初めて女の人が怖いと思った中3の頃

学級委員の選出

中3の私

  • 私は中学3年間暗黒の時を過ごした。家庭では父親が酒乱で毎日叫びまくり、早く夜が過ぎ去って朝になって欲しい、何かに縛られたように身動きできず、夜はひっそりと息を殺して部屋ですごした。あまりにも耐えられないときは、母がそっと私達子どもを外に連れ出して、車で近くのファミレスへ行った。父の酒乱が終わりそうな頃合いを見てこそっと家に戻る。家に戻る時の絶望感は今も忘れることが出来ない。またこの暴力的な家に戻り、朝が来て学校に行って、夜は父の酒乱が始まる。永遠に続くこの地獄絵図。今でも時々、全て0に収束すればいいのに、何もかも0になればいいのにって思う時がある。

  • 学校では男子の嫌がらせにもあった。私を含め数人の女子が嫌がらせの対象になった。担任に言っても、一時はおとなしくなるがすぐにまた始まる。この世の男子全員死ね、と本気で思っていた。今になって思うが、嫌がらせの対象になる女子はだいたいがイケてない女子ばかり。私もそういう女子の一人だった。だから小1~短大卒業まで男子と殆ど話した記憶がない。話し相手になってくれる男の人はみんなうんと歳の離れた人ばかり。

  • そして私達にも春がきて、3年生のとき、嫌な男子とは別々のクラスになったので全員で安堵したものだった。でもクラスでは口数が少なく、本当に気の許せる数人の女子友達とだけ休み時間キャッキャッと笑い転げて、それはそれでとても楽しかった。他のクラスメートの女子からは、Hちゃんいっつも楽しそうだね、何そんなに話してるの?と聞かれるので、男はみんなゴミ箱行きって話してるよ、というと少しぎょっとしていた。でも女子には恵まれていて、友達以外の女子と話していても本当に楽しかったのを今でも覚えている。

後期(9月~3月)の学級委員の選出、男女一名ずつ。

  • 中学最後の学級はそれなりに楽しかった。そして学級委員の選出でいつものごとく立候補者が出ない、で、クラスの人気者の男女はそれぞれに目配せし、オマエがやれよ、とかそれぞれに言っていてそういうドヤを聞いているのも楽しかった。いわゆるイケてるムードメーカーの誰かがするのだろうと誰もが思っていたが、誰にも決まらない、そして本当にシーンと静まり返って誰もがだんまりを決めて不穏な空気が流れる。そして担任が学級委員になってもいい人と思う人の名前を書きなさい、書いた人は匿名でいいです。ということになった。

  • あーいうのは、結局人気投票で男女ともに頭も良くてイケててスポーツ万能、リーダーシップのある人に決まった。

  • と、ここまではよかった。突然、あまり話した事のないKさんが私の前に現れてこんなことを言った。

この前ね、担任と話してたんだ。で、こっそり教えてくれたんだ。投票数多かった人の1、2、3位を男女別に教えてもらったんだ。
1位は学級委員になったIさん。これは当然だよね。2位は私。で3位はHちゃん。先生によると、2位と3位の差が2、3票しかなかったんだって。私、Hちゃんに越されるかと思った。匿名だから誰がHちゃんの名前を書いたのかわからないけど、筆跡から男子からも結構あったみたいだって。Hちゃん、あんまり男子としゃべらないのに人気あるんだね。

3-6にて
  • 私に越されるって?は?と思ってしまった。そんなにライバル心むき出しにするんなら最初っからKさんが学級委員になりゃいいのに、と心で思ったが口に出さずに黙ってしまった。

  • このKさん、頭いいんだけど、特に英語が出来たひとだった。4高といってわが県で偏差値の高い公立高校を指す高校がある。彼女は最終的にその一角の、D1高校の英語科にすすんだ。そしてその後は東京外語大にすすんだと風の噂で聞いた。就職で結局わが県に戻ってきて、今もどこかで働いているハズ。だけど英語の教員にはなってないようだ。ちらっと英語の先生になりたいと話していた記憶がある。

  • 女の人は怖いw彼女の学歴からもきっと何事にも負けず嫌いなのだろう、そう読み解ける経歴だ。学級委員なんかしたくない、これが本音だろう、だけど、それなりに投票数は欲しい、だから2位でいい。でも下に思いがけない子が入ってきているw、しかも僅差。追い越される、その焦りはあったはずだ。このHちゃんは何で3位に入ってきた???と。

  • この一件があってから、Kさんは私に話しかけてくることが多くなった。私も気後れながらも話すことが増えていった。

「Kさんさ、英語好きなんだよね、英検とか積極的に受けていてすごいなあって思うよ。」
「うん、それだけじゃなくて英語の辞書をただ見るだけでも好きだよ。たま~に暇つぶしに英語の辞書眺めてるよ。」
「えー!すごいね!私、国語の辞書好きだよ、私もたまに辞書眺めてる!例文とかたまにプッて笑っちゃう文章あるよ。本当に辞書編纂している人って偏った人なんじゃないかなって思う時あるよw」
「Hちゃん面白いね、Hちゃんと話してると思ったより色々やってるんだなって思った。Hちゃんさ、どこの高校受けるの?」
「私、頭悪いし、早く仕事して家出たいんだ。だから商業科に行くよ」
「商業科いくんだ。Hちゃんさ、ちゃんと勉強したらすごく上に行けるとおもうんだけどなあ。」
「うん、もういいんだ。早く仕事して稼いで自由になりたいんだ。」
「そっかー」

3-6にて
  • Kさんと話したのはそれが最後だった。その後、今の今まで話した事もない。中学校を楽しめなかった私はなぜか自分が中学校で働く事になるとは思わなかったけれど、それはそれであの時楽しめなかった自分を取り戻したような気がしている。そして今は小学校勤務。また新しい年度が始まる。個人的に小学校の方が楽しい。どこまで体力が持つかわからないけど、とりあえず小学校で淡々とやれたらなあ。

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