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ボーイング対エアバスはエアバスの大勝利?

ボーイングが経営危機に陥ったことから考える2つの航空機メーカーの対決の行方

こんにちは、航空ファンの皆さん。今回は、世界の航空業界を二分する巨人たち、ボーイングとエアバスの対決についてお話ししたいと思います。この2つの企業は、長年にわたって市場シェアや技術力で競争してきましたが、近年はボーイングが大きな打撃を受けています。一方、エアバスは堅調に成長を続けています。では、ボーイング対エアバスはエアバスの大勝利と言えるのでしょうか?それとも、ボーイングは巻き返しを図れるのでしょうか?それでは、見ていきましょう。

それぞれの歴史

ボーイングは1916年にアメリカで創業した航空機メーカーで、第二次世界大戦や冷戦期には軍用機の開発で多くの実績を残しました。 1958年には世界初のジェット旅客機であるボーイング707を発表し、民間航空市場にも進出しました。 その後もボーイングは旅客機の開発で革新的な技術を次々と導入し、世界最大の航空機メーカーとして君臨しました。 代表的な機種としては、1969年に登場した世界初のワイドボディ機であるボーイング747や、1981年に登場した高効率な双発機であるボーイング767などがあります。

一方、エアバスは1970年に欧州各国の航空機メーカーが合同で設立した企業体で、当初はボーイングに対抗するために協力して旅客機を開発することを目的としていました。 1972年には初の旅客機であるエアバスA300を発表し、1974年には世界初の双発ワイドボディ機であるエアバスA300B2を発表しました。 その後もエアバスは「フライ・バイ・ワイヤ」と呼ばれる電子制御システムやコンポジット材料などの先進技術を積極的に採用し、市場シェアを拡大していきました。 代表的な機種としては、1988年に登場した中距離双発機であるエアバスA320や、2007年に登場した世界最大の旅客機であるエアバスA380などがあります。

現在、ボーイングとエアバスは旅客機市場の約90%を占めるほどの巨大なライバル関係にあります。 両社はそれぞれの強みや戦略を生かして、さまざまなニーズに応える旅客機を開発しています。

市場シェア

では、現在の市場シェアはどうなっているのでしょうか?2020年12月末時点での受注数と納入数を見てみましょう。

| 会社 | 受注数 | 納入数 |
| --- | --- | --- |
| ボーイング | 5,530機 | 4,442機 |
| エアバス | 7,650機 | 7,184機 |

この表から分かるように、エアバスはボーイングを大きく上回っています。特に納入数では約2,700機もの差があります。

ボーイングの経営状況

そして、ボーイングが直面している経営危機についておさらいしましょう。まず、ボーイングが経営危機に陥った原因として挙げられるのが、737 MAXの問題です。737 MAXは、ボーイングが2017年に発売したナローボディ機で、燃費効率や性能を向上させた新型機でした。しかし、2018年から2019年にかけて、2度の墜落事故を起こし、346人の命を奪いました。事故原因は、機体の安定性を高めるために導入された自動制御システム(MCAS)が誤作動し、操縦士が制御不能に陥ったことでした。この問題により、737 MAXは世界中で飛行禁止となり、ボーイングは大量のキャンセルや賠償請求に直面しました。また、安全性や信頼性に疑問が持たれるようになりました。

さらに、2020年には新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、航空需要が急減しました。787ドリームライナーの製造不良問題なども重なり、ボーイングはアメリカ政府に支援を要請するなどアメリカの基幹産業の一つである民間航空機産業では,唯一の大型ジェット機を作れるメーカですが,なかなか経営はヤバいことになっており,CEOの交代劇など会社は混乱を見せています。

これにより、ボーイングは多くの受注キャンセルや納入延期を受けることになりました。また、新型コロナウイルスの影響で開発が遅れた777X型機も、2021年になっても認証を取得できず、納入が2023年以降にずれ込む見通しです。これらの要因で、ボーイングは2020年に約120億ドル(約1兆3000億円)の赤字を計上しました。これは、ボーイングの創業以来最大の赤字です。

