生きろ vol.8

「こっち、こっち」
店員さんが多分、あちらの方ですか?と聞いていて、こっちを見て確認してから、その4人は悠子側に双子、僕側に米原とヲタクさんが座った。

ヲタクの方をよく見ると、見覚えがあって、
「あれ、齋藤じゃん」
米原同様、昔からの知り合いで、人見知りで声が小さいことを思い出し、やっぱり小さい声で「よぉ、久しぶり」
きっと思ってももないこといってるなと思わされ、相変わらず才能の無駄持ちだと思わされ、「その才能俺にくれよ」と何度神様に頼んだことか。

初見の双子、僕は初見だったが悠子が、
「元シャンディの御雪さんと深雪さんですよね」
珍しく悠子のテンションがあがっている。

悠子が昔から好きなアイドルグループで、確かにどこかで見たことある的なものはあった。
グループの中で作った【シャンディ】が思った以上に売れたことで、アイドルユニットからもハズれ、バンドとしてデビューした。

何度かメンバーがかわったあと、2人とも【シャンディ】を抜け、スタジオミュージシャンになり、そこから2年で齋藤の誘いで米原と出会い、これからのdtmに関わることを決めたらしい。一卵性双生児のため、髪を編み込んでる方、ロングで長く伸ばしてる方がいて
「私が深雪です」と編み込みしてる方で姉。
「わたし、妹の御雪です、よろしくお願いします」

深雪はハキハキとしている。御雪の方はやんわりとしている。

「とりあえず、そちら側の自己紹介も」

そう言って僕と悠子の自己紹介をするように米原が促す。

「将来、いや今からでもdtmのセンスに天才の詩を歌わせたいと思ってます。秋元絵仁夢っていうしがない詩人です」

「喜多原悠子です。えっと…、絵仁夢の友人で……」

「……彼女さんじゃないんだ」

ぼそっと深雪がつっこむ。

「あ、いえ。……」

悠子が何も喋れなくなりそうなので、米原は姉妹に、

「思っても言っちゃダメだよ」

その流れはしばらく沈黙をうみ御幸の方が

「すいませんでした」

と謝る。

深雪と米原は、しらーとその場の展開に身を任そうとしていた。

「んで、詩の話だけど」

僕の方も話を停滞させ続ける訳にも行かず、本題へと話をすすめる。

すると御幸の方が、
「とっても良かったです。」

当たり前だろ。
そんな顔をすると
深雪が

「お世辞なのに」

ぼそっと呟く。

「だからそれ、言っちゃだめだって言ったじゃん」

米原は、今僕がしている表情が引きつっているのがわかっている。

「…はぁ」

失望されたんだって思った。
きっと、米原を信用して僕に書かせたのだろう。「それでこれ?」
そういうことだろう。

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