海運株をどう判断しようか。

以下は個人的な感想文に過ぎず、何らの投資判断を促すものではない。

日本郵船、商船三井などの海運株の戻りが止まらない。11月以降のValue優勢の相場に乗って低PBR株の逆襲に乗ったというファクター面からのサポートとともに、大きな要因となっているのが海運市況の戻りだ。下の図は上海のコンテナ市況の動向だ。既に2020年初頭の水準から既に3倍近く上がっており、流石に上がりすぎだろうとの意見が多いのも事実だ。

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しかしながら、空運や鉄道のようにより戻り余地が大きいと思われるエリアより、依然としてセルサイド・アナリストのコンセンサスはこのモメンタムについて行きたいという意見が多いのも事実だ。その背景には、PBR1.0倍程度の戻りまでは期待して良いだろうとの意見だ。現在、日本郵船、商船三井でそれぞれPBRは0.91倍、0.70倍である。PBRの1.0倍がひとまずのターゲットとすると日本郵船は良いところまで上昇したが、まだ出遅れている商船三井には上昇余地があるではないか、というのがいつものセルサイドのロジックだ。

来期ベースでのROEは日本郵船、商船三井の両者とも10%前後になるだろうし(商船三井の特損がなければ)、そうなると、このロジック自体も成立しうる。

さて、では2社の株価の推移を見てみよう。

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2020年の初頭から、青字の日本郵船がオレンジ色の商船三井を大きくアウトパフォームしているのが分かる(両者の相対株価はグレーの棒線)。これはコロナウイルスの拡大により、JALやANAなどが大幅に減便し、航空荷物の単価が上昇。子会社のNCAで8機の飛行機を所有する日本郵船が大きく恩恵を受けることを期待して上昇したと考えらえる。流石に、やや行き過ぎたとの見方もあって年末に向けて商船三井が巻き返したが、12月後半に日本郵船が年次の経常利益計画700億円に対して第3四半期で1000億円に到達する見込みと発表し、その後は再び日本郵船がアウトパフォームした。1000億円のうち25%程度を航空貨物が占めることになる。このように、コンテナの好調と航空貨物の単価上昇の恩恵を受けて好決算となる日本郵船と異なり、出遅れている商船三井は一体どうなのか?

残念ながら、市場の期待に反して、なかなかこの2社の株価のギャップが埋まってこない。この背景には、航空貨物の好影響はないものの、コンテナ市況が絶好調の影響を同等に受けるものの、一部赤字の船の契約などを特別損失を計上して、好調な利益を相殺してしまうのではないかという懸念があるように思われる。

そして、両銘柄にとって良い意味でも悪い意味でも気になるのがコンテナ船のスポット価格の急騰である。例年、2−3月は価格が弱含む傾向があり、これまで株価も堅調であったことから、スポット価格が一休止すると株価もコレに釣られる形で利益確定が優勢になるとの懸念である。

さて、先ずは前者の特損懸念については、確かに、その可能性も捨てきれないのは事実であるが、こと視線を来期に移すと自然体で経常利益の増益要因となるいくつかの要因がある。LNG船の新しい契約50億円や今期かかったLNG船の修繕費用50−70億円の喪失などにより、恐らく100−150億円程度の利益押し上げ要因が見込める。このバッファは魅力的だ。

後者については、3、4月にコンテナ船の契約更改があるが(5月発効)、仮にスポット価格が季節的に弱含んだとしても、昨年対比では依然として大幅に高い水準にあること、そして、収益構造的に60%がスポット契約ではなく年契約であることから、こちらも利益見通し的にそこまで懸念材料にはなり得ないだろう。

こう考えると、やはりコンセンサスではあるが、商船三井が日本郵船より相対的に魅力的だということはありそうだ。


























































































































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