OGの勝利への軌跡

TI9を優勝したのはTeam OGでした。おめでとうございます。

そのメインステージでの戦歴はなんと23勝5敗、そのうち一度もBO3を負けることはありませんでした。めちゃくちゃ強い!この記事では何でそんな強かったのか?をピック面から解説していきます。プレー面の解説は動画じゃないととてもじゃないけど無理です。この記事の主となる情報源はプロプレイヤーによるコメントと自分の考え半々です(ので、そんなに信頼しないでください)。

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OGは非常にアグレッシブなプレースタイルと特異なヒーローピックが特徴的だったと思います。しかし戦略的には殆どのピックにおいてやってることは同じだったように思えます。それは:

ゲーム中最強のヒーローを一人作り上げる

そしてピックにおいては、以下のポイントを重視しました。

ダメージ増加とダメージ軽減(あるいはヒール)

サポートはSD, ET, オフレーンはMagnus, Ench, Omni, LCなど。”敵のダメージは通さない・こっちのダメージは増幅させる”という哲学を持ってのピック。Enchantressは序盤20分ぐらいはマップ上最強のヒーローなので(つまり、4vs5が戦いやすい)非常にピックバンでの優先度が高かったですね。

味方のセーブ/戦いのリセット

SD, ET, Oracle, Tinyなど。敵のイニシエーションを一回”無駄”に出来るヒーロー。ダメージ軽減の一種ではありますが、OGはこれらのヒーローを使って4vs5を戦い抜く方法を徹底して研究しました。それらの答えがこれらのような、クールダウンが短く、ダメージが出せて、アイテムに依存しないヒーローたちでした。

絡んだ敵を確実に殺す

Tiny/Voidなど。コアヒーローはとにかく敵のヒーローを”確実に殺す”事が出来るヒーローか、味方にバフされまくって最強になるヒーローをピックします。OGのやりたい事が見えてきましたか?彼らは”4vs5”のエキスパートなのです。そしてAnaはスペースを使うことと戦う事の能力がずば抜けており、これを最大限に活かすのがOGの最強の戦略です。この戦略自体は新しくはなく、4 protect 1(通称4p1)という名前で昔からある戦略でした。OGが強かった理由は、このやり方にどういうヒーローを使えば良いのかと、どういうマップの動きをしたら良いのかを最深まで研究したことです。

つまり、何時でも戦えるヒーロー四人と終盤最強のヒーロー一人

が主なテーマでした。

この戦略はグループステージではあんまり使われてませんでしたが、メインステージになると顕著になってきます。実際、どういうピックをしていったか見てみましょう。

OGメインステージ1戦目:Newbee戦

悪名高いio carryとanaによるjuggernautのゲームです。どちらのゲームもこの戦略を用いています。io carryのゲームは、作りたい最強のヒーローはきゃりーであるioではなく、実はtopsonが乗るBBでした。実は、OGがio carryを使うゲームは、多くの場合、”最強のヒーロー"をtopsonに乗せています。

どういうことでしょうか?OGがこのピックで最終的に成し遂げたいことは、最強のBBを作り、敵がそれに対し何も出来なくなることです。そのために必要なヒーローをピックしています。

Game 1(io carry+bb mid):

最強の5ポジションであるETは、最強のダメージ増加ヒーローです。3番のオーラにより、味方が出すダメージを増減させるだけではなく、1番で味方を救える、2番で視界を得る、ultでチームファイトが出来るなど、5ポジとしての性能はずば抜けています(だからファーストピック・ファーストバンレベルの性能を持っているのです)。

RubickはOGの”常に戦える4人のヒーロー”に最も合う4ポジです。それにOmniによるヒールとult(ダメージ増加・軽減・ヒールのテーマに沿っています)、そしてioという最高のヒーラーをダメージとして使うというアイデア(aghanimによりこれが可能となる)と、これだけのヒールを積んだBBに誰も勝てるわけがないという読みのピックです。ioがレベル15になるまでは弱いのでBBが戦い、ioが15になったらbbをバフしまくって最強のヒーローを敵にゴリ押ししていくという素晴らしい戦略でした。

Game 2(jugg carry +mk mid)

このゲームでも基本的なテーマは同じです。MagnusによるEmpowerというバフを乗せた最強のJuggを作ったろ!という戦略ですね。残りのヒーローは敵が出来るだけ動きにくくなるヒーローをピックするために、主にカウンターピックに用いています。このゲームではダメージ増加のテーマがMagnusのピックから見れますね。注目すべき点はCebのMagnusのプレイ方法です。殆どのMagnusは、ultを決めようとするためにDaggerを重視しますが、Cebのマグナスは29分までDaggerを買いません。これはUltを使わなくても戦う方法を知っているという深いヒーローへの理解と、「自分がファームしていては”こちらが戦えない時間”が生まれてしまう」というチームの戦略に沿った判断です(OGは”常に戦えるヒーローを4人”というのがチームの戦略だと上に書きました)。

