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メダルへの追走劇 〜北京五輪 ノルディック複合団体戦〜

リレハンメル五輪以来,24年ぶりの団体戦でのメダル獲得。

タイム差は僅かとはいえ,前半はまさかの4位。

メダル獲得が厳しい状況に陥った中で

アンカーに任命されたのは,今季ワールドカップで唯一表彰台に上がっていた山本涼太。

#隠れエース

全員がメダル獲得に向けて繋いだ襷を

トップクラスの走力を誇るGeigerに食らいつき,追走することによって

メダルへと導きました。

前半ジャンプ

今季は例年のように,ジャンプの切れ味に欠けていた日本チーム。

その状況を,不安定な風の状況によって露呈してしまった前半となりました。

渡部善斗さんこそ,五輪にきて1番良いジャンプを決めたものの

渡部暁斗さんと永井秀昭さんは,悪条件に苦しめられ

本来よりも,やや物足りない粘りのパフォーマンスとなりました。

山本涼太にはスーパージャンプを期待しましたが,やや動きが固く守りに入ったようなジャンプで

思ったより飛距離を伸ばせませんでした。

各国が走力に重点を置いたオーダーで前半4位

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この状況下。

個人的に,メダル獲得へは上位国になんらかのトラブルが起きないと厳しいと感じました。

ただ,改めて見ると

不安定な風により,各国も順調ではありませんでした。

もっとリードが欲しかったであろうオーストリア。

また隔離明けのFrenzelに走力の不安があるため,ドイツもパフォーマンスとしては不本意だったと思います。

後半展望

ノルウェーとドイツにとっては難しい展開ではありません。

いつも通り遅い順に並べて,エース勝負。

今回であれば,GraabakとGeigerに全てお任せすれば良いだけです 笑

一方で,中途半端なマージンとなったオーストリアは

かなり頭を悩ませたことでしょう。

そして日本。こうなってしまった以上,手の打ちようがほぼありません。

私なら,安直に渡部暁斗さんのアンカーを軸に,並べていくでしょう。

そうした中での滑走順がこちら↓

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なんと,アンカーに任命したのは山本涼太。

逃げ展開で

追いつかれた後にトレインに乗って,粘りの表彰台を獲得してはいるものの

表彰台近辺で,ゴール前勝負しているのは見たことありません。

個人的に不可解としか言いようがありませんでした。

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一方でオーストリアは,日本を意識した逃げの布陣。

LamparterとGreidererを2走,3走に配置して

走力的には3番手のFritzをアンカーに置いてきました。

GeigerとGraabakの勝負を楽しめればいいか

そんな気持ちで見ようと思っていた次第です。

メダルへの追走劇

午前中から降っていた雪。

これにより,アイスバーンではなくコースに雪が混ざりました。

この条件,クロカンリレーで1走の広瀬崚が好走していたので,日本にとってはよかったかもしれません。

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逃げたいオーストリア

普通に走ってれば追いつくノルウェーとドイツ

そこに食らいつきたい日本。

1走の渡部善斗さんは,ノルウェー,ドイツにしっかり食らいつきました

#滑るスキー  

序盤はノルウェー,後半はドイツにピタリとつき

ノルウェーを置き去りに,さらにはオーストリアに追いつき抜いてリレーしました。

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2走から走力の水準がグッと上がる強豪3国。

特に独走力がありふるい落としにかかるLamparterに注目していました。

しかし,やや滑りが悪いのかスピードに乗り切れないLamparter。

Schmidと先頭を争うような形で交代するも

引き離すことができませんでした。ここでも食らいつく日本。

ほぼタイム差なく永井秀昭さんから渡部暁斗さんにリレーしました。

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ここからはメダル獲得者たちの争い。

Oftebro,Greiderer,渡部暁斗さん,そしてFrenzel。

しかし,隔離明けでRiiberとIlves同様に精細さを欠いたFrenzel。

Frenzelをもってしても,調整不足を隠すことはできませんでした。

一方で追いつくのにやや力を使い,さらには中盤でしっかり集団を引いた暁斗さん。

流石にOftebroのアタックには反応しきれなかったものの

Frenzelを置き去りにするとともに,Greidererとはタイム差が全くなしで

アンカーの山本涼太に繋ぎました。

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ジャンプが微妙なので表彰台経験はないものの,普通に速いFritz。

追うつもりもなく,山本涼太に負けることはないと思っていたと思います。

Geigerから逃げたい,山本涼太を早々に引き剥がしたいと

やや勝負を焦ったか,序盤から飛ばしたり,ペースの上げ下げで揺さぶってきました。

流石にGeigerには追いつかれたものの,集団の先頭を譲らず

果敢に仕掛けていき,貪欲に銀メダルを狙っていきました。

2週目,最初のきつい登りの頂上付近。

FritzのアタックにGeigerを挟んで必死に食らいついていましたが

苦しそうな表情を見せる山本涼太。

私はここまでかと思いました。

カメラがスイッチングし,金メダルを決めたノルウェーのゴールを映していました。

再びカメラがスイッチングし,2位争い。

ゴール前の上り手前の下りで仕掛けていたGeigerが先頭で

ドラマを生む登りに入ってきました。

FritzではなくGeigerに食らいつく山本涼太。

その後ろに,懸命ながらも力尽きかけているFritzの姿。

勝負を決めにきたGeigerのクイック走法に対してスーパースケーティングで応戦して

登りを登り切ると,登りから平地に変わるところでGeigerが走法を切り替えたところで

再び後ろにピタリとつけました。

登りから平地の斜面変化で全くロスせず,そこでFritz相手に差をつけると

そのままGeigerの後ろから離れずに,メダルを確信。

両手を上げてゴールしながら,チームメイトの元へ飛び込みました。

メダルは厳しいと言い続けていた自分が恥ずかしくなるようなレース。

まあ河野ヘッドコーチですら

「もうちょっと選手を信用してあげなきゃいけないですね。最後は信じられなかった」

とコメントを残しているので,しょうがないと思っています 笑

歓喜の銅メダル

ここまで滑走順,スキーの滑り,展開がビタっとハマることはないと思います。

Frenzelのブレーキから,少し消耗したGeigerが近くにいたこと。

Fritzが意地で山本涼太を引き剥がしにかかったこと。

もしも,アンカーが渡部暁斗さんなら

あからさまな牽制する展開になり,勝負の行方が混沌としたかもしれません。

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ワールドカップやコンチネンタルカップの選手選考

一定の年齢まで行った国内組の扱い方など

個人的に複雑な気持ちで見ていた日本チーム。

間違いなく日本で1番強い4人が

五輪の舞台で最高のレースを見せてくださって

素直に感動しました。

結果が全てであり,正しかったと言わざる得ません。

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永井秀昭さんの心からの笑顔を見れて

個人的に幸せをもらいました。

大舞台が終わった後の日本チームは好成績を連発するので

ワールドカップも引き続き応援していきます。

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