積み上げてきた先頭での走り 〜北京五輪 ノルディック複合 ラージヒル〜
今季一度も表彰台に上がることなく
厳しい状態で張家口入りした暁斗さん。
長年,先頭を集団引っ張る走りをしてきて,その積み上げてきたものが
何が起こるかわからないという言葉と共に,メダルを手繰り寄せたように
私には見えました。
3大会連続のメダルの中で,1番金メダルに近かったレースだったと思います。
前半ジャンプ
向かい風の強弱と横風で,比較的公平な条件とはなったものの
WFのポイントが減点が一桁の選手は,厳しかったかなという条件。
隔離明け,前日の団体戦テストジャンプでK点付近まで飛んでいたRiiber。
水を得た魚の如く,この日もとんでもないジャンプを見せてきました。
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好条件をやや活かしきれなかった山本涼太が3位
やはり会心のジャンプを決めてきた渡部暁斗さんが5位で前半を終えました。
シーズンベストのジャンプを五輪で決めるのも
これで3大会目。
やや厳しいタイム差,ポジションとはいえ
メダルへの可能性をしっかり残しました。
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Riiberのとんでもないジャンプで
わかりにくい順位表となりましたが
彼のことは一旦置いておいて考えていました。
Ilves,山本涼太,Faiist,暁斗さんまでのタイム差は13秒。
これはあってないようなもので,ここが集団となり
Geigerをはじめとする,メダル獲得三人衆が1分前後にいるという状況。
Riiber,2位集団,Lamparter,メダル3人衆の集団。
どれも微妙なタイム差で,前半を終えました。
後半展望
隔離明けのRiiberがどんな走りを見せるのか,想像できない以上。
展望においても彼の存在は一旦置いておかなければなりません。
そうした中での2位集団。
完全にジャンプが得意な選手が揃ってしまい,集団ではあるものの
スピードを上げるのが難しい集団になってしまいました。
ここにLamparterがいれば,暁斗さんと2人でスピードアップを狙えるものの
Lamparterは30秒後方。。。
暁斗さんのスピード頼みとなるのが明白でした。
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一方で1分後方にはクロカンが得意なOftebroを先頭に,メダルを獲得した3人衆。
ノーマルヒルの展開的に,彼らが追いついてくることは明白でした。
選手各々が,どうやって高速集団から逃げつつ最後までメダル争いを演じられるか。。。
ということを考えていたことでしょう。
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個人的に暁斗さんが,ずっと前を引かなければいけない状況で
高速集団から逃げ切ってのゴールは予想していませんでした。
前にはRiiber,後ろから高速集団。
ポジティブな展開は望めないなと考えていました。
何が起こるかわからない
ミス,我慢,積み上げてきたもの
いつものようにゆったりとした滑りながら
快調に飛ばしていくRiiber。
予想通り,渡部暁斗さんを先頭に形成する集団。
その後方にはLamparterが前を追い。
さらにその後ろには,高速集団が
ノーマルヒルと同様に,後半勝負とばかりにペースを抑え
スピードアップの時を窺っていました。
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2周目の入り,Riiberがコースを間違えて
大量45秒リードのうち,30秒をミスによって失いました。
これで集団の仲間入り。
2位集団が先頭集団に姿を変えることになりました。
本来であれば,暁斗さんとRiiberでスッピードアップしたいところですが
ここは天下の宝刀コバンザメ
マージンこそ失ったものの,金メダルへの準備を進めていました。
一方で暁斗さん,状況が好転したわけでもなく
4人を引き連れて,ペースを落とさず,上げすぎず
ペースを刻んでいました。
そこに忍び寄るのがGeigerを先頭にした高速集団。
ノーマルヒルの再現のように3周目からペースを上げ猛追を開始しました。
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3周ほとんどを引っ張った暁斗さん,残り1周,疲労の色がやや見え
後ろに下がりました,前に出たのは追いついてきたLamparter。
彼もまた,スプリントが遅い選手。
メダルを獲るには逃げるしかありません,30秒のビハインドから追いつき
最終週は果敢に前に出て,メダルへの可能性を見出していました。
その引きのペースは素晴らしく,Riiberをふるい落とした上に
高速集団からも追い付かれずに
ドラマを起こす最後の登りに突入することになりました。
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スタジアム直前の登り
最後の力を振り絞り,ペースを上げる暁斗さん。
Lamperterは力尽き,反応したのはFaisst
その後ろから,猛追するGraabakとOftebro
暁斗さんが先頭でスタジアムに入り,ややリードがあったものの
そこでややペースが鈍りました。
一気にGraabakとOftebroが並びにかかり
この2人に抜かれたところでFaisstは力尽きました。
ゴール前ストレート
Graabakが先頭に立ち,ソチ五輪以来の金を決めると
Oftebroもギリギリで暁斗さんを差し,銀メダル。
そして銅メダルに渡部暁斗さんとなりました。
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厳しい状態でも,メダルは獲るだろうと思っていました。
しかし,いざ前半ジャンプで会心のジャンプを決めても
メダルは遠いように思いました。
そうした中で,手繰り寄せた銅メダル。
金メダルへのシナリオとしては
レース前から感じていたLamparterが近くにいてくれたら
というのを強く感じました。
ノーマルヒルのような白熱したレースに
日本人が戦っていて,感動と尊敬が入り混じりました。。。
日本チーム
山本涼太が12位。
ノーマルヒルに比べて走れてきたかな,と思いました。
しかし,この日のラップタイム
ドイツのGeigerとの差は10キロで2分半以上。
団体戦での走りを予想できるものではありません。。。
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渡部善斗さんが25位。
ジャンプで大きく出遅れたものの,この日は順位を上げてゴールしました。
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永井秀昭さんが31位。
チャンスを掴んだものの
こちらもジャンプで大失敗を犯し
この地での初レースは芳しいものではありませんでした。
正直なところ,ここでお役御免で
団体戦は谷地宙を起用すると思っていました。
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渡部暁斗さんが銅メダルを獲ったとはいえ
厳しい結果となった日本チーム。
このチームが団体戦でとんでもないことを引き起こすとは
夢にも思いませんでした。。。