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第21期帝豊戦決勝


今回観戦記を書かせていただきます、日本プロ麻雀連盟九州本部所属、吉田彩乃です

拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いです。

 

 

決勝メンバーはこの4名。

 

予選1位通過、下山哲也プロ。(写真左手前)

 

予選2位通過、団野和広さん。(写真右手前)

 

予選3位通過、阿部竜也プロ。(写真右奥)

 

予選4位通過、赤星暢一さん。(写真左奥)

 

(以下敬称略)

この決勝戦は、予選のポイントはリセット、全4回戦行い、トータルポイントが一番多い選手が優勝となる。

ルールは一発裏ドラのない、日本プロ麻雀連盟公式ルールを採用。

 

下山のこれでもかという強さを見たくもあり、他の三者がどう戦うのかも楽しみな決勝戦。

今期から連盟所属となった阿部、競技麻雀を心から愛する団野、大分で行われる大会に積極的に参加する赤星。

帝豊戦(元大分リーグ)第4期、14期と優勝経験あり、そして皇帝位にもなったことのある下山に、三者がどのような戦いを挑むのかが見所。

 1回戦。

起家から、赤星、団野、下山、阿部の並びでスタート。

 

東1局、親は赤星、ドラ3

下山の配牌。

次巡白を対子にした下山、3巡目、積極的に5をチー

やはり一番最初に声を出したのは下山。

ドラ含みのターツ、だがしかし両面。

3巡目にチーの発声が出来る打ち手はどのくらいいるのだろうか。

 親の赤星も、下山の切った⑤をポン

この⑤にポンの発声が出来る打ち手もどのくらいいるのだろうか。

 そして下山は以下の聴牌。

親の赤星も聴牌。

中バックかと思いきや対々和という役をつけての大物手に仕上げた赤星。

この局は赤星、下山の2人聴牌で流局。

東3局2本場、親は下山、ドラ一

下山が11巡目にカン⑥で聴牌。

タンヤオ三色をダマテン選択。

同巡、赤星が切った⑥をとらえ、7700点は8300点の出アガリ。

⑦をツモってきたときの選択、そしてダマテンの選択がアガリに結び付いた。

話は少しそれるが、今回決勝戦を戦うにあたり、下山には心強い応援団がいた。

公民館や麻雀教室に来てくれている生徒さんたちだ。

下山は日頃、積極的に麻雀普及活動に取り組んでいる。

生徒さんからの「先生頑張って」のエールは、優勝を願う気持ちを強くしたことだろう。

頑張れの声があるだけで、私たちプロは無限に頑張れる気がしてくるものだから。

東4局、親は阿部、ドラ⑤

赤星が中の仕掛けを受けている12巡目、下山は⑥をツモってきてドラの⑤を切ってリーチ。

待ちは①④⑦

①だと高め一気通貫。

このリーチを受け、あたり牌の⑦をツモってきた赤星は少考。

河の強い下山からのリーチ、手の中に安牌は⑤のみ。

対子で持っていた①に手がかかってしまう。

リーチピンフ一気通貫ドラ1。

赤星から下山が8000点の出アガリとなった。

下山がダマテン選択をしていたら、きっと赤星は素直に⑦をツモ切っていた。

リーチを受けたからこその手痛い放銃となった。


南2局1本場、親は団野、ドラ東

9巡目、親の団野に9待ちのチートイツドラドラの聴牌が入る。

団野さんはダマテンを選択。

11巡目にツモ切りリーチ。

リーチの入った巡目で阿部も聴牌。