エアバスの経営状況

一方、エアバスはどうでしょうか。エアバスは737 MAX型機の最大の競合機種であるA320neoファミリーを積極的に販売しました。A320neoファミリーは、新型エンジンや翼端装置などの技術革新により、燃費効率や騒音低減などの性能が向上した中型機です。エアバスは2019年にA320neoファミリーの受注数が7000機を超え、2020年には約560機を納入しました。これにより、エアバスは2019年にボーイングを抜いて世界最大の航空機メーカーになりました。

その後,エアバスも新型コロナウイルスの影響で売上や受注が減少しましたが、それでもボーイングよりはマシな状況です。エアバスは2020年に11億3300万ユーロ(約1448億円)の赤字を計上しましたが、これはボーイングの赤字よりもとても小さいです。また、エアバスは737 MAX型機の不祥事を利用して自社製品の販売促進を行いました。特にA320neo型機は737 MAX型機と同じく燃費効率が高く、環境性能も優れています。このA320neo型機は2020年に約640機を納入し、市場シェアを拡大しました。

現在製造中の機体からみても,エアバスは737 MAXのライバル機であるA320neoシリーズを成功させました。A320neoシリーズは、エアバスが2016年に発売したナローボディ機で、新型エンジンや翼端装置(シャークレット)を採用し、燃費効率や性能を向上させた新型機でした。737 MAXの問題により、多くの航空会社がA320neoシリーズに切り替えるか検討するようになりました。また、エアバスはワイドボディ機でもA350やA330neoなどでも躍進を続くており,これからも市場シェアを高めていくでしょう。

競合機種の売れ行き

このように、ボーイングとエアバスの間には、明らかな差が開いています。では、この差は今後どうなるのでしょうか?それぞれの競合機種の売れ行きや特徴から考えてみましょう。

ナローボディー,単通機

まず、ナローボディ(単通路)機の市場です。ここでは、ボーイングの737シリーズとエアバスのA320シリーズが競合しています。737シリーズは、1967年から生産されている世界最古かつ最多の旅客機で、累計で1万機以上が販売されています。しかし、その最新型である737 MAXは、前述した事故と運航停止によって信頼性を失いました。2020年12月に運航再開が認められましたが、その後も不具合や事故が相次ぎました。また、737 MAXは、737シリーズの既存の設計に新型エンジンを取り付けたものであり、燃費や騒音などの性能はA320シリーズに劣ります。一方、A320シリーズは、1988年から生産されているヨーロッパ発のナローボディ機で、累計で1万機近くが販売されています。その最新型であるA320neo(new engine option)は、2016年から就航しており、燃費や騒音などが大幅に改善されています。また、A320neoは、フライバイワイヤやコックピットレイアウトなどの先進的な技術を採用しており、パイロットや乗客にも好評です。このように、ナローボディ機の市場では、エアバスが優位に立っています。

A320は総発注機数は1万4276機と、ライバルであるB737の1万1650機を凌駕している。

大型機

ボーイングとエアバスは、長年にわたってワイドボディー機の分野で熾烈な競争を繰り広げてきました。ボーイングは、1970年に世界初のワイドボディー機であるB747ジャンボジェットを発表し、その後もB767、B777、B787といった人気機種を次々と投入してきました。一方、エアバスは、1974年に初のワイドボディー機であるA300を発表し、その後もA310、A330、A340、A350といった機種を開発してきました。また、2007年には世界最大の旅客機であるA380を発表し、ボーイングのB747に挑戦しました。

この2機種は、世界最大の旅客機として長年にわたってライバル関係にありました。しかし、近年では、両機種ともに需要が減少し、生産が終了することが決まりました。ボーイング747は2020年に最終受注を獲得し、2022年に生産を終了する予定です。エアバスA380は2019年に最終受注を獲得し、2021年に生産を終了しました。この2機種は、それぞれ568機と251機の受注数を記録しましたが、開発費や運用費を考えると赤字になったと言われています。

