ツイート実況の話
こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。
connpassなどで知ったオンラインイベントに参加する際に、スライドなどのスクリーンショットを撮って内容をSNSで報告し続ける活動をしています。一連の発信を行う事によって会の様子を自分で後から思い出しやすくなるだけでなく、他の人が後でイベントについて知りたくなった時にあらすじを追う事が出来るようになります。数年前に東京の勉強会に始めて参加したときに初めて知った概念でした。人マネで自分も始めて、以降ずっと続けています。
今回は、そのツイート実況の自分なりに工夫している点をまとめてみたいと思います。勉強会とのかかわり方として、一般参加者・登壇者・運営者・まとめ作る人の4属性全部を自分がもっているため、それぞれの視点で発信している点が、普通のつぶやきとちょっと違う点かもしれません。
参加者・登壇者・運営者視点での願望が自分のツイートに反映されている
イベントの参加者の属性をざっくり分類すると、参加者・登壇者・運営者の属性というか役割があります(1イベントで重複してることもある)。この役割を自分が受け持っているときに、他の参加者に対して「こうしてくれたらうれしいな・盛り上がるかも」と思える発信のされかたがあります。
参加者としてのうれしい発信
・後でイベントを見返したいときに誰かが情報がまとめてくれている
・ハンズオンでどのボタン押したらいいのか見失った時に見るものがある
(↑は、自分がコンテンツを良く理解するための材料が欲しい、という感じですね。)
登壇者としてのうれしい発信
・誰かが自分の講演内容で気に入ったところをスクショで拡散してくれたらうれしい
・登壇内容をきっかけにフォローとかして話しかけてくれたらもっとうれしい
(自分のコンテンツを知ってもらうための材料が増えるといいという感じ)
運営者としてのうれしい発信
・参加者同士の交流が生まれそうな感想のやりとりが発生するとうれしい
・登壇してくれた方の内容が広まって、この勉強会だけでなく他の機会も得られるきっかけになってくれたらうれしい
・勉強会自体をエンジニア間で拡散してくれたらうれしい
(イベントの協力者達を知ってもらうための材料が増えるといいという感じ)
ツイートまとめ人としての自分
・togetterまとめる時にみんなが誰のトークに感想言ってるのか分かると作業が楽
(イベントスポンサーとしての自分(まだやったことないけど))
・自分がスポンサードしてる事を他の人が広めてくれたらうれしいかも
以上、上記の願望があります。しかしそんな都合のよいアウトプットをしてくれる人はなかなか希少ですし、まして無条件でというのは虫が良すぎる話です。なので、まずは自分がやってみようというノリで各種ツイートに反映させています。
以下で細かく紹介してみます。
つぶやき環境
つぶやくためのPCにセカンドモニタ、Stream Deck、カメラなどをつないでいます。勉強会受信用のアプリ(Zoomとか)、巻き戻り用の配信(Youtubeとか)、画像編集用のパワポアプリ、常駐のスクショアプリLightShot、ツイート用のブラウザを同時に動かしています。
LightShotは切り抜き範囲の記憶機能があり、PrtScnボタンを一回押すだけで切り抜き待機まで行けます。StreamDeckの上段3つをPrtScn, Ctrl+C, Ctrl+Vに対応させているので、左から順番に押していくだけで画像投稿が出来ます(その間1秒くらい)。ハッシュタグのテキストを下段に設定しておき、続けて下段をポチポチ押していくことでハッシュタグスクショ投稿が出来上がります。ハンズオンの際などは、APIキーなど、映っちゃまずい物が時々コピーされたりするので、ツイートでなくパワポに一旦貼って該当部分を隠してから投稿したりもします。
ツイッターの閲覧・書き込みは普通のweb版ツイッターでやっています。こんな感じです。
一連のつぶやきの中身の説明
・イベント参加告知
自分が参加する事を周囲に伝える直前つぶやきです。普段はこのつぶやきの下に本編のつぶやきが延々ぶら下がる事になります(ツイートツリー化)。どういう経緯で参加する事にしたのかや期待する内容などを付けたりしています。イベント主宰者個人からの勉強会告知を引用する事が多いです。
つぶやいてOKなイベントなのかどうかも主催者側に事前に問い合わせておいて、大丈夫な範囲を確認してあったりします(特に初見参加のイベント)。
イベントハッシュタグを確認したり、そもそもないイベントについては自分で勝手にハッシュタグを作ってツイートツリーを作り始めます。
・会場の様子
オフライン会場に居る際は現場の様子、オンライン会議スタイルの場合は視聴環境などをつぶやいたりもします。Youtubeの公開配信の場合は視聴URLを共有します。運営側の時は行き方のツイートも共有したりしてます。
