オンライングループワークの設計(6月編)

こんにちは。お疲れ様です。
6/26,29,30と某大学にて科学研究費助成事業(科研費)の若手研究者向け書き方セミナーのワークショップが行われました。私は外部アドバイザーの立場で、大学ではなじみの薄いオンラインワークショップの運営方法の構築をお手伝いしました。
備忘録代わりに方法を書き留めておこうと思います。

スタイルと、前提となる参加者像

 まず本セミナーを構成する要素は、
①セミナー講師によるポイント解説
②ざっくり質疑タイム
③研究者が小グループに分かれてのグループワーク
④講評
⑤こまかい質疑タイム
となります。③の時には、モデレータの講師が小グループのヘルプに適宜応じる形を目指したいというリクエストがありました。
 参加者像としては、
イベント運営(オンラインイベントは初めて)
+教授(授業では何かオンライン講義ツールを利用)
+参加者の研究者(参加は応募制でリテラシー不明)
+オブザーバー
になります。

目的は相互チェックによる分かりやすさの向上

 予め課題として出されている科研費原稿を、講師のセミナーの内容に沿った形に修正する力をつける目的で行うグループワークでした。客観的に原稿を見る目を自身ではなく近い領域の他の研究者が読んで指摘しあうことで、自らの原稿の伝わりにくさを自覚して改善するという事でした。

ツール選定

現状「誰でも使える」ツールを使って不慣れによる事故を減らす目的で、特に技術的な飛躍はせず、ひとまずZoomをうまく運用する路線で設計していきました。前々項の①②では通常のZoom会議で全員集合状態で講演を聴き、③でブレイクアウトセッションを使ってグループワークに移り、④⑤は再びメインセッションで全員集合して議論を重ねるスタイルになりました。ブレイクアウトルームの割り振りを決めるのは、ホスト役の主催スタッフさんになりました。以降、講師の先生によって運用も変わりましたので、以下バラバラに書いていきます。

①6/26, 29は二人組グループワークと、運営-参加者間連絡Google スプレッドシート併用

理系の講師の先生の方針は、グループワーク中の参加者用ツールは特に指定せず当事者間で決めて自由にやるという方針になりました。

事前準備
・メールアドレスのリストとGoogle スプレッドシート(表計算の表を活用)を一つ

運用

 セミナー開始前に必要な資料が全体宛て電子メールで共有されます。Zoom会議に全員集合後は、Zoomのチャットの全体宛てメッセージとファイル添付の両方を用いて、運営→受講者への情報共有がなされるようになっています。一方、受講者→講師のルートは、チャットor電子メールで伝えるのが標準になりました。

 グループワーク中は、チャットテキストの送受信が正しく行われるか分からなかったので(ヘルプボタンの発動エフェクトも見落としやすい)、事前に準備した表計算スプレッドシート(URL共有で全員編集可能)を、運営⇔受講者相互の連絡用ログとしました。バラバラになる前にこのシートへのURLを別のタブで開いておくことにより、一行コメントで意思表示が出来るようになりました。

画像2

こんな感じ。
 ヘルプを求められた時点で、講師の先生がホストにブレイクアウトセッションの再割り当てを受けて助けに行く仕組みになりました。解決したら先生がメインセッションに戻ってきて、また呼び出されたら行くというのを繰り返しました。(ブレイクアウトセッションのクセがまだわかっていなかったので若干先生の出入りの前後で混乱がありましたがおおむね平穏に終わりました。)たまに落ちる人が居ても、連絡用の表に書き込んでもらう事で速やかに対応ができるようになっていました。

②6/30 は数人グループワークと、Slack&運営-参加者間連絡Google スプレッドシート併用、文章推敲用Google ドキュメント併用

 人文・社会系のセミナー内容は主に文章構成や文そのものをわかりやすく書き直す事が課題になっていました。そのため、たたき台となる文を当事者間+先生で共有する必要が発生しました。

”セミナー開始前に必要な資料が全体宛て電子メールで共有されます。Zoom会議に全員集合後は、Zoomのチャットの全体宛てメッセージとファイル添付の両方を用いて、運営→受講者への情報共有がなされるようになっています。一方、受講者→講師のルートは、チャットor電子メールで伝えるのが標準になりました。”これはその前の回と共通です。

