ジャグリングの大会で生クリームを泡立てるまでの軌跡

※殴り書きに近いため添削等もせずに執筆、投稿しています。ご了承ください。特に執筆、投稿が大会開催期間以前〜開催中のため時間関係が怪しいところがあります。

はじめに

2019年1月25日(金)から3日間、静岡ディアボロコンテスト2019が開催された。そこでは他のディアボロ大会とは一線を画すユニークなルールの部門がある。技術に関する点数が100%で演出点が一切ないテクニカル部門、演出に重きを置いてどんなに高難易度な技をしても10点しか入らないパフォーマンス部門など、かなりルールが尖っている。
その中でも最たるものはおそらくクリエイティブ部門だろう。この部門の審査項目はクリエイティビティ100%、内容は以下のようになっている。

現在の競技会におけるディアボロの演技から逸脱するようなディアボロの使い方や,表現方法等を提示できたかどうかが評価のポイントとなる。(引用: https://shizudiaweb.wixsite.com/2019/contest-1)

昨年まではエンターテイメント部門という名前で開催されていて、私は昨年この部門で優勝した。そのため今年は所謂ディフェンディングチャンピオンということになる。

昨年の振り返りと今年のネタ捻出

昨年私はエンターテイメント部門でグレープフルーツを半分に切り、絞り、皮同士を軸で結合し、ディアボロを作る演技を披露した。優勝するかどうか、そもそも他の人とネタが被らないかと心配したが、無事に優勝した。
ここまでは良いのだ。問題は今年なのだ。何故なら観客は昨年を踏まえて私の演技を見るのだ。あまりにもハードルが高い。敵は最早他の出場者以上に自分自身だった。
そんな状況でネタ作りはかなり難航した。自力で考えるのは大変だったので、twitterで単語を募り、自分が想定しない単語×ディアボロでひたすらブレインストーミングをしまくった。その中で引っかかったワードが「生クリーム」。生クリームを泡立てる時はハンドミキサーを使う。そこでもしディアボロの回転力を生かして泡立てたら……この時かなりアタリが来た気配を感じた。ここから私の過去の自分との戦いが始まる(厨二感)。

作戦会議@名古屋

とりあえずネタは一つ出したが、まだ他の強いネタがあるかもしれない。そのように思っていた時、昨年のグレープフルーツの共犯者(アイディアを一緒に作ってくれた高校時代の同級生)から「またアイディア作ろう」と誘ってくれた。もちろん即決でOK。私が静岡県、彼が京都府在住なので、間をとって名古屋で会うことにした。ちなみにこの日は静ディア本番1週間前。
完全に余談だが、会議という名の昼食会で名古屋名物"風"のものを食べた。名物とは違うようだ…

超ネタなのに理詰めで考える

会議でどんな話をしたり検討したりしたかというと、例えばディアボロ=回転×演芸と分解したとき、回転と組み合わさるものは何があるかを考えた。例えばアミューズメントだったり料理だったり。今回は自分が持ってきた案で落ち着いているが、後で振り返るとまじめに議論する内容かは気になるところである。色々案を出そうとしたが、結果的には最初に自分が考えたホイップクリームの案に落ち着いた。
そこからは、実際にディアボロで泡立てる様子を想像して面白くできそうなことを各状況ごとに考えた。例えば一度泡立てたタイミング、回転が失われることが想定できたので「加速していいですか!?」と叫んでみるとか。通常ディアボロの演技では聞かない質問だろうが、状況的には歓声や悲鳴が上がると想定した。また泡立て失敗に終わる可能性を考えた際は、キューピー3分クッキング方式で完成品のホイップクリームを用意しておき取り出すという案が出た。
ふざけているように見えて、各種言動は会議の中でアイディアを出してから実行した。アドリブでできたら凄いと思う。
せっかくなので、会議の時のメモは下の感じ。

ちなみにこの生クリームネタはルール上問題ないか心配だったので、会議時に国語の先生でもある彼に確認してもらったところOKを貰った。これで安心してやると決めることができた。

完成させないと中途半端になる

今回のコンセプトはディアボロの回転を利用して混ぜるということだ。生クリームというワードをtwitterで貰った直後はケーキの材料を混ぜようと思ったが、焼けない生地だけ作っても中途半端だ。そこで、混ぜることで完成するものは何かを考えた結果生クリームに落ち着いた。
しかし生クリームを泡立てるのも時間がかかる。何よりディアボロミキサー(仮名)でたかが2分弱で泡立つ筈がない。しかし完成させたい。…そんな願望を可能にしたのが化学の力だ。ありがとうサイエンス。生クリームと一緒にレモン汁を混ぜることで数秒で固まるというのをネットで見つけた。実際に試すと短時間で固まったのでかなり驚いた。