・勉強会イベントの趣旨
(今回は明確に示されてるページは無かったので、別の日のイベントから)
冒頭に勉強会の趣旨の説明が入る事があります。この情報により、勉強会のターゲットの人々や、取り扱うコンテンツ、会へのかかわり方などの情報が得られます。すでに参加している人には既知でもう意味のない情報ですが、運営者にとっては未参加者への次回呼びかけにもなる重要な部分なので拡散します。
司会・主催の人についての情報も視えるようにします。コミュニティメンバーの文化が分かる事が他の運営者的には重要なので、落とさないようにしています(でも本編で飛ばされがち)。
・タイムスケジュール
一般参加者の方はあまりこの種類のつぶやきを共有することはありませんが、進行を可視化するうえで重要なのと、イベントを知らなかったけど今知ったみたいな人を誘導するうえで結構重要だったりします。ツイートツリーにしてあるので数個前のツイートに視聴URLが書いてあるため、すぐアクセスしやすいようになっています。
・素材のダウンロード
時間がありそうなときは、ダウンロード先のURLもツイッター投稿に含めてしまって、後追いの人の手間を減らしたりします(どうせ自分も踏んでるので)。
・スポンサーキャンペーン
イベント参加者に対してのみ発行されるお得情報であれば載せないですが、そうでない性質のキャンペーンであれば、手続きなども共有してアクセスしやすくします(そうしないと自分が忘れる)。
・休憩
休憩スライドもスクショします。集合時間が書いている事が多いからと、togetterまとめる時にこれも目印になるからです。
・ハンズオンの場合は、自分も実際に走りながら実況してる
説明のスライドを追いながら、自分の環境でもエディタやブラウザでどういう操作を行っているのかを共有するようにしています。Youtubeのみのハンズオンなどでは、参加者の反応が講師側から分からないので進行度の共有も兼ねています。
不具合があった時に、指示が不十分だったのか私のオリジナリティの部分でそれが引き起こされたのかを後で検証できるようにしています。
出来た、とか、出来てない、とかも発信していくと、進行速度の調整になる可能性があります。
ブラウザ上での操作は、UIの項目が多かったりするのでスライドと自環境を同じ構図でスクショしておくと間違った時の違いに後で気づいたりできます。
こうして最後まで完走できればハンズオン実況ミッション終了です。お疲れさまでした。
・クロージングと#アンケート大事
次の勉強会イベントの情報が最後に示されることが多いので、こちらの情報と、事後アンケートの案内(QRコードやURL、Discord招待リンクなど)を共有します。自分でアンケートを出した報告もすぐに報告して #アンケート大事 タグも付けています。
参加者の次の行動にイベントが役立ったかどうかが問われますので、ここは結構気にしていたりします。↓は、私の「クロージング」発言のツイッター検索のリンク。
・登壇資料の拡散協力
イベント終了後にハッシュタグをさかのぼって確認し、登壇者がスライドを公開している場合はリツイートしたりします。
・リプライ機能によるツイートツリー化
一番最初のツイートに対してリプライをつけ、そのリプライに対して次のツイートをリプライします。それを繰り返すことで一本のツイートツリーを作ります。こうしておくことで、普段20~50回くらいのつぶやきの中のどれがリツイートされて第三者の目に触れても、詳細を見ようとクリックした時点ですべての実況にアクセスすることができるようになります(冒頭の画像のように表示される)。
リアルタイム参加であればそのままタイムラインを見ればよかったりもしますが、時間がたってしまうとまとめて見る事が難しくなってしまうこともあり、このスタイルにしています。1個1個バラバラのツイートだと点でしかアピールできませんが、繋げる事によって最大50個分のフックを用意できるので面でアピールする感じになります。
色分けをしてみるとこんな感じ
4月に参加した #cuteeworks イベントでのツイートツリーの各つぶやきをみて、参加者向け(赤)、登壇者向け(緑)、運営者向け(青)で大まかに色を付けてみると、このような感じになります。運営者の人が助かるつぶやきが会の冒頭とクロージング、参加者の人が助かるつぶやきが真ん中にあります。休憩とかが入ると、そのつぶやきは主に運営用になります。(区分けは厳密じゃないのであとで直すかもしれないです。)
独自の工夫(取り扱い注意)
・別地域の巻き込み
イベントによっては、内容に興味を持ちそうな他の地域の運営の人が思い浮かぶことがあります。ツイートツリーのどこかにメンション付けると、見てもらえる事があります(ミュートされるかもしれない)。
