウンティックは禁止されている。売り圧力を継続的に与えることは可能だが、売り崩すと言うことは基本できない。加えて、過度な見せ板などは相場操縦にもなり得るので、これは今やできない。これらのことにより、よく使われいるこれらの表現は基本的には間違っている。

さて、個人投資家はこれらの機関投資家の(証券会社のではない)空売り情報についていくべきか、ついて行かずに立ち向かうべきかと言う“べき“論に移ろう。先ずは、余程、確度高い情報がない限りは何もしない方が良いと言う結論だ。今や、ヘッジファンドの中でもLS戦略(買い建てと売り建てを一緒に行いマーケットリスクを取らない)が一般的である。そして、残念なことに総体的には、買いのポジションに対しての思い入れが売りのポジションに対する思い入れより大きい場合が圧倒的に多い。結果として、何も調整をしなければ、得てしてロングの比重が高く、ショートが小さいポートフォリオになるケースが多い。これを避ける為に、ショートをヘッジとして積み増し、全体のバランスを整えるのだ。この場合、このヘッジのポジションはあくまでもいロングとのバランスの問題となるのだ。例えば、SaaS関連に対して、銘柄選択をして本来はSansan、マネーフォワード、チャットワークなどをロングサイドで持っているが、ショートサイドのαを生むような銘柄を見つけられずに、しょうがないので、フリーをショートするようなケース。空売り残高には、フリーが登場することになるが、このヘッジファンドの運用者は別にフリーに対して弱気な訳ではなく、あくまでも自分のポートフォリオ内で生じた過度にSaaS関連に偏ったロング(買い)サイドのヘッジの為だけに売ったものなのだ。

しかし、これを見て、個人投資家がヘッジファンドもフリーに対して弱気だから、自分もフリーをショートしようとすれば、これは全く単なる思い違いということが理解できるであろう。

結局、ファンダメンタルズが大切で過度にこのような需給の情報に左右されるべきではないと言うのがここでの結論と思ってもらっても良い。


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