【國見洋光】2019.11.10 ツールドおきなわ 140km オープン 53位

【イントロ】
この一年、この日のためにトレーニングしてきた。できることを最大限やって、それをぶつける場としてチームが選んだ場所である。10月は毎年言わずもがな乗り込み時期で、私も3000km以上乗り、すべてのパワープロフィールで昨年を更新していたため、「仮に自分がエースでも勝てる」という心意気でいた。昨年痛感した数分のインターバル耐性の弱さを克服すべく、そのトレーニングも繰り返した。あえて極端なダイエットはせず、パラチノースを活用してストレスなく減量できた。チームの作戦は、エースのキクを勝たせるために、経験豊富なマツオを中心に有力選手の逃げをできるだけ作らないようにして、最終的に少数スプリントに持ち込みたい。普段一緒に練習しているからこそわかる、キクの仕上がりの良さ。アシストとして、気持ちよくエースになってくれ、と言える。しかし、自分も相応に仕上がっている自信があった。やることはやった、と思って現地入りした。

【レース前準備】
補給として、私はいつもドリンクからも積極的にカロリーを取る方針である。パラチノースが後半で効いてくることは練習から実感していたので、水にガンガン入れておいた。ジェル補給も後半に必須なので、マグオンジェルを3個、BCAA入りジェルを2個持った。スタート前にはパラチノース5gをそのまま水で流し込んで摂取しておいた。

【レース展開前半】
スタートはシードで前列から。キクの背中をパンッと叩いておいた。チームで集団先頭付近にかたまって1回目の普久川ダムの登りへ。この1回目が想定より速かった。みんな、こんなに上げて後半大丈夫?と思いながら、先頭付近で越える。下りは基本的に攻めないで先頭が見えるところでこなすが、去年より余裕を持っていても速度は速い。Vengeの真骨頂。
奥までに何人がどう逃げているか、などの把握はできていて、チーム内でも共通認識を持っていた。マツオの存在がとにかく効いているし、みんなそのオーダーに応えるだけの脚がある。そして奥の上り。下から1001番の鈴木さんが右側から坦々と上げていくのが見えたので、すかさず2番手でチェック。メーターは見ない。見ないが、これはキツくないか?と後ろを振り返ると、いつもは横並びの奥の上りだが、本日一列棒状。やはりペース速いのか。鈴木さんが逃げてしまわないように、常に2番手ビタ付けで、余裕ぶって奥は越える。
海岸線に出る前にチーム員が全員いることを確認。その時に、チャリダーの河田選手が横からカッとんでく。どうするかマツオと相談したが、速度差もあるし単独なので静観することに。ただ、これでチャリダーのゴローさんから「うちは牽かないよ」と言われ、それもそうだと思い、チームメイトを休ませるためにも自分が集団先頭のローテーションに参加。うーん、このまま二回目のダムへ突っ込んだら去年同様にキツいなと思い、後ろからチームメイトが参加してくるのを期待。期待で終わったが。
マツオに「ナイス!」と労われつつ、二回目のダムへ。幸いペースが緩んだこともあり、少し集団内に下がって休みつつクリア。荒井君が余裕ない顔していたので、「みんな辛いから大丈夫、安心しろ」というニュアンスで言葉をかける。そこからの下りもVen、、、(略)。学校坂に入る前に仕事をするため集団先頭に戻る。そして左にカーブしながら学校坂へ。この時、先頭で上げてしまって一気に集団を絞ろうと考えた。前半に集中してアシストしたため、残念だが最後までは残れないのはわかっていた。なので、自分のできることはここで小集団にしてキクの勝率を上げること。よし、ダンシングから座ってインナーに、、、
ガチャン!!という音とともにチェーン落ちを悟る。とっさに、集団に轢かれないようにそのまま動かず脚だけ付いて、チェーン落ちた!と叫ぶ。集団が自分の左右を通過するのを待ってチェーンをかけなおした。およそ20-30秒。この間にペースが上がった集団ははるか前。1分ほど全開で追いかけるも虚しく終了。
【レース展開後半】
自分の仕事は終わってしまったが、名護まで帰らなければ。あと70kmって、まだ半分あるぞ。脚はかなり残っているので、たれてきた選手をパスしつつ、元気そうな選手を引き連れてパックにしてローテを促す。回らない。促す。回らない。促す。ペース配分も叫びつつ、ローテを促す。登りは自分が先頭で引き続けペースメイクし、下りで回すように1時間叫び続ける。みんな、名護まで早く帰りたくないのだろうか。若干のいら立ちを隠せずにいた。羽地まで10人ほどでローテ+後ろにゾンビ化した選手20人ほどを引き連れて。
羽地の途中でマツオに追いついたので状況を聞くと、逃げに追いついて、どうやらキク、永瀬さんも最後までいけそうだ。ウキウキしながらマツオと最後の平坦を走っていたら、おや、なぜキクがここに?落車したのは一瞬でわかった。その瞬間、マツオと自分はテンションダウン。一応最後もスプリントチックにフィニッシュはしたが。チームとしてはタカミーの6位が最高位で、負けは負け。勝ちに来たんだから。

このレースは一年で最大の目標になっているが、フィニッシュするたびにその理由に気づく。「来年また頑張るか」、なんてそう簡単には言えない努力をしてきたつもりである。最高に仕上がっている選手同士がぶつかり合う。自分のトレーニングを振り返っても決して間違っていたとは思えない。アシストに徹したことも間違っていない。少しずつだが年々自身が進化していることを感じられる。そして何も文句を言わず支えてくれる家族、仲間。
「さぁ、来年また頑張るか。」表彰式後にチームメイトと語る。そう、これが沖縄なんだ。

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