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テレマークは難しい 〜21/22スキージャンプW杯 個人第11戦Garmisch-Partenkirchen〜

Garmisch-Partenkirchenは、ベストゲームメーカーなのか。

昨年に引き続き、元日から良い試合が見れました。

個人的にKlingenthalがこんな試合になると予想していました。

ここらで様式美の小林陵侑、Eisenbchler(GER)によるワンツーが見れるかなと思っています。

こっちの試合だったか〜。。。

と少々残念に思っています。

横綱相撲

小林陵侑の2本目。

Eisenbchler(GER)が143.5mのスーパージャンプを披露し

予選の再現を試みました。

しかしそれを見た運営は、躊躇う事なく一段ゲートを下げました。

陵侑の実力を理解しているからこその判断。

私はこの運営によるゲート下げによって、陵侑の勝利を確信しました。

難なくグリーンラインを越え、しっかりとテレマークを決めた陵侑。

点差は0.2点と僅差でしたが、見ている誰もが着地した瞬間に勝利を確信したでしょう。

悪い風に当たらず、運営も味方につけ

横綱相撲とも言える勝利でした。

この2試合

飛距離では上回られているものの

Lindvik、Eisenbchler、共に飛型点で上回る陵侑。

死角がありません。。。

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この勝利によってGeigerからイエロービブの奪取に成功。

さらにはジャンプ週間のポイントも

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5位以下に30点つける展開に

力勝負でジャンプ週間優勝の可能性があるのは

13.2点差に踏みとどまったLindvikのみとなってしまいました。

何が起こるかわからないとはいえ、ジャンプ週間の勝利はほぼ手中に収めています。

テレマークの物議

勝負の鍵となったテレマーク。

荒れたバーンに追い風傾向ということもあって

HS近辺まで飛んだ陵侑とEisenbchlerはテレマークに苦戦しました。

#なぜかGranerudはビタラン

#ビタビタランディング

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物議を醸したのはEisenbchlerの1本目の飛型点。

Bジャッジのドイツ人審判がEisenbchlerの1本目に18.5の得点をつけたことによって

コアな日本のジャンプファン、そして熱狂的なポーランドファンが疑問を呈していました。

若干、判官贔屓な私という目線で見ていきます。

疑問の根幹は優勝争いに関わる局面だったというところ

陵侑との比較にあると思っているのでその目線で。。。

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多くのジャンプ台でジャッジタワーにカメラが設置されジャッジと同じような目線で放送されています。

まずは陵侑の1本目の着地

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斜め下から見下ろす、このジャッジ目線で見るとほぼ両足着地といえます。

そこから↓

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着地の衝撃を使いながら前後にずらしていくものの

右足のスキーが流れて

横にスキーが広がってしまい、完璧なテレマークとはいきませんでした。

前後のずらしも浅く見えてしまっています。

そういったところが、そこそこの減点となり18.0と18.5という点数を5人の審判が出しました。

ルールを熟知していませんが、妥当と言えます。。。

さて物議となったEisenbchler

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着地直後はしっかりとスキーを前後にずらし

テレマーク姿勢を試みました。

しかし、ここから右足のスキーが流れていき減点対象とはなるものの

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この視点から見ると、まだ減点の少ない着地となっています。