少考し、ダマテン。

このダマテン選択を、解説の塚本は阿部の良さだと言った。

阿部本人も、自身を守備型だと自負している。

受けが強く、しっかりダマテンでアガリを決める。

私も阿部にそういう印象を持っている。

色々な予選に参加し、真剣に麻雀を打つ姿を見ていると、阿部が競技麻雀に真摯に向き合っているのがよくわかる。

期待の新人であることに間違いない。

下山も13巡目に三、六待ちの聴牌で追いつくも、団野が赤星から12300点の出アガリ。


そのあとも大きなアガリを決めた団野が下山を捲ってトップスタートとなった。

1回戦終了時
団野+23.9

下山+18.3

阿部▲6.4

赤星▲35.8

2回戦。

起家から、下山、赤星、阿部、団野の並びでスタート。


東2局、親は赤星、ドラ⑧

7巡目先制聴牌をいれたのは団野。

待ちは2、5

しかし親の赤星から待ったのリーチ。

ずっと苦しい戦いが続いていた赤星。

大物手がやっと舞い込んできた。

待ちは⑥、發

しかしながら、この局は団野が5をツモあがり、400/700。

赤星は苦渋を味わう結果となった。

赤星は大学生のころから積極的に、競技大会に参加していた。

多くの参加者が集う、地元の記念大会で入賞するなどの実績を持ち、天鳳ユーザーで、7段という実力者だ。

打点を追い求める公式ルールらしい打ち方は、視聴者を魅了したに違いない。

東3局1本場、親は阿部、ドラ6

団野、2巡目の東を仕掛けてドラ色の索子の染め手へ向かう。

下山、西、一気通貫のカン八待ちの聴牌。

索子の染め手がいる、打点十分、親の現物という状況からダマテン選択。

この局は下山に軍配があがり、親の阿部が5200点は5500点の放銃となった。

南1局2本場、親は下山、ドラ③

赤星に聴牌がはいる。

待ちは六、九

次巡ツモ切りリーチ。

下山から六が打ち出され、2000点は2600点の出アガリとなった。

苦しい戦いが続いていた赤星の初アガリ。

トップ目の下山の親番を自ら終わらせにいった。

下山の一人浮きで迎えた南4局、親は団野、ドラ⑥

阿部にチャンス手がはいる。

1枚目の東はスルー。

手を育てた後、2枚目の東を仕掛け聴牌。

待ちは北、發

道中、赤星が三色同順を見てペン三ターツを払い聴牌とらず。

団野も七をポンしてイーシャンテン。

だがこの局は阿部が發を力強くツモあがり、1300/2600。

原点復帰の大きなアガリとなった。

我慢に我慢を重ねた阿部にとって、報われるアガリだったに違いない。

あと2回戦。

東の1枚目を鳴かずに見送り、アガリに結び付く手順。

きっとこのアガリが阿部にとって大きなものになる。

2回戦終了時
下山+39.8

団野+15.2

阿部▲1.5

赤星▲53.5

3回戦。

起家から、団野、下山、阿部、赤星の並びでスタート。


赤星はあと2半荘トップをとらないと優勝は難しいポイント状況。

団野、阿部も3回戦ポイントをプラスし、最終戦の条件を少しでも軽くしたい。


東2局、親は下山、ドラ5

5巡目に団野が東をポン。

そのあと下山が四単騎のタンヤオチートイツを聴牌。


下山の目から見て、四の景色は悪くない。

実際は山に1枚。


そして同巡阿部も3、6待ちの役なし聴牌。

リーチはせず、ダマテン選択。

2巡後、下山が山に2枚いる

⑧単騎に待ちを変える好判断。

ダマテンのまま続行。

 

