投信の世界をチラ見

ヘッジファンドで生きていると、自分たちは年金やら投信の運用者とは違ってパフォーマンスが全てだと差別化理由を言う人が多いのも事実だ。確かに、自分の腕が良いと思っているPMの多くは、ヘッジファンドでその腕を試してみたいという衝動に駆られるであろうし、結果として、ヘッジファンドのPMの質が全体的に高いとみて問題ないだろう。一方で、投信のパフォーマンスはどんなものかとチラ見してみた。

一定の基準で選んだ投資信託215本の過去1、3、5年の対TOPIXでの相対パフォーマンスを計算してみると、それぞれの期間においてTOPIXを上回っていた投資信託の比率は62%、69%、80%と非常に高かった。以前も話した通り、母集団が100を超えるもので勝率が60%を上回るというのは大したもので、この62%、69%、80%というのは強烈で、数字自体が間違っているのではないかと思うほどだ。

直ぐに考えられる要因が、ファンドのタイプがグロース若しくは小型株に寄っていたのではないかということだ。先ずは、過去5年間のグロース(Growth)とバリュー(Value)の推移を調べてみる。色々な指標がこのGrowth、Valueにはあるのであるが、既に手元にあったTOPIXのGrowth、Value指数を今回は使ってみた。ご存知の通り、この2年間のGrowthの圧倒的なアウトパフォーマンスは顕著であった。

画像1

であると、5年前から3年前の2年間での対TOPIXでのパフォーマンスが気になるので、この部分に焦点を当てて上記と同様にファンドの勝率を調べてみた。実は、この2年間でも累積ベースで対TOPIXに勝っているファンドは81%もあった。

これは結構な違和感があるので、ここでファクターで言うSizeがどう寄与したかをTOPIX小型株指数とTOPIXとを比較することによって確認してみる。こちらは、逆に、2016年から2018年まで圧倒的に強く効いていたファクターであった。

画像2

恐らく、投信全体のポジションとして、中小型株バイアス、グロースバイアスがあって、過去5年間はこれがうまく交互に機能したというのが、圧倒的な投資信託の成績の一因かもしれない。

因みに、過去5年の累積パフォーマンスから過去3年の累積パフォーマンス(2016−2018年)を調べて、モメンタムのファクターがほぼ横這いで動いてた期間にAUM30億円以上のファンドがどう推移したかを調べると、押し並べて好調でその勝率は81%と、これまた非常に高かった。以下が単純にGrowthのファクターと小型のファクターの対TOPIXでの相対リターンを累積したチャートである。

上記のように殆どのファンドが対TOPIXで過去1、3、5年ともに高比率で勝っていることを考えると、2017年から2018年までの第1フェーズと、特に2020年の第2フェーズのアウトパフォームをうまく捉えたという形であろう。

画像3

これは投信のPMのスキルが劇的に上がったのか?

実は投信の分類にはグロース、バリュー、ブレンドと3種類の分け方がある。ブレンドと言っても実態はグロースに偏っている投信もあると思うが、ここでは保守的にグロースは“グロース型“のみと定義付けする。その場合、今回の対象ファンドにおけるグロース型は59%となる。因みに、ブレンド型のファンドの半分がグロースに寄ってると仮定すると、その率は73%にまで上昇する。実は、このように、設定がそもそもグロース若くはグロース寄りのファンドが多くて、たまたま2019年以降にグロースの大相場が来たと言うのが多くのファンドがアウトパフォームした要因に思える。

と言うのは、反対にバリューのファンドで過去1、3、5年全て相対パフォーマンスがマイナスだったものは対象ファンドの67%にも達するからだ。

因みに、今回グロース型投信のベンチマークをTOPIXのGrowthインデックスと変えてみると過去1、3、5年のアウトパフォーム率は、それぞれ66%、49%、61%となる。落ち着きどころとして、この程度であると納得感がある。

結局、個々のPMの能力というより、2019年から2020年に起きたグロースの大相場と、そもそも投信の設定がValueを強調するものよりGrowthに寄っているものが多かったというのが賞賛すべき勝率をもたらしたというところか。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?