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④三種競技〜夢走〜
「よーい、スタート!」
あれから、僕たちの陸上部は本多先生の指導の甲斐あってか、とても良い空気感の中で練習が出来ていた。噂を聞きつけて、ほぼ幽霊部員であった上級生も頻繁に顔を出すようになった。
「よーし、今日はタイム測るよ。400m3本!」
と、本多先生の指揮の下、タイムトライアルが始まった。
短距離の選手も中長距離の選手もこの400mタイムトライアルは1番キツイ練習だ。
インターバルを取りつつ、3本走りきった。皆、体力を使い果たし、グラウンドに倒れ込んだ。
「よーし、そのままダウンランして今日はもう終わろう。」と、本多先生が言うと、皆、乳酸でカチコチに固まった足をなんとか動かそうと立ち上がる。
「休むなよー、動かせよー」
厳しくも愛のある指導に僕たちは有意義な時間を過ごせていた。
「おつかれさまでしたっ!」
最後の体操を終え、部室に戻ろうとした時、ふと、リエが練習している体育館の方を見た。寒くもないのにドアは締め切られていて外から練習風景を見ることは出来ない。
最後にリエと話したのは1ヶ月前、
「あのね…」
「…え?」
「…来月に、大きな試合があって…その…あんまり会わんほうがええかな、って…」
「そっか…」
「ごめんね。」
「ううん。頑張ってな。試合。」
と、簡単な会話で僕たちの恋は一旦休止符を打った。
強豪のバスケ部は毎週他校との練習試合や地区予選などスケジュールはぎっしりだった。
実際のところ、フラれた?のか?いや、試合に集中したいだけか…、でも…
力無く歩く僕に、本多先生が声をかけてきた。
「次の試合、おまえ400mでエントリーしてみないか?」
「え?」
その時の僕の専門は100mと200m。あと、背が高いということで、時々ハイジャンプ(走り高跳び)をやっていた。
「きっと、良い結果が残せると思うぞ。」
「そ、そうですか…?」
「あと、先生考えたんだが…そのデカい身体を活かせる。良い種目がある。」
「はい?」
「三種競技だ。」
「三種…競技…?」
「ああ、三種競技は400mと走り幅跳びと砲丸投げ。この3つの合計点数で競い合う。きっとおまえに向いてると思う。どうだ、やってみるか?」
「…あ、はい!」
「実は、先生も中学生の時はやってたんだ。」
「え?そうなんですか?」
「ああ、だから俺の持てる知識を全部おまえに与えるよ。」
「ありがとうございます!頑張ります!」
僕の陸上生活が、この三種競技と共に大きく変化することになる。そして、本多先生との忘れられない青春物語が始まった。
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