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Yuki Yoshikawaさんのお名刺を作らせて頂いたはなし。

花器の開発でお世話になっている、東京在住のフローリストYuki Yoshikawaさんに名刺作製のご依頼を頂いた。

私は無類の紙好き(ついでに布好き)である。

これは私の名刺である。
裏面は印刷会社に名前や連絡先などをデザインした物を刷ってもらったが、表面は新局紙という越前の和紙を表現した紙に顔彩で着色し、カリグラフィペンでテキトーな字を書いた。
一枚一枚がオリジナルで、良い物も悪い物もあるところが面白みだとも言える。

緑と紫、ベージュで鉱物を表現したつもりだ。

これを見たYukiさんに、『顔彩とcalligraphyを使って名刺をデザインできないか』とご依頼いただいたのだが、Juliaとか言って外国人ぶった名前とは裏腹に英語もできないし、ましてカリグラフィなんて独学である。
だがしかし、この上なく光栄なご依頼である。お断りせず、期待に沿うことができるか挑戦したい。
『一度描かせていただきますが、"す♡て♡きー!"ってならなかったらご遠慮なくご依頼取り下げてください。』とおことわりし、まずは描いてみることにした。

原案である。

Yukiさんは、自分の仕事のイメージに繋がるような、動きのある花を表現して欲しい、とおっしゃられたように記憶している。

なんて難しいご依頼だろうか。
Yukiさんのお花、あの素晴らしいお花。
ひとつひとつが協調しながら引き立て合い、可憐で華やかで、生き生きとした躍動感があって、この色とこの色でこんな素敵な色合いになるっ?!って色合わせの、伸びやかで楽しそうな…
あの花を!55mm×91mmに表現せよと、、、

原案を描いててもしっくりこない。
もっと動きや奥行きがいる。頭をひねって考えた。

私の3色の名刺とは違い、様々な混色をした。
花の絶妙な色合い… 難しい。あれ?
よく見ると、"flower designer"になっている。
微妙に違うのだ。ミスった。
"floral designer"なのだYukiさんは。

私のことを昔から知る友人達は私が慌てん坊の間違いだらけなことをよく知っていると思う。

でも私はその分機転が効くように成長したのだ。(良く言えば。)

以前見た素晴らしいショップカードのことを思い出した。
岡崎のfévrierさん。(最強洋服店岡崎のfévrierさんのお話はまた別の機会にじっくり書くとする。)

余談だが、経験は人生を豊かにすると思う。見る物は多ければ多いほどいい。でも多いだけではだめだ。これ好き!の直感をいつも研ぎ澄ましていなければならない。でなければ良い物だけを記憶できない。

はい、紙重ねた。
二枚重ねの重厚感、良い。

新局紙の質感の良さがわかるように手で無造作に千切った。

ついでに向かいのインコが千切った紙もなかなか素敵なので見て欲しい。

薄いベージュは、トレーシングペーパーでできていて、これも二枚重ねになっている。
言わなきゃわからないけれど、土を表現したつもりだ。透けた素材の紙なので、色(花)がところどころ透けて見えるのがポイントだ。

色は花、トレーシングペーパーは土、カリグラフィは茎と枝葉。
ちなみにカリグラフィのインクはトレーシングペーパーの上に乗る。

今回は、このような感じで紙一枚に奥行きを表現した。

上に局紙重ねて糊付けする→紙に絵を描く→トレーシングペーパー糊付けする→カリグラフィ書く

しかしここで終わりではなかった。
トレーシングペーパーは糊(湿気)に弱い。
ずっと雨続きだったのだが、カラッと渇いた晴れの日に、糊付けしたトレーシングペーパーの部分だけがそこクルクルっと丸まってしまった。
スチームアイロンで伸ばしたりしたが、無駄だった。

そこで、この再生紙厚紙をさらに重ねることになった。
三重重ね。0.44mmから1mm程の分厚さになったが、分厚いのは悪くない。高価に見えるのだ。

横面から見た時に局紙と再生紙の設置面が不細工だったので、白(ところどころ金)に塗り直した。

ということで、ミスにミスが重なり、かなり手の込んだ物になった。
ピンチはチャンスとはこういう事を言うのかもしれない。災い転じて福となす、とか。

結果Yukiさんにはとても喜んで頂けたようで、す♡て♡きー!のメッセージを頂いた時は、本当に本当に、嬉しかった。
私が老人になり介護施設にお世話になったら、きっと職員さんに、
『わたしゃー若い頃、トーキョーの凄い方へ名刺をつくったことがあるんじゃー!』って自慢しちゃうと思う。
とても光栄な仕事を頂いたと感じている。

200枚近く描いたが、厳選100枚に絞った。
カリグラフィも"Yuki Yoshikawa"の字に慣れるとどんどん綺麗に書けるようになっていったからだ。
(最初の100枚はあまり美しくない。)

Yukiさんの素敵な花のイメージをこの名刺一枚で伝えることは難しいが、どうか、少しでもあの素晴らしさが伝わりますように…
手にして頂いた方々が、Yukiさんと共に良いお仕事が出来ますように…


Yukiさんは、ウエディングを中心に、パリや諸外国で学んだ型にはまらないフラワーアレンジメントのレッスンや、プレゼント用の花の注文なども承っている。環境保護活動や、発展途上国の方々への支援にも取り組まれている。
可愛くて気さくで気取らなくて、熱心で情熱があって本当に良いお人柄である。

私も一度レッスンに行ったのだが、分かりやすくてたっぷり時間を使ってくださって、(ひとつのアレンジメントに合計6時間ほど!保育園のお迎えがあったので早く帰らなければならなかった。)目からウロコなポイントが山ほどありとても面白かった。

ぜひ一度、機会があればレッスンや花のギフトの依頼をしてみて頂きたい。
きっと心に残るお花を届けてくれる。

Yukiさん、ご依頼いただき本当にありがとうございました!
とても良い経験になり、楽しみながら書かせていただくことができました。
紙物、とても楽しいので、合間みて色々挑戦していけたらいいな…

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