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②出会い〜夢走〜

 ダイとヒロと僕は小学生の頃からの腐れ縁で、小3から始めたクラブ活動の延長で中学も陸上部に入った。

 ダイは細身で中背で淡白な性格。たまにキレる。ヒロはひょうきんで、背の高さは前から数えた方が早い。僕は背がデカく、自分で言うのも何だが性格は控えめ。3人とも実は末っ子なのだが、やたらと気が合う。リーダー気質な兄貴風を吹かすキャラがいないのがお互いに心地良いのだろう。

 僕はついさっき校舎に入って行ったバイク乗りの男の人が少し気になっていた。一瞬だったがこちらを見ていた気がしていた。「あの人がもしかして…新しい先生??」

 「はい、集合!!」顧問の森先生が珍しく高らかに声を上げ、グランドに降りて来た。いつもは2階の職員室の窓から顔を出すだけなのに、こういう時は、テンション高く張り切っているので少しうっとおしい。
 「え〜、今日から練習を見てくれる事になった本多先生だ。みんな、よろしくな。」と、さっきバイクから降りてきた男の人を、僕たちへ紹介した。若い先生は一歩出て「本多です。今日から赴任しました。よろしくお願いします。」と、深々と頭を下げた。
 突然の出来事に戸惑う僕たちは、よ、よろしくお願いします。と口々に言った。そんな僕たちの心情は普段から全く意に介さない森先生は「じゃあ、本多先生の指導にしっかり従うように。」とだけ言い残し、職員室へ戻って行った。

 「じゃあ、続きをやりましょう。いつもはどんな練習してる?」本多先生が僕たちに尋ねてきた。「も、腿上げのドリルを3本ずつ?、、で、ダッシュやって、それから曜日ごとのメニューを…」ヒロが答えた。「そっか、では、やってみようか!」と、僕たちはいつもの感じで練習を始めた。といっても、ちゃんとしたドリルのやり方なんてものは自分たちにも良く分からず、これでいいのかなぁ?と思いながらやっていた。

「はい。いいですね。細かいところは後々修正して行くとして…じゃあ、次、ダッシュ行きましょう。4レーンあるから、先生も並ぶね。一緒に走ろう。」と、僕たち3バカの隣に本多先生は並んでスタートラインに立った。「よーい、はい!」一斉にスタートした、、っ!?、速い。あっという間に先生の姿は前に。速い速い。背中がどんどん離れていく。…はぁ、はぁ、はぁ…たった30mダッシュでこんなに差がつくなんて。しかも、先生はウォーミングアップもしてない状態で…

僕たち3バカは完全に呆気にとられた。が、それは同時に僕たちへの一筋の光が見えた瞬間でもあった。




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