・別イベントの巻き込み
同じ日にイベントが連続する時など、自分の移動のタイミングで両方のイベントのハッシュタグを一つのツイートにまとめたりしています。内容の違う2つのコミュニティが私のツイートツリーに気づいて知らないイベントを知るきっかけにしています(つもり)。
すべてのつぶやきをこれにすると、さすがに無関係な内容が混じってうるさそうなので、最小限にはしています(ミュートされる)。
接点の薄そうな複数イベントを全部巻き込むこともあります。ハッシュタグの渋滞みたいな危険ツイートです。
・エンジニアの巻き込み
以前見た何かと共通点が見いだせたときに、「好きそう」とつけてつぶやくことで、オンライン上の会話のきっかけを作る試みをしています。過去に登壇などでコンテンツを見せてくれた人をこのように召喚しますので、見せてくれてない人を呼び出すことはありません。
好みを読み違えているとブロックされます。
・感想を極力入れない
これは実況ツイート全編にわたって心がけていることですが、ツリーを作っている最中に自分の感想を混ぜる優先度を極力避けています。登壇者の方が発表内容のツイートとしてそのままRTしやすいように成形しています。
普通の参加者の方は感想ツイートをどんどんやってくれていいのですが、それだけだと、登壇者のタイムラインが感想ツイートのRTだけになってしまって具体的になんの話をしたのかが周囲に伝えられなくなります。
そこを補う意味で実況ツイートをなるべく客観的な内容にとどめています。
・自分語り・お気持ちは引用RTで後から
内容に同意できなかったり、自分自身の事をなにか言いたくなる時はそれでもあります。そういう内容はツリーが出来た後にぽつりとつぶやいているか、実況ツリー内の該当ツイートをセルフ引用RTする形で表現していたりします。気分によっていろいろですが、ツリーに分岐でリプをつけると、その影響で全体が読みにくくなるので、実況ツイートの一本道は守ります。
基本的に実況が忙しすぎるので、お気持ちを考えている余裕はほとんどありません(のでしない)。
・(自分がその場で理解する事)<<(できるだけ発信を間違い少なく続けること)
これは私のツイート実況を良く知る人からよくもらうコメントですが、「よくリアルタイムで短時間に理解して書けますね」と言われます。しかし実のところ、私が聞きながら新たに理解している部分はほぼ0だったりして、理解するための脳は使っていません。
聴いているお話の流れに全神経を使って、聴いたままをただ書き写しているだけにしています。そうすることで、頭がパンクしないまま走り切れるようになってきました(それでもパンクしてる日もある)。
問題は事後の懇親会で、書き写しただけなのでほとんど理解してないので、懇親するための質問(登壇内容に即したもの)をその時点で思いつけないんですよね。
終わった後にみんなのツイートと自分のメモを見返してみて初めて自分の中に知識としてインプットされます。
・自分一人の発信だけでも、イベントアーカイブとしてのtogetterまとめがつくれてしまう
ツイートツリーの中でイベントに必要な要素の紹介が大体網羅される状態になることをtogetter作者の目線で目指しています。極端な例ですが、誰も私の他につぶやく人がいないイベントでもその全容が大体わかるものが発行可能になります。これは後述の、再利用資源としての使い方に繋がります。
・自分が登壇する時に自分だけイベントから消える問題
勉強会で自分もライトニングトークをする時があります。その時に自分と同じ実況スタイルでやっている人はほとんどいないため、自分自身の発表内容がつぶやかれない事になります(悲しい)。明確な回避法もないので、
ツイートを実況に挟んで、その下に自分の登壇資料ツイート(予め直前に公開済み)を引用RTする形にしてみています。この程度であれば参加者の方が見つけてRTしてくれたりして私としてもちょっとうれしいって感じになっています。
ツイート実況の効果は人のネットワーク強化と、イベントの資産化(多分)
このようなスタイルでイベントごとに関わり続けていると、いくつか効果が出てきます。①学びのおすそ分け、②ネットワーク強化 と、③イベントの共有資産化です。
①学びのおすそ分け
ツイッターという外部メモリみたいな空間に書き出す事によって、自分自身の頭の整理がある程度なされた状態になるだけでなく、キーワード検索可能になります。イベントを手伝っている振りをしながら、自分自身の脳内データベースを強化することにつながっています。
他の人から、なにか相談を受けたときに、「〇〇の会での△△さんがやっていたよ」と教える時のソースにもなります。リアルタイムでの非参加者や、後日の思い出し作業に使ってもらえると思っています。