そして団野も⑨、白待ちで聴牌。

阿部は2をツモってきて2、5に待ちかえ。

解説がここでリーチかと言っていたが、阿部の選択はダマテン。

三色同順を見ているのか、下山の聴牌気配を感じてなのだろうか。

そして下山のツモ切った4が強く見えたのか、阿部は下山に通る2を切って⑤単騎に待ちを変える。

丁寧に聴牌を維持。

阿部の持ち味は、こういった繊細な打ちまわしなのだろう。


結果、団野が⑧を持ってきてツモ切り、下山がタンヤオチートイツ、4800点の出アガリ。

下山を追いかける団野にとっては痛恨の放銃となってしまった。



東4局1本場、親は赤星、ドラ八

「親番3時間連荘します!!」と休憩中に言っていたという赤星。

諦めることなく、優勝することだけを見据えて戦っている。

普段のリーグ戦とは違い、4半荘で優勝者が決まる決勝戦。

戦ってみないとわからない緊張感、そして決勝戦ならではの条件戦。

そんな中、赤星は優勝するために手を作り、何度あがれずとも戦い続けていた。

親の赤星、一気通貫も三色同順も見えるイーシャンテン。

そして次巡、聴牌がはいる。


カン4待ちの三色同順ドラ1。

是が非でもアガりたいこの手、赤星さんはダマテンを選択した。

ツモれば3900点オール、ずっと苦しい展開が続いている中、ようやく早くて打点のある手が赤星に舞い降りた。

見ている私も、赤星にツモってほしい・・・と願った。

4が浮いていた阿部だが、3を持ってきて4が出ていかない形になった。

そして次巡、タンヤオ三暗刻の2、5待ちの聴牌がはいる。

一手替わり四暗刻のこの手、ダマテンを選択。


そして阿部はこの手をツモあがり、2000/4000は2100/4000。

赤星はこの時なにを思っただろう。

リーチをすれば違う未来だったかもしれないと、悔やんだのだろうか。


南4局1本場、親は赤星、ドラは3

3回戦、下山が40700点持ちのトップ目で迎えたオーラス。

赤星は現状20900点。

何とか連荘して、下山とのポイント差を縮めて最終戦を迎えたい。

赤星が⑨をポンして、対々和を見つつ聴牌を目指しているところに、団野からリーチがはいる。

待ちは①、④

2巡後に①をツモあがり、1000/2000は1100/2100。

団野は着順を1つあげることに成功。

下山がトップのまま3回戦が終了した。

最終戦は下山を三者が追いかける形となった。

3回戦終了時
下山+57.4

阿部+10.7

団野+4.6

赤星▲72.7

最終4回戦。

起家から、阿部、団野さん、赤星さん、下山の並びでスタート。

日本プロ麻雀連盟の規定により、起家から暫定2位、3位、4位、1位の順で席順が決まる。


東1局、親は阿部、ドラ白

阿部は現在+10.7ポイントで、下山との差は46.7ポイント。

下山の素点を削りつつ、2回の親番での加点、それに繋がる連荘がとても重要となる。


阿部はこの手から、2枚目の發を仕掛けなかった。

234の三色同順は確かにみえている。

だがここでは發を仕掛けて聴牌がとれるのならば、その選択をしてほしかった。

とれる聴牌を取らず、親番がながれてしまうリスクを回避することの方が大切だと思う。

この局は是非阿部に見返してもらいたい。

そして再び決勝戦で戦う日が来たら、また成長した阿部の麻雀を見せてほしい。

東3局、親は赤星、ドラ三

5巡目に先制聴牌したのは下山。

中と三のシャンポン待ち。

中なら出アガリ出来る待ちを選択し、ダマテン。

団野が大物手を聴牌してリーチ。六、九のシャンポン待ち、高め九ならば三色同刻。

そしてここからが見物だった。

団野の宣言牌の4を赤星さんが喰いかえのチー。

聴牌していた下山にドラの④が喰い下がり、三の対子落としをして聴牌を外す。

そして本来下山のツモだった中が阿部の元に。

赤星の仕掛けで未来がガラッと変わった。

麻雀は奥が深く、本当に面白いゲームである。


この局は下山が団野に九を放銃という結果になった。

8000点の直撃。このアガリは団野さんにとっても他の2人にとっても大きい。

そして放銃した下山はヒヤッとしたと感想戦で言っていた


南1局、親は阿部、ドラ五

8巡目に下山が切った初牌の東は鳴かず、東の対子落としをしてタンヤオに向かう阿部。

そして②をポンしてイーシャンテン。


次巡⑧を持ってきて聴牌。待ちは2、5

阿部の1人聴牌かと思いきや、阿部への放銃を回避しながらドラの五を暗刻にして聴牌したのは下山。

待ちはカン⑦

そして最後のツモ番で4枚目の⑦をツモりあがった。2000/4000。

このアガリで下山は原点復帰。

南4局の親は下山。

泣いても笑ってもこの1局で優勝者が決まる。

最終局の条件は、

阿部→役満ツモあがり、下山から3倍満直撃

団野さん→3倍満ツモあがり、下山から倍満直撃

赤星さん→トリプル役満ツモあがり、下山さんからトリプル役満直撃

となった。


南4局は全員ノーテンで流局。

第21期帝豊戦、見事有優勝に輝いたのは、最初から最後まで安定した強さを見せてくれた下山哲也プロ。

3度目の優勝となった。



ここで少し、帝豊戦に昔から深く関わる大分の皆さんのお話をさせていただきたい。

塚本をはじめ、下山、矢野、柿添の4名は、日頃から競技麻雀普及、運営に力を注いでいる。

帝豊戦の他にも、雀豊位というタイトル戦や、定期的に行われる勉強会の運営など、若手プロの経験の場を増やしたい、競技麻雀をたくさんの方に知ってほしい、もっと身近なものにしたいという強い願いの元、何度も話し合い、少しずつ形にしてきた。

何か新しいことを始めるのはとても大変なのに、彼らは決して手を抜かない。

プロとして、麻雀を愛する者として、自分たちに何が出来るだろうと日々模索している。


この観戦記を読んでくださった皆さんに、是非帝豊戦や雀豊位に参加してみてほしい。

最初は勉強会からでもいい、とにかく一度見に行ってほしい。

もっともっと麻雀が好きになれる、素敵な場所です。


下山プロ、おめでとうございます!!

そして選手の皆さん、実況解説の皆さん、放送対局に携わった運営の皆さん。

素敵な対局をありがとうございました。

長くなってしまいましたが、最後に優勝した下山プロの、小さくも大きな応援団からの贈り物ををそえて、観戦記の締めとさせていただきます。

ご覧いただきありがとうございました。

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