準備する道具

確実にクリームが飛び散るので汚れないようにする道具、その後片付けをする道具、そもそも生クリーム泡立てる道具、完成したホイップクリームを片付ける道具、それらを運ぶ方法など…事前に考えて用意した。
例えば汚れないようにする道具は、昨年もグレープフルーツでディアボロを作るためにレジャーシートを持参したが、更なるヤバさを出すために5m×3.5mくらいのブルーシートを用意し、泡立てる際のボウルは中身が見えるように透明のものを探した。さらにはディアボロで泡立てる意味を見出すために電動ミキサーまで持ち込むことにした。
実際の演技で使わない道具の方が多いのではないだろうか…

泡立てディアボロの試作

他の道具は揃えるだけでいいが、ディアボロに泡立て器を取り付けて泡立て用ディアボロを用意するのはかなり苦労した。最初は泡立て器を切って溶接、はんだ付けできないかというかなりアホな発想からスタートした。しかしハードウェア系に詳しい友人に相談したら難しいということを言われ、その代わりアイディアを貰った。それが下のイメージ。

ディアボロと泡立て器を直接接続するのではなく、缶などを媒介して繋げる方法だ。しかしこれ、完璧に固定しないとディアボロを回した時に凄まじくブレるため、とても本番では使えなかった。
そんな中この問題を解決したのは、名古屋の会議後に東急ハンズで見つけた米とぎ用の道具だった。持ち手が平らでプラスティック製ということもあり、穴を開けることで直接ディアボロに固定することが可能になった。下の図のように固定し、混ぜる為のパーツを取り付けるとほとんどブレなく回すことができた。

これがディアボロとの接合。そして下が実際に使うときの状態。

中々不穏な代物が生まれてしまったが、これが完成した瞬間それまではかなりあった不安が大幅に緩和され、むしろ自信さえついてきた。

BGM(バックグラウンドミュージック)

演技なのでBGMに合わせる。どんなBGMがいいか、会社の昼休みに散歩しながらiPodから流れる曲を聴いているとピンときた曲が。ピンときすぎてその場でその曲の作者に連絡取れないかアクションを起こした。ありがたいことに、共通の知人が仲介してくれて、作曲者の方に連絡をしていただけることに。
作曲者から連絡をいただけたのは大会への曲提示締切の日。結構ギリギリだったが連絡をいただくことができた。そして無事に使用OKとなり、使わせていただいた。直前までは別の禍々しい雰囲気な曲を提示していたが、それ以上に今回の内容にあいそうな曲だったため、どうにか使いたかったので本当に嬉しかった。本当にありがとうございました。
ちなみに曲が決定したのは名古屋の会議前日の為、曲が決まった後に内容が決まる流れであった。ちなみに昨年のグレープフルーツの際も同じく曲提示後に内容が決まった。

そして本番、からの表彰式

クリエイティブ部門本番直前。当日はテクニカル部門も開催されていてそれにも出場したが、たぶんテクニカル部門の5倍くらい緊張していた。出場者10人いる中の最後だった為、他の演技によっては優勝が脅かされるので本当に気が気でなかったし、実際に終わった後も勝てる確信は無かった。

そして本番。準備を手早くするようにと指示があった為、予めできる準備は全てしておき、名前をコールされたと同時に急いでブルーシートを敷いて荷物を演技スペース中央へ持っていった。これほど緊張する準備はいつぶりだろうか…。
正直本番は色んなものを踏まえて腹を括ってやりきった為あまり覚えていない。強いていうならば、叫ぶ予定だった「加速していい!?」はBGMの音量的に聞こえないと判断してハンドスティックを取る動作に変えたのと、終了後にちゃんとクリームが固まっているのは覚えている。ちなみにホイップしたクリームはタッパーに入れて持ち帰った。あと演技後に撤収作業を手伝ってくださった皆様本当にありがとうございました。とても助かりました。

全ての部門が終わって結果発表の時間、当日開催された部門の表彰が順に行われる中、クリエイティブ部門の表彰は最後だった(ちなみにテクニカル部門は11位/30人だった)。本当に祈りまくっていた中で遂に発表。結果は優勝。名前が呼ばれた瞬間は文字通り膝から崩れ落ちた。これほど喜んだのはいつぶりだろうかってくらい嬉しかった。

終わりに

完全にエネルギーを使い果たしたような感覚だった(これを書いているのが本番当日の夜のため現在進行形だが)。ネタの創出と実践は色んなものを削ることになるので本当にしんどい。けれど会場の盛り上がりを感じてしまうとやっぱりやめられない。来年開催された場合に出場するかは分からないが、するしないに関わらずネタは何か作っていきたい気持ちはあるので、次回作に乞うご期待。

ちなみにこの記事執筆段階では演技動画が手元にない為に公開できないので、動画を入手して私が動画公開する気分になるのをお待ちいただきたい。

関係者各位、観客の皆様、本当にありがとうございました。そして大変ご迷惑をお掛け致しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?