(また、note記事を書くときにベースとなる素材としてもツイートを使っていますので、記事を書く時の労力はコチラで省ける事になります。)
②ネットワーク強化
一番わかりやすい現象としては、参加者からのいいね・フォローが私に付きます。あとは、ツイートツリーの起点になっているツイートが良くリツイートされます。実況中の会に関心を持っているという事だと思いますので、そういうアクションを取ってくれた方のタイムラインを見にいって、自分の気づいていない勉強会の存在を知ったりできます。
私のツイートをきっかけに技術を知った人が、その発表者をフォローしに行ってくれたりもしていると思います。距離関係なく関心軸つながりでの関係が増えて行けば結果的にアクションも生まれてくると思うので良い事だと思っています。
番外編として、図らずも自分が現地に行けていない勉強会にスライド素材にされて登場するケースもあります。
③イベントの共有資産化
まず私の話をすると、活動を動画でなく文字情報の塊としてアーカイブする事を目的に、自分が運営するイベントのtogetterまとめを作っています。こうすることで、動画を後から早回しで観るよりも短い時間で、イベントの概要をつかむことが出来ます。togetterまとめが出来てしまえば、展示会や現地開催のイベントなどで名刺交換した人に、自分がこういう活動をしているという実例をURLで渡すことができます。先方の関心事に合わせて、開催したイベント内容などを見てもらえる事が活動のキモになっていて、その準備がすでに出来ている状態になります。
あとはイベント開催に協力してくれた各所に報告書代わりに共有したり、機会を呼び込むための資源として再利用しています。数字面で言うと、私作成のツイートまとめのページビュー数がそれぞれ500から7000くらいの間に収まる感じです(多ければいいものではないので、コントロールしている)。定員5人とかのイベントを開いて各自で情報を抱え込むスタイルよりも、知られる可能性がはるかに高いです。
他の運営者のイベントにおいても、togetterまとめはいろいろな用途で使われていると思っていますが、運営者にとってはツイートの総数がある程度の水準に達してないとわざわざまとめる気も起きないような気もしています。参加者の私がまとまった量をつぶやくことで、その運営者の人がアーカイブを残そうという気持ちになれば成功です。
デメリット
SNSをやらない層には全く刺さらない
勉強会に出る人たちが主につかっているSNSで発信していないと、他の人に発信が見つかる事もなく、上で書いたような効果も見込めません。
発信しているイメージでむしろマイナスに扱われることもある
コミュニティ活動や、公での発信行動に対してネガティブな先入観をお持ちの人が実はたくさん存在します(私もそうでした)。ネガティブな先入観の方からの支持を得る事はここ5年間くらいうまくいっておらず、したがってそういう層からの機会は訪れなくなります。
企業の人は業務とバッティングする危険も
企業所属の方がこういう利他な発信を重ねると、転職活動ともとられるかもしれないですね。職場での立場が悪くなるようであれば推奨することはできません。
また、転職活動を実際にしている方においても、守秘義務の伴う案件を主に抱える会社からは敬遠されることもあるかもしれません。
フォローを外されたり、ミュートされる
ツイッターで一度フォローしていただいても、私が別のテーマの勉強会で実況している間はフォロワーさんのTLが実況でまみれる事になります。あまり興味ない話題が流れる事になるので、私のアカウントがミュートされたりすることに繋がります。実況用アカウントを作る運用もありますが、それだと普段の私の行動と紐づかなくなっていくので、そのデメリットを避けてあえて素の状態でこのスタイルをしています。
まとめ
まだまだ書き切れていない部分がありますが、最近の実際の発信を例にとって解説してみました。各個人のLTを実況する時の工夫とかは別途書こうとおもいます。
最近、オフラインイベントへの回帰によって、ますますイベントのハッシュタグツイートが減っているように感じています。総量が減る事によって、参加ツイートを発信する文化も弱くなっていっていくだろうと思ったので、ちょっとこの機会に自分の習慣を言語化しました。
いきなり全部をやるのは歴戦のコミュニティマネジャーですら不可能だと思います。一般参加から勉強会参加を始めた方は、「〇〇勉強会参加中」とか、「△△、面白い」とかの一言感想をハッシュタグ付きで始めるところから気軽に試してみて頂ければ全然十分ですので、発信の練習に勉強会イベントを使ってみてもらえればと思います。
勉強会がツイートで大いに盛り上がって、いろんな機会のきっかけになっていくと嬉しいです。
(2023/5/23 初稿 8060字 600min)