饒舌な孤独と静寂の交流
今は荒れて寂れつつある街。かつて青い鳥が住んでいた街。
そこに建てた庭付きの小さな家に、独りで住んでいる。
通りに面した庭がある、遮るものがない小さな家。
BTTFにでてきたような、郊外にありそうな住宅地。
その街に住む人たちは、いつも仲良しのお隣さんとおしゃべりに夢中。
身の回りのことやテレビで見たこと。珍しいネタが入った日には、みんな集まって大騒ぎ。
孤独とは無縁の、人と人の触れ合いがある、明るい日々。
そんな街の一角に、誰とも交流をしない変人たちが住む場所がある。
彼らは毎日黙々と、ただただ独りで自宅の庭を掘り返している。
決して敷地から出ることはなく、同じように庭を掘る隣人に声をかけることもない。
似た者なのに、つるまない。
彼らが掘り返した庭から出てくるものは、それぞれ様々てんでバラバラ。
古いマンガに、アニメのテープ。壊れたゲーム機。大好きだったロボのオモチャに、時代遅れの外車のミニカー。
ガラクタを掘り出して眺めては、道路脇に広げて、道ゆく住人にこれみよがしに見せている。
彼らは互いの獲物に一瞥はするけれども、褒めあうようなことはまずしない。
ヘンな人たち。愛想がなくて静かなくせに、独り言だけ妙に饒舌な、寂しそうな人たち。
でもね。
毎日毎日何年も、小さな庭を掘り進めると、地面の下のさらにその下に、広大な空間があると気づく。
自分ちの下と隣家の下は、そしてこの街すべての地下は、実は同じ場所につながっている。
地下にあるのは、喧騒とは無縁の澄んだ空間。尽きることない大水脈。
彼らは普段、挨拶もおしゃべりも褒め合いもしないけれど。
辿り着いた地下で顔を合わせたなら、静かに会釈して隣りに座り、ひととき同じ景色を眺め、同じ水をすくって飲む。
朝がくれば無言で別れて地表に帰り、そしてまた、ただ自分の庭を掘る日々に戻る。
彼らは交流しない。
彼はずっと孤独の中にいる。
しかし決して、独りぼっちではない。
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