では、なぜこの2機種は失敗したのでしょうか?その理由は、主に市場の変化と技術の進歩にあります。市場の変化とは、航空会社がポイント・ツー・ポイント(直行便)の需要に応えるために、より小型で効率的な機種を求めるようになったことです。技術の進歩とは、新型エンジンや複合材料などの導入によって、小型機でも大型機に匹敵する航続距離や燃費効率を実現できるようになったことです。このような状況下では、大型機はコスト面や柔軟性面で不利になりました。

中型機

次に、中型機と言えば、ボーイング787とエアバスA350ですね。この2機種は、新世代のワイドボディ機として注目されています。両機種ともに複合材料を多用し、高効率エンジンを採用しています。また、快適性や静粛性も高く評価されています。ボーイング787は2004年に開発が発表され、2011年に初就航しました。エアバスA350は2006年に開発が発表され、2015年に初就航しました。この2機種は、それぞれ1563機と915機の受注数を記録しており、現在も好調な売れ行きを見せています。

では、今後のボーイングとエアバスの対決はどうなるでしょうか。ボーイングは2020年末に737 MAX型機の運航再開を認められましたが、まだ多くの国や航空会社が運航再開を見送っています。また、737 MAX型機の信頼回復に時間がかかることや、新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の低迷などの課題があります。一方、エアバスはA320neoファミリーだけでなく、A220やA321XLRなどの中型機も開発しています。これらの機種は、環境性能や航続距離などで優れており、市場ニーズに応えることができます。

以上から、ボーイング対エアバスはエアバスの大勝利?という疑問に対しては、現時点ではエアバスが優位に立っていると言えます。しかし、航空業界は常に変化するものです。ボーイングも新たな技術や戦略で巻き返しを図る可能性もあります。

今後の展望

最後にこの競争の今後の展望についてお話します。

ボーイング

世界の旅客機市場を二分するボーイングとエアバスは、常に新たな技術や機材を開発し、お互いに競い合ってきた。しかし、近年は両社にさまざまな課題が立ちはだかっている。ボーイングは737MAXの不具合や787の生産問題、エアバスはA380の生産終了やA350の納入遅延など、それぞれに苦戦している。コロナ禍で航空需要が大幅に減少したことも、両社にとって打撃となった。そんな中、両社はどのようにして市場を取り戻そうとしているのだろうか?

ボーイングは現在、中型機市場に注力している。中型機とは、200~300席程度の座席数で、短・中距離路線から長距離路線までカバーできる機種のことである。この市場は今後も需要が高まると見込まれており、エアバスはA321neoやA321XLRなどで優位に立っている。ボーイングはこれに対抗するために、新型機B797(仮称)の開発を進めている。B797は250~270席で、航続距離は8000km程度を想定している。また、新素材や新技術を採用し、燃費効率や快適性を高めることも目指している。B797は2025年頃に就航する予定である。

しかし、B797の開発にはまだ多くの不確定要素がある。まず、コロナ禍で航空会社の財務状況が悪化しており、新型機への投資意欲が低下していることだ。ボーイングはB797の開発費用を抑えるために、既存の部品やシステムを流用することも検討しているが、それではイノベーションや差別化が図れない可能性もある。また、B797は単通路機(シングルアイル)か双通路機(ツインアイル)かという点でも決定が下されていない。単通路機ならば生産性や運用効率が高まるが、双通路機ならば快適性や柔軟性が高まる。どちらを選ぶかによって、市場ニーズや競合製品との差別化が変わってくる。

ボーイングはB797だけでなく、他の既存機種の改良や更新も行っている。737MAXは不具合を解消し、各国で飛行許可を取り戻した。

ボーイングは、旅客機の開発において、以下の3つの特徴を持っています。

  • 燃費効率や環境性能を重視した新素材や新技術の導入

  • 中型機や長距離機を中心とした製品ラインナップ

  • 顧客との密な関係づくりや柔軟な対応力

まず、ボーイングは、燃費効率や環境性能を重視した新素材や新技術の導入に積極的です。例えば、2009年に就航した787ドリームライナーは、従来の旅客機に比べて50%以上が複合材料で作られており、重量が軽くなり、燃費が20%向上しました。また、2020年に就航予定の777Xは、世界最大級の翼幅を持ちながらも空港での運用性を確保するために、翼端が折りたためるようになっています。さらに、エンジンや電子システムなども最新のものを採用し、787よりも10%以上燃費が良くなるとされています。

