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思い立ったら大糸線           ③首都圏発・サクッと日帰り全線乗車の旅

 大糸線は長野県の松本から日本海側・新潟県の糸魚川を結ぶ南北の路線で、一見すると乗りに行くのは大変と思う方も多いかもしれません。しかし、南端の松本では新宿からの特急「あずさ」、名古屋からの特急「しなの」、また、北端の糸魚川は北陸新幹線と接続しています。従って、大都市圏からは比較的アクセスがよく、思っている以上に気軽に大糸線の旅に出かけることができます。
 さて今回は、その大糸線の旅を首都圏から1日で済ませてしまおうという企画です。是非、大糸線へお出かけの際に参考にしていただければと思います。なお、この記事の内容は全て、2022年3月31日時点のものです。

1.新宿から「あずさ」で松本へ
 首都圏からの大糸線日帰り旅は、中央線→大糸線→北陸新幹線という大きな人筆書きルートで、臨時列車のある土・日・祝日がおすすめです。乗車券は「東京都区内→東京都区内」で、窓口で購入します。この経路であれば10,010円です。その他に、特急券や指定券が必要です。今回は1日で廻ってしまう行程ですが、乗車券は5日間有効で、同一方向であれば途中下車できるので、余裕がある方は宿泊しながら数日間にわたって利用すれば、それだけ利用価値が高まります。

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朝は早めの出発がベストで、遅くとも新宿発8時ちょうどのあずさ5号には乗りたいところです。今回は、7時ちょうどのあずさ1号を利用します。

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 朝早いので、車内で朝食です。新宿の場合、ロマンスカーが朝早くから動いている関係か、小田急線の改札の近くのお店が6:30から開いているのでおすすめです。今回はロマンスカーカフェのカフェオレとパン、おだむすびのおにぎりと唐揚げです。なお、あずさ1号は発車のおよそ10分前から車内に入れます。

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あずさの車中からは、晴れていれば途中で富士山や八ヶ岳などの風景が望めます。今回は雲が多かったのと、朝早かったのとで、うたた寝をしているうちに列車は9:38に松本に到着しました。

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2.大糸線に乗って穂高へ
 松本に着いたら、いよいよメインの大糸線に乗り換えです。大糸線の多くの列車は6番線から発車します。もし駅弁を買う場合は、この乗り換えの時にコンコースで買いましょう。大糸線で、松本以外に駅弁を買える駅はありません。

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写真中央の奥に小さく見えるのが大糸線です。左側は松本電鉄の車両ですが、2022年4月現在、橋の復旧工事に伴い、松本駅発の列車は途中までバスで代行輸送を行なっています。

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 9:55に松本を出た列車は安曇野を走り、約30分で穂高駅に到着します。穂高は大糸線の沿線で観光地が多く集まる拠点の一つと言えます。駅前にタクシーも常駐しており、どこへ行くのもスムーズです。特急も、リゾート列車も停車します。今回は10:21到着、穂高で途中下車です。

3.リゾート列車の発車時刻まで、穂高を観光
 春から秋の休日ですと、大糸線の松本〜南小谷に「リゾートビューふるさと」という全席指定の臨時快速が長野からやって来ます(運転日等はHPで確認を)。大糸線のJR東日本の区間を楽しむことができる列車ですので、乗らない手はありません。この列車は2022年3月31日時点のダイヤで12:06に穂高に到着し、12:39に発車します。停車時間が長く、乗客が軽く散策する時間がとられているのです。しかし、本当に「軽く」なので、例えば穂高神社を軽く参拝しただけですぐに戻らなければなりません。そこで今回は普通列車で先回りして穂高の滞在時間をとり、ゆっくり巡れるようにします。なお、新宿発8:00のあずさ5号に乗車すると、大糸線に直通し、穂高に10:59に到着しますので、それでも時間を確保できます。筆者としてはこの時間の過ごし方として、「大王わさび農場」か「碌山美術館と穂高神社」のどちらかをおすすめします。
・大王わさび農場 穂高駅からタクシー5分強 約1,400円