事前準備
・メールアドレスのリストとGoogle スプレッドシート(表計算の表を活用)を一つとGoogle ドキュメントをグループの数の分だけ用意。
・Slackのチャンネルを建て、参加者を事前招待しておく。

運用
 ブレイクアウト中は、Slackのチャンネルに資料共有をかけて連絡を受け持ちました。スプレッドシートの方は、Slackがダウンしたら活躍する予定でしたが当日はあまり出番がなく、運営→参加者の段取り連絡くらいにとどまりました。両方使える事で、連絡経路への安心感はあったように思います(その分両方のウインドウを見張らなきゃいけないけど)

 事前に用意してもらった原稿の中から特に重点的に直す文章をコピーして、各グループに割り当てられたGoogle ドキュメントに貼ってもらう形にしました。修正案を議論して、最終的なアウトプットをペーストされた文章の下に書き込むことで変化などが判るようになりました。

 先生は、グループすべてのGoogleドキュメントをブラウザで開いておけば、各グループの進行具合をリアルタイムに目視できます。講評を入れる時にも進行が止まっている様子を把握する際にも役に立つようになったのではないでしょうか。

 この回では共同ホストを割り振った先生がブレイクアウトセッションのそれぞれを自律的に移動することが出来たので、各グループをずっと渡り歩き続ける形で指導が行われていたようです。

やってみた感じ

 分散→合流後の流れがスムーズにいったので今回はシステムの不慣れによる離脱者は居なかったです。基本的にすべてウェブのサービスを利用したことで、事前のソフトインストールは最小限で済み(zoomだけ)、会に集中することが出来てたように思えました。

 受講者→講師の質問がどれだけ活発に行われるかが不安な設計でしたが、巡回が出来た事もあってか、合流後の質問タイムは予定時間目いっぱいまで使われていました。

その他注意点

 当日より前に、必ず講師を交えたリハーサルとツール運用の確認を行い、不明点を共有するようにしました。可能な解決策はそこで出しておいて、当日まで運用を変えないようにしました。登録名とZoom表示名が異なっていて運営スタッフが混乱してしまう問題については、「名前を氏名に変更することで入場の受付が完了する」という条件を提示して、解決しました。ハウリング対策に運営スタッフにヘッドセットの一斉導入もしてもらいました。

画像2

 この画像をバーチャル背景に設定して人を映さない方向に向けてカメラONしておくと、zoom参加者枠の1マスがまるまる会場案内になります。これを使って画面共有することなく新たな入場者に注意を伝える事ができるので便利です。画面が25分割くらいに小さくなっても読める程度の文字の大きさが必要です。

 共同ホストを持っているかいないかでブレイクアウトセッションに飛んだ先・戻った時の挙動が異なるらしいというのは最近分かりました。先生に共同ホストを渡してブレイクアウトセッションに飛んでもらうと、そのセッションから自力で①別のブレイクアウトセッションに飛ぶ②メインに戻るの選択肢がありますが、②を経てからメインから別のブレイクアウトセッションには自力飛べませんので、ホストにグループを割り振り直してもらう必要があります。ややこしいです…('ω')

 グループワークの時間がハッカソン並みに長いイベントがもしあれば、連絡ツールとしてSlack活用は大きな意味を持ってくると考えますが、今回は短い時間設定だったので、小回りの利く運用を採用しました。部署で初めて開催したので、慣れの意味もあったので上手く行ってよかったです。スタッフの皆さんお疲れ様でした!


 さて、本日7/1はオンラインワークショップの設計の勉強会が #DevRelJP 主催で行われました。今後のイベント設計に大いに参考になるので公開された発表資料などを引用させていただいて報告を終わりにします。

参考資料

たかひろさん(参加者視点)

おいしさん(ハッカソン運営)

ぬかがさん(ハッカソン運営)

ばんのさん(アイデアソン→ハッカソン運営 MIROのキャンバスが登壇資料)


(2020/07/01 執筆120分 3299字)