雨のなか

1
己の怠惰のせいであると
生まれたうたさえ貧相であると
ぽつりとこぼす先もなし、
がなり立てる現実は、
わたしをたやすく叩き割る、
叩き割られたその“もと”は
いつ離れるともしれないが
どうにも無機物なもんで
燃えたり、腐ったりはしない
それどころか、切っ先で
所構わず、人構わず

おい、犬、わたしはもう疲れたぞ
美しい絵を見せておくれな
けれど、天使やら悪魔やら
頼む、眠るわたしを連れてくな

彼女のあの、言葉を
なんとかなる、大丈夫だと
そんな台詞を盾にして
今まできたもんだから

蝶々はきらきら飛んでてさ
ただ、それを捕まえて
捕まりゃしないか、
殺しやしないか

ただそれだけが怖いありさま

がたがた震える
濡れた犬

裸を見られた
濡れた犬










 
2
雨に濡れた一輪の桜が綺麗で
身悶えして泣いた

本も映画も見れなくなっても
花はいつでも心を癒す
突き刺す赤すら
私を彼方へ飛ばす
そして穏やかに、心に横たわり
風に乗って淡く溶ける

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