そして問題のこの姿勢↓

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着地が潰れ、右スキーが外に流れながらも

前後にずらした形は維持したEisenbchler。

この直後に、強靭な体幹で正しいテレマーク姿勢に戻しました。

そうして、審判の間で点数が割れることとなりました。

17.0が1人、17.5が1人、18.0が2人、18.5が1人となりました。

最高得点をつけたのが、地元でEisenbchlerと同じドイツの審判。

だからこそ物議を醸しているのですが

この得点は最高点と最低点をカットした3人の得点を採用するルール。

贔屓したところでカットされます。

何より、オーストリアとスロバキアの審判が18.0をつけれるような飛型点。

そこに18.5の得点であれば誤差の範囲内です。

また、詳しくないですが

カットされて得点の採用が一定以上になるとペナルティ的なのもあるらしいです。

ここで19.0以上をつけていれば問題ですが、18.5ならば問題ないと

私は考えています。

別に、このドイツの審判が陵侑に低い点数をつけている訳でもありません。

騒ぎすぎかな、という印象を持っています。

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テレマークは審判からの見え方が重要で

下からの映像などは議論の対象とはなりません。

私自身も、潰れたと思ったら

それが上手なテレマークに見えて良い点をもらったり

完璧に決めたと思ったら、「浅い」と見られて減点されたりしています。

上記の2人は審判棟側の足(左足)っを前に出すことによって

足が広がって減点対象になっても、減点されにくい方の足を出しています。

ここから右膝を内側に入れると、バランスは難しいですが綺麗なテレマークに見ええたりします。

#葛西さんがよく使う技術

#結構大事

奥の深いテレマークの世界です。。。

個人的に、そっちの物議よりも

Eisenbchlerの2本目。

1本目の潰れてから復帰するほどの体幹を持ち合わせているのに

着地姿勢を取らずに、最初からしゃがんで衝撃を吸収するように着地していきました。

彼の肉体であれば、体操のような両足着地で姿勢を止めるのは難しくないと思います。

もしも、あの着地で両手を広げるだけで0.5点の減点がなくなり

勝利を手にしていたのでもったいなかったなと思います。

スロベニアの頭角

名前を上げたKos(SLO)が

風を引き当てることなく、力で初表彰台を獲得しました。

去年の Pavrovcicといい、スロベニア人は勢い任せに表彰台を掻っ攫っていきます。

しかし、勢いが削がれると凡人に成り下がるという不思議な国民性。

最大瞬間風速は目を見張るものがありますが

中々、持続性がありません。。。

ジャンプのタイプ的にもしょうがない面がありますが、考えものです。

このジャンプ週間第4戦のBischofshofenは初見殺しの側面があるので

彼がどのように攻略してくるか注目です。

日本チーム

佐藤幸椰が開幕戦以来のトップ10獲得で6位。

悪条件に屈しない、幸椰らしいジャンプを見せてきました。

昨年、良い状態ながら苦戦したこの地を攻略

得点が出てからガッツポーズを作りました。

残り2戦と団体戦。我慢のジャンプ週間と言いましたが

俄然楽しみになってきました。

中村直幹が21位。

対戦相手のVillumstadが良いジャンプを見せたものの

動じずに2本まとめてきました。

伊東大貴さんが29位。

Rukaの14位以来のポイント獲得。

Stochが横風に捕まり失速。2本うまくまとめてきました。

小林潤志郎さんはまさかの転倒。

陵侑とEisenbchlerに挟まれ、良い条件でビッグジャンプを決めました。

立っていればトップ10も狙えたので残念。

Eisenbchlerと陵侑がもう少し距離を抑えてくれれば

95%ルールで2本目も飛べたのですが

2人して異次元飛行をしてきたのでそれを許しませんでした。

Innsbruck決戦

フラットな条件でやれば、陵侑のグランドスラムは確定でしょう。

小さな台なのに、風の影響を受けやすく、癖があり飛ぶにはコツのいる台。

既にコツは掴んでいる陵侑。

淡々と「目先の試合に全力を尽くす」と言葉を残し、メンタルも安定しています。

飛距離も着地も問題なく、グランドスラムに向けて死角はありません。

複数回合宿を重ね

今季復活の礎となった場所であるオーストリアで、大活躍する姿は容易に想像できます。

ただし、荒れる風を手懐けなければ優勝の難易度は増します。

Garmisch-Partenkirchen予選落ちになったKraft

クロスカントリースキーで調整してオーストリアラウンドに挑むよう。

誰が脅威になってもおかしくないInnsbruck。

興味深い1戦となるのは間違い無いです。



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