<こびないナビ> 勤務医が誰にも媚びずに本音で語るCOVID-19 #1-2 5歳から11歳のmRNAワクチンの効果や副反応について教えて下さい。①発症予防効果、重症化予防効果

保護者の方がよく目にする子供へのmRVAワクチンの有効性の解説に、以下のようなものがあります。

『日本小児科学会は、5歳から11歳のコロナワクチン接種について、「基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待されます」「5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があると考えています。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。」としています(*1)』こびナビQ&A Q7-4

まず、小児科学会はワクチン接種の考え方として(*2)「意義がある」とはしていますが、学会として「メリットが上回るから接種するべきだ」とは言っていません。それどころか、『接種にあたってはメリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解していること』が必要であると述べており、判断の責任は保護者にあるということになります。保護者が責任を持って判断するためには、mRNAワクチンに多くの意見、賛否両論があることを知ることが最低限必要です。

有効性については、小児科学会でも次のように説明されています。『16歳以上の約4万人を対象とした国外の研究では、2回接種後のワクチン効果は95%(95% 信頼区間、90.3~97.6)で 、発症を予防する高い効果が報告されました(*3)』

この95%の有効率とはどのように出された数値でしょうか。以下の註釈がついています。『ワクチンを2回接種すると95%の人が発症しないという数字ではありません。ワクチン2回接種後に発症した人が約2万人のうち8人、プラセボ(生理食塩水)接種後に発症した人が約2万人のうち162人という数字から計算されたものです』。つまり、「ワクチンを2回接種した2万1720人のうち2万1712人、プラセボ接種した2万1728人のうち2万1566人が発症しなかった」(人数は小児科学会の引用元より)ということです。ワクチンを接種していなくても、99.3%が発症していないのです。さらにこの調査では接種後7日からしか発症者のカウントがなされていません。mRNAワクチンは接種直後にリンパ球が減少するため免疫が低下し感染しやすい(*4)と複数の報告がされていることを考えると、接種直後に感染したのにカウントされていない場合がある疑いのある当調査は、mRNAワクチンの調査としては不十分と言わざるを得ません。

またこれらは、デルタ株までのデータに基づいたものです。では、オミクロン株に対するmRNAワクチンの効果はどうなのでしょうか。

小児科学会では2022年3月28日に以下の文章が追記されました。『流行株がオミクロン株に変わってから感染予防効果は31%、発症予防効果は51%と低下していますが、入院予防効果は74%と報告されています (ただし、入院予防効果を検討した研究の最初の2週間ほどはデルタ株の流行時期に重なっていること、症例数が少ない検討であることには注意が必要です)(*2)』。このように、オミクロン株では当初言われていたような効果は期待できないことが明らかになってきました。また、入院予防効果が74%であったとの報告は米国疾病対策予防センター(CDC)から出されたもの(*5)ですが、注意書きにもあるように症例数が少なく、95%信頼区間が-35%から95%とかなり幅広いものになっています。その他様々な統計上の限界により、本研究の結果は米国で一般化できない可能性がある、とこの報告の中でも述べられています。

また、アメリカの公的機関から発表された5-11歳におけるオミクロン株に対するmRNAワクチン効果の研究として、発症予防効果が1ヶ月しかもたず、逆に接種42-48日後時点では接種群の方が1.4倍罹患しやすくなるという報告(*6)(下グラフ参照)や、接種67日後時点で発症予防効果が46%であったという報告(*7)があります。

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スウェーデンで全国的な登録データを用いて行われた調査(*8)では、発症予防効果は徐々に低下し、約半年後には効果はほとんどみられていません。

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Nordström P, et al. Lancet. 2022 Feb 4;399(10327):814–23.

次に重症化予防効果について見ていきます。

『アメリカでの承認後の臨床研究では、ファイザー社のワクチンは12〜17歳の重症化予防に関しても効果があり、入院を予防する効果が94%、集中治療室入室を予防する効果が98%と報告されています。また、新型コロナウイルスに感染した小児では、まれにMIS-C(多系統炎症性症候群)と呼ばれる全身の臓器(心臓・肝臓・腎臓・脳など)の炎症が起こることが知られていますが、ワクチン接種は小児MIS-C(多系統炎症性症候群)に対しても91%の予防効果が報告されています。』こびナビQ&A Q7-2  (*1)

この数値も先ほどの感染予防効果と同様の算出方法ですので、ワクチンを接種していなくても大多数は重症化していません。またこちらもデルタ株までのデータに基づいたものですし、小児の重症化率が日本と比べて格段に高いアメリカのデータです。小児への感染が拡大したこの第6波においてでも、大阪府のデータ(*9)によると2022年2月26日時点で19歳以下の重症化率はわずか0.0047%(実数で6人)であり、そもそも日本の子供達の重症化率はアメリカに比べて圧倒的に低く、死亡は2022年4月10日現在10歳未満で4人が報告されています。

また、スウェーデンで全国的な登録データを用いて行われた調査(*8)では、重症化予防効果も数ヶ月後には減弱し始め、その後も徐々に弱まっていきます。

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Nordström P, et al. Lancet. 2022 Feb 4;399(10327):814–23.

以上より、武漢型mRNAワクチンの効果はウイルスの変異にともなって低下しており、そもそも重症化率が低い日本の小児に対するmRNAワクチンによる重症化予防効果の意義は限定的であり、これらの解説は日本の現状に即した見解とは言い難いのではないでしょうか。

次項では副反応について見ていきたいと思います。(#1-2 5歳から11歳のmRNAワクチンの効果や副反応について教えて下さい。②副反応)

(*1)こびナビQ&A Q7-4 小児(12歳以上)と成人では、効果や副反応に違いはありますか?、(*2)小児科学会;5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2022年3月28日改訂)、(*3)小児科学会;新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~(2021年11月2日改訂)、(*4)Nature | Vol586 | 22October2020;594-599、(*5)CDC,MMWR Weekly / March 4, 2022 / 71(9);352–358、(*6)medRxiv 2022.02.25.22271454、(*7)MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 4;71(9):352-358.、(*8)Lancet. 2022 Feb 26;399(10327):814-823.、(*9)第74回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月2日)資料3-8

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