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爺さんの一日、一景、一笑 #18 ゆずりあいの席

 明らかに足腰が弱そうな老女が、手すりにすがるようにバスに乗車してきた。
 車内はあいにく満席。
二席ある「ゆずりあいの席」の一席に、以前から座っていた、これまた輪をかけた老女が、杖を突きながら席を立ち、乗って来た老女に自分の席を譲った。
『そういう意味のゆずりあい?』
バックミラーで見ていた運転手も、あんぐり。
 ちなみに、もう一席ある「ゆずりあいの席」には、スマホを片手に持った若いお姉ちゃんが一生懸命ゲームに夢中だった。
 
 雨の日。
通勤バスが、乗客でぎっしり満員。
 停留所に止まっても、入口のドアから乗車しようとする客も乗れないほどの混雑状況。どうにかステップに足をかけ、やっと乗れた。が今度はドアが閉まらない。
「恐れ入れます、もう一歩お上がりください」
 バスのアナウンスで、更に渾身の力を振り絞り一段上がる。
ふと見ると、ゆずりあいの席一席だけが悠然と空席のままとなっている。
『そこまで、ゆずりあうんかい!』
 昔は、「ゆずりあいの席」や「優先席」などは見ることも無かった。
しかし、かなり以前から一席、二席と見かけ始めた。
今ではバスの中でも四席あることもめずらしくなく、電車の車両にも必ず設置してある。
 徐々に増え、やがて、いつかすべての席が「ゆずりあいの席」となるのかなあ。
 そして、次には「ゆずりあわなくていい席」なんてのが出てきたりして?

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