次に、ボーイングは、中型機や長距離機を中心とした製品ラインナップを展開しています。これは、市場の需要が高いと見込んでいるからです。ボーイングは2019年に発表した市場予測で、2038年までに世界で4万4400機の旅客機が必要になると見積もっていますが、そのうち約6割が中型機(150~300席)であり、その多くがアジア太平洋地域で需要が高まると予測しています。また、長距離機(300席以上)も約2割を占めると見込んでおり、特に中東や中国などから欧米への直行便が増えると考えています。一方で、小型機(150席以下)は約2割しかなく、その多くは北米や欧州で需要があるとしています。

今残念ながら,B757の後継であり,B737やA320LRなどの利用客やB787の高価格化を懸念する顧客をターゲットにしたB797も残念ながら,開発中止に追い込まれており,ボーイングの経営は大丈夫なんですかね?

エアバス

エアバスが未来に向けて現在,開発している技術・機材と戦略について紹介します。エアバスは,以下の三つの分野で,革新的な取り組みを行っています。

  1. 環境に優しい航空機の開発

エアバスは,気候変動への対応として,環境に優しい航空機の開発に力を入れています。特に,水素を燃料とする航空機に注目しています。水素は,燃焼時に二酸化炭素を排出しないため,温室効果ガスの削減に貢献できます。また,水素は,再生可能エネルギーから生成できるため,持続可能なエネルギー源として期待されています。

エアバスは,2020年に「ZEROe」というコンセプトを発表しました。これは,水素を燃料とするゼロエミッションの航空機のビジョンです。エアバスは,水素を燃料とすることで,CO2や窒素酸化物などの排出量を大幅に削減できると考えています。また,水素は再生可能なエネルギー源から生成できるため,循環型社会にも貢献できます。

エアバスは,ZEROeのコンセプトのもとに,3種類の航空機のデザインを発表しました。一つ目は,ターボファン型の航空機で,120~200人の乗客を乗せて約3700kmまで飛ぶことができます。この航空機は,水素タンクを胴体後部に設置し,水素燃料電池とガスタービンエンジンを組み合わせて推力を得ます。二つ目は,ターボプロップ型の航空機で,100人以下の乗客を乗せて約2000kmまで飛ぶことができます。この航空機は,水素タンクを胴体後部に設置し,水素燃料電池とプロペラエンジンを組み合わせて推力を得ます。三つ目は,ブレンデッドウィングボディ型の航空機で,200人以上の乗客を乗せて約2000kmまで飛ぶことができます。この航空機は,水素タンクを主翼内部に設置し,水素燃料電池と複数のガスタービンエンジンを組み合わせて推力を得ます。

エアバスは,これらの航空機を2035年までに実現することを目指していますが,そのためには,多くの課題を克服する必要があります。例えば,水素の安全性や効率性の確保,水素インフラの整備や規制の調整などです。エアバスは,これらの課題に対して,政府や産業界と協力して取り組むことを表明しています。

2.デジタル化と人工知能の活用

エアバスは,デジタル化と人工知能(AI)の活用にも積極的です。デジタル化とAIは,航空機の設計や製造,運用や保守など,航空業界のあらゆる分野で効率化や最適化をもたらすことができます。

例えば,エアバスは,AIを用いた自動着陸システムを開発しました。このシステムは,カメラやレーダーなどのセンサーを使って周囲の状況を認識し,パイロットの介入なしに着陸することができます。このシステムは,2020年1月にA350-1000型機で初めて実証飛行を行いました。

また,エアバスは,デジタルツイン(メタバースの現実ともっと連携したバージョン)の活用も発表しており,これからが楽しみです。

こんなかんじでボーイングに比べて大変明るいニュースが多くて,楽しみです。

まとめ

ボーイングは巻き返しを狙うこれから,エアバスは追いつけ追い越せで頑張ってきた中で,トップでどのように進化を続けていくのか,楽しみです。

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