見出し画像

ニットっていつから着るか迷わない?

近隣の小中学校のけたたましい歓声に惹かれてやって来た、金木犀の香りが、ついでに木枯らしまで運んできそうな季節。

昨今、ネット上でネタに使われ、異常気象も増えてきたことから怪しい所ではあるが、まだ確かに存在する、日本の文化、四季。

海外旅行はおろか、パスポートさえ持っていない、国際的には存在していないも同義な私が述べるのは、些か恐縮ではあるが、この四季がある日本は世界規模で考えても確かに素晴らしい土地であると感じる。


特に私はこの季節、秋が好きだ。
物議を醸すリスクを厭わず文字に起こすが、四季で秋を最も好む、という人種はどこか根暗なきらいがあるように思う。
そこから例に漏れず、私も根暗なので分かるのである。(分かるのか?)

秋が好きだ、ということは、夏が嫌いである、ということと等しい、と私は感じる。
そもそも肌が弱すぎる私は、その後の辛い日焼けのことを思うと海水浴やプールに赴くのも少し恐怖を覚えるし、そもそも赴くのが億劫だ。
同時に多汗症でもある私にBBQなど、英国の三枚舌外交くらい無理のあるイベントである。

そして同時に、これは嫉妬からだろうか、夏を本気で楽しんでいるような人種にも、少しばかりの嫌悪感を無視できない。前世でどんな徳を積めば、そのような生き方ができるのか。機会があればガウタマさん家のシッダールタ君に尋ねてみたい。

上記諸々の理由で、夏が嫌いである。
そしてうっすらと身にまとわりつく肌寒さで、夏の終わりをやんわりと、我々に告げる秋が好きなのである。


話はうって変わるが、先月より私が高校時分より利用していた駅から、最寄駅を変更した。通学区間を変更したのである。

理由としては、こうだ。
私の自宅はお世辞にも栄えているとは言えない土地で、駅まで徒歩30分ほどかかる。
歩くのは非常に人生の無駄遣いだと考えたため、高校時代は自転車、最近では原付に乗って駅まで向かっていた。
駅には無料駐輪場がないため、近くの某スーパーのお客様駐車場に、7年間ほどほぼ毎日、私の愛車を居候させていただいていたのだ。
しかし、そのスーパーが改修工事に入るということで、駐輪場が使用不可となったので、駅を変更した、という運びだ。

そうして変更した某駅には深い思い出、まあ平たく言うと私の初恋の思い出が、102ばんどうろのジグザグマばりに潜んでいる。出現確率20%である。5歩進むと出くわす。ラブプラス+のリンコか。ぼくはマナカが好きです。

その思い出の子と交際する以前にも、女性との交際はあったり、幼稚園時分に、うる星やつらのラムちゃんに心奪われたりもした覚えが微かにあるのだが、しっかりとした初恋はその子だったのだ、と今になって思う。

その駅周辺に住んでいた子だったので、方向は真逆だったが一緒に帰ったり、近くで中身のない話を延々と話したり、それなりに充実していたように思える。

更に、その子と交際していた主な季節が、正に秋冬だった。


人間というのは不思議なもので、物事を頭では忘れていても、体が、正確には五感が覚えているものだ。
もう7,8年も前のことで、どんな話をしたのか、はたまたどんな顔だったかすら、意識しないと思い出すのも難しい。

しかし一度木枯らしが吹くだけで、金木犀が香るだけで、私は当時まで擬似タイムスリップが可能なのだ。私にはドラえもんなんざ必要ない。無敵だ。

これは人類共通の現象なのか、はたまた私のみの特異的なそれなのか、自身には皆目見当すらつかないが、世界は広い。きっと同じような人もいるだろう。
そしてきっとその人も好きなんだろう、この季節。秋が。

そんな人がいるなら是非一度、言葉を交わしてみたい。
肌寒くなった秋にぴったりの、ローズヒップティでも淹れながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?