株は心理戦(11月13日号)
株は連想ゲーム
ポスト海運株は?造船株に仕手化の様相!
2020年から大相場を継続している海運株3社(9101日本郵船、9104商船三井、9107川崎汽船)は、3社共に高値圏で揉み合う。しかし、高値警戒感からか少しばかりの良い決算も材料出尽くしとされ、未だ割安といった理論的上値余地はあっても高所恐怖症は拭えない。海運株3社の11月10日現在のデータを記載する。
PER 配当 一株益 11/10終値
9101日本郵船 約8倍 130円 441円 3,693円
9104商船三井 約6倍 190円 607円 3,864円
9107川崎汽船 約10倍 200円 435円 4,749円
海運株の長期上昇相場の主因は、コロナ後の経済活動の再開に伴う市況回復と高配当、割安感だけなのだろうか。アナリストが指摘するように、景気動向で業績が左右され割安感が剥落する側面も否定できない。一方、外航海運市況の好転や円安の恩恵もある。
脱炭素の新規制
隠れた重要な一つ視点がある。2023年に、IMO(国際海事機関)が導入する「燃料実績格付け制度」だ。船舶のGHG(温室効果ガス)排出量をリアルタイムで見える化して、航海終了時に環境性能を5ランクで評価できるもの。悪評化を受けると船のオペレーターやオーナーに改善計画の提出が義務付けられる。
日本郵船、商船三井、川崎汽船などの大手船社は、揃って2050年までのネットゼロ・エミッション化を目標として打ち出し、新燃料船の開発を積極的に行っている。現在のマーケットは運賃の高止まり状態にあるが、脱炭素の新規制による船舶のコントロール下では、運賃は下がらない可能性が高い。そのため、海運企業の収益構造における割安感の剥落リスクは少ないと筆者は見ている。
海運と造船は両翼
全世界の新燃料船建造は年間1億総トンと倍増!
新型コロナ感染症の影響で停滞していた経済活動が再開し、海運市況が上昇していること背景に新造船市況は2021年を底に回復傾向にある。世界的には既存のディーゼル船のGHG排出量を抑えるため、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素、アンモニア、メタノールなどを使用する新燃料船に切り替えることが求められていた。そのためには、2030年以降で年間1億総トンレベルの建造が見込まれ、2022年の全世界における新造船建造量約5,500万総トンの約2倍増にあたる新造船ラッシュが始まる。まさに海運株と造船株は両翼の関係にあり、シナジ―効果が期待できる。
当欄では、7014名村造船所を再三にわたり800円割れを推奨し、大相場を予見してきた。先週の海運・造船株は、決算発表を期に相次いで売られた。特に、7018内海造船は造船株の中で先行していただけに、6日の決算発表後の急落は造船株全体に波及した。売り方から見れば売り崩す絶好のチャンスだったかもしれない。しかし、7014名村造船所は9日の決算発表で増額修正が好感され、10日は150円のストップ高で9百万株の買い物を残した。これを受け海運株も出直る気配を見せ、総じて造船株が堅調だった。日経平均が終日軟調に展開する中では、海運・造船株の連動性が確認できた。
今後は長期的展望で、次の造船株に注目したい。
本命の7014名村造船(956円)、7003三井E&S(490円)はニュースターとなるか。重厚な7011三菱重工(8,306円)と7012川崎重工(3,266円)も。また、7018内海造船(3,950円)の出直りなるか。更に、タイガース優勝に沸く神戸の6018阪神内燃機(2,094円)など。
※この情報は筆者の個人的意見で、投資行動は自己責任でお願いします
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