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安曇野に広がる、世界最大のわさび農場で、農場の散策とお食事、お茶、ショッピングなどが楽しめます。広大なわさび園は圧巻で、園内に彫刻やさまざまなスポットが点在します。入場無料で、資料館に行けばわさびに詳しくなります。所要時間として、2時間ほどを目安にした方がいいと思います。

・碌山美術館 穂高駅から徒歩10分程度
 日本の近代彫刻の扉を開いたといわれる、当地出身の芸術家萩原禄山の作品を展示しています。人間の力強さや動き、内面を凝縮したかのような彫刻はもとより、美術館の建物自体も必見です。月曜と祝祭日の翌日休館、詳細はHPを。

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・穂高神社 駅から徒歩3〜5分程度
 駅の南側にある歴史と由緒ある神社で(詳細は割愛します)、「犬とお参りできる神社」「日本唯一のステンレス道祖神」など話のタネになるものも含め、道中の安全を祈願するにはもってこいです。周辺に飲食店やお土産物屋さんがあり、軽く食事を済ませることもできます。

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4.リゾート列車で南小谷へ

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 穂高駅に戻り、ホームに停車中の12:39発のリゾートビューふるさとに乗車します。アテンダントさんが乗っており、車内でちょっとした飲み物やお菓子、グッズなどの販売がありますが、駅前で何か買ってから乗るのもいいと思います。

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 車内は前後の椅子の間が広くとってあり、また、少し高い位置に座りますので眺望もよく、快適に過ごすことができます。南小谷までおよそ1時間半。駅弁を松本駅で購入した方は、この時間に景色を見ながらいただきましょう。今回は、松本駅イイダヤ軒さんのあずみ野釜めしです。

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 列車内では、地元の案内人の方から沿線の観光案内があったり、ビュースポットで減速・停車したりと、乗ったまま楽しめるようになっています。途中駅信濃大町でも、少し車外で写真を撮るくらいの時間がとられています。

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 この列車の運転席の後ろはフリースペースになっていて、誰でも前方の眺望を楽しみに行くことができます。白馬の辺りからはまだ周辺に積雪がみられます。そして写真は撮れませんでしたが、カモシカも見えました。姫川という川が線路に寄り添ってくると、間も無くこの列車の終点、南小谷に着きます。2022年3月31日時点のダイヤでは14:04着です。

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5.南小谷周辺散策と、JR西日本区間への乗り継ぎ
 大糸線は、南小谷から先はJR西日本の区間となり、糸魚川までつながっています。リゾートビューふるさとから、次の糸魚川行き(14:43発)までおよそ30分時間があるので、途中下車して周辺を少し歩いてみます。

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静かな駅前で、お土産物屋さんがあります。10分ほど歩くと小谷村の物産館や郷土資料館があり、蕎麦を食べられる場所もありますが、この乗り継ぎ時間では難しいです。駅を出て橋を渡り、川に沿って糸魚川方向へ少し歩くと、対岸に線路が見え、糸魚川からやってくる列車(14:25着)を撮影することができます。これが折り返しの糸魚川行きになります。雄大な景色の中で、小さな列車が一層小さく見えますが、わたしたちを糸魚川へ運んでくれる、大事な足です。これを撮影して駅に戻れば、ちょうど良いと思います。

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 南小谷駅に停車中の、糸魚川行きの列車です。シーズンの週末でなければほぼ座れますが、ボックスシートは4つしかないので、景色を楽しみたい方は早めの確保をおすすめします。およそ1時間の道のりです。車内にお手洗いはあります。

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 14:39に発車した列車は、険しい渓谷を縫うように進んで行きます。沿線にダムが点在し、太い送水管なども時折見え隠れします。まだ残る雪と、姫川の青い流れが大変綺麗です。途中の平岩駅付近には、温泉旅館が数軒見えます。日帰りで入浴することも出来、筆者は大糸線ビューの露天風呂を備えた旅館に宿泊したことがあります。列車の本数が少ないので、ピンポイントで時間を合わせて入らないと、列車は全く見られません。