 OGに対し常にMagnusがBANされていた理由は、Cebのヒーローに対するその理解の深さもありますが、MagnusによるEmpowerは”きゃりーのファームが早くなる”という効果があるからです。OGの戦略を今一度思い出してみましょう。”4人で時間稼ぎして、後はAnaにきゃりーしてもらう”。Anaのファームが早くなるということは時間稼ぎする時間がもっと短くても良くなる、しかもAnaが強くなる…!ということです。たまったもんじゃないです。他のチームがOGのMagnusの使い方を見て、これはあかんということで毎回常にBANされていたのも頷けますね。

(EG戦はあんまりこの戦略を使わず、主にOutplayで勝利していたように感じるので、割愛します。簡単に言えばEnchantressを利用した4p1です。)

メインステージ3戦目:LGD戦

Game 1(Zeus mid+Void carry):

このピックはあんまりOGらしくないピックです。ETによるダメージ増幅はあるものの、NPとpangoがあまりピックに噛み合わず、LGDによる素晴らしいプレーにより敗北を喫してしまいます。

Game 2/3(Alch carry):

最強のAlchemistを作ろう!!というピック。Chenによるヒール増幅によりどんなダメージを受けても死なないAlchemistを作る。+何時でも戦えるSB+DSコンボとTinyによるマップの支配。DSによる困った時のセーブ。OGは長いCDを持つチームファイトスキルをピックするときは多くても二つ、基本は一つなんですね(game 2におけるDSのultとgame 3におけるtideのult)。常にマップコントロールを得るためにはUlt依存のヒーローは多いとUltがない時に敵と戦って負けてしまうので(もう一度言いますが”何時でも戦える4人のヒーロー”が欲しいのです)出来るだけそういうヒーローは多くないようにしています。

決勝戦:Liquid戦

Game 1:Spectre carry

LiquidにMeepo carryでピックの裏をかかれてしまいますが(TAがMidなら普通MidであるMeepoはないと思わせておいてのCarry meepo)、それでもOGの4 protect 1の壁は厚く、Meepoの勢いを削ぎ、Spectre最強の時間帯をまだかまだかと待ち続けます。しかし、バイバックを残しラックスを壊すという選択が裏目に出てしまい、Liquidに一本取られてしまいます。しかし、ゲーム内容的にはこれほどの不利なピックでここまで戦われてしまうと、Liquid側も相当このシリーズがきついことはここで理解出来たはずです。

Game 2:Ember carry+MK mid

このゲームはピック的にはOGの戦略とは違うのですが、完全なるOutplayとOutpickによる一方的ゲームとなってます。Liquid側のチームファイトピック -- EnigmaとTidehunterの弱点である”ファームがないと弱い”を突き、ならこちらはEarly gameで完膚なきまでに叩こうという戦略と、Topsonが世界最強のMK使いであることの証明(TA相手にMKは"普通は"ここまで勝てません)のゲームです。GrimstrokeはTidehunter相手の最大のアンチピックなのですね。Tidehunterはサイレンスされても2番の効果でデバフが全部解けてUltが大体打てるのですが、Grim相手だとそう簡単には行きません。

Game 3:Void carry+Pugna mid

Game 2と同じ展開。Pugnaは普通はTA相手にまたそこまで優位を取れるヒーローではありませんが、JeraxによるTinyによりTAのやりたいことを全て邪魔されてしまいます。レーンではギャンクされ、ジャングルでも邪魔され、味方を呼ぼうにも味方もみんなレーンで大変な思いをしていて、何も出来ずにTopsonが片っ端からタワーもヒーローもなぎ倒していって終わります。このゲームで、Liquid側はOG側は”Tidehunterの弱点”を知り尽くしていることを理解し、もうピック出来ないことを悟ります。LiquidのTidehunter+TAのコンボは、Liquidをルーザーズから決勝まで連れてきてくれたコンボだったのですが、OG相手には通用しませんでした。

Game 4:Io carry+Gyro mid

OGの最も得意とする4 protect 1の一番最悪のバージョンであるIo carryをピックバンで通してしまいます。Liquid側はBBとWRがカウンターであるはずとの読みでしたが、全てのレーンでボロボロに負け、GGコール。あんまり特筆するべきこともなく、OGの4p1についにLiquidは手も足も出すこともなく、敗北していまいました。


ピック面ではこういう解説が出来ますが、OGはマップの動き方も非常に上手い。Dotaの概念に英語で"Collapse"、日本語では上手く翻訳出来ないのですが”挟み撃ち”という感じの動き方があります。敵にファームをさせない事がこの動きの主な効果なのですが、これがOGは非常に上手いのです。常に戦える4人のヒーローを利用した、決まると非常に強い動きをOGがキメまくっています。この動きは文章で説明してもちんぷんかんぷんで、動画じゃないと説明出来ないので、いつか何かの機会に興味がある人が多ければ説明したいと思いますが、この記事では触れておくだけにしておきます。

OGの優勝に関しては色々Dota史上初の再優勝だとか、二年連続優勝なんてすげーなとか、Topson去年より遥かにつえーじゃねーかこの野郎!など色々な想いがありますが、とても良いDotaが見れて楽しかったです。

この記事に関しての疑問質問意見批判ご要望などは、私のついったーまでどうぞ。読んでくれてありがとうございました。


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