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根知駅付近までくると、列車は平地を走るようになります。根知駅は大糸線のJR西日本区間で唯一、列車の行き違い交換ができる駅です。2022年3月31日時点で、1日に3回だけ行われます。

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列車はその後田園風景の中を進み、高速道路の糸魚川インターチェンジの脇を通り、住宅地に入り、北陸新幹線の高架をくぐり、15:45に糸魚川駅到着です。

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6.糸魚川散策ののち北陸新幹線で帰路
 筆者はこの日、糸魚川駅17:01発の北陸新幹線はくたか570号で帰宅することになっており、およそ1時間ちょっと時間がありましたので、周辺を少し散策しました。まずは糸魚川駅アルプス口の下にある待合室「ジオパル」へ。

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 駅の下に、昔大糸線を走っていた車両を利用した待合室があり、鉄道模型のレイアウトもあったりします。子供も大人も楽しめるスポットができていました。また、この地域の地形の成り立ちや、先ほど大糸線の車内から眺めた姫川上流の小滝川で発見された翡翠に関する展示もあり、初めて来た人はおすすめです。

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 その後筆者は糸魚川の日本海口から出て、北側へ。残念ながら、周辺の店はほぼ閉まっていました。飲食店は、多くが17時から。17:01の列車に乗る場合、周辺で食事を済ませたり、お弁当などを確保するのは難しそうです。駅の中のセブンイレブンほぼ一択となります。

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 駅の北側に、海に向かって一直線に伸びる道があり、さまざまなヒスイが展示してあります。そして海に突き当たるところには展望台が。

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海の広さもさることながら、眼下に積み上げられた波消しブロックが、おそらく現地の環境の険しさを感じさせます。その後駅に向かって散策を続け、

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積雪に備えた雁木の通りを歩き、途中でお菓子などを求め、駅へ。無事17:01発のはくたかに乗ることが出来ました。あとは東京へおよそ2時間の旅、今回は大宮で降りました。1日を有効に、有意義に過ごすことができました。

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今回帰りの車内でいただいたのが、糸魚川銘菓「山のほまれ」。散策中に、「山のほまれ」の大きな幕が出ていた和菓子屋さんで購入しました。一見瓦煎餅っぽいですが、もっと簡単に割れて、ザクザクした食感、程よい香ばしさ、そしてカステラの甘みが感じられます。口当たりも軽めなので、ついつい手が出ます。個包装がジッパー付きなのも嬉しいです。

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 ついで、糸魚川駅のセブンイレブンで見かけて購入したのが「ヒスイ羊かん」。富山の朝日町のお店のものですが、糸魚川もヒスイの街ですからOKです。色も綺麗で、舌触りも滑らかで、蜜がたっぷりです。お白湯とよく合いました。

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 そして、長野県側で非常にメジャーなお菓子「雷鳥の里」。特急「あずさ」の車内でも売っています。一見ウェハースっぽいですが、公式ホームページによると欧風せんべいでクリームをサンドしたものとのこと。食べると、初めはせんべい部分の塩気が感じられ、噛み砕くとクリームの甘さがやってきます。そのバランスが絶妙です。筆者が子供の頃、よく家族で安曇村の温泉に出かけたのですが、そこの旅館でもお部屋に必ず「雷鳥の里」が置いてありました。

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このスパッと切れた感じの断面も大好きです。

7.まとめ
 いかがでしたか。今回は7時出発の19時帰着、およそ12時間の旅程となりました。それでも、大糸線の魅力のポイントは、かなり押さえられているのではないかと思います。ちょっと1日空いた時、気分転換がしたくなった時などに、ふらりと大糸線の旅にお出かけになってはいかがでしょうか。

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