朝ドラ「虎に翼」がすごくいい

タイトルそのままである

この4/1からNHK朝ドラで放送を開始した虎に翼がとても!いい!
ネタバレ満載なので、視聴予定の方はご注意ください


本筋としては、女性法律家として躍進する主人公を描くストーリーなのだろうけど
第1週目がとてつもなくよかった!


物語は、主人公・寅子のお見合いの場面から始まる

母の懸命な姿勢とは裏腹に、当の寅子はお見合いに全く乗り気ではない
お見合いを経て結婚をする、という気持ちが全く湧かないからだ
当然お見合いはうまくいかない中、寅子の親友・花江が寅子の兄と結婚をする

好きなシーンの1つが、寅子の兄と花江の両家が揃った晩餐会の場面にある

両家の父はどちらも、晩餐会の段取りや食事の準備に全く関わっていない
にも関わらず、晩餐会では「たいしたものはありませんが召し上がってください!」と、さも自分が準備したかのように勧め
実際に準備をした母たちは、静かに微笑んでいる

その様子を見ていた寅子は、大勢の中で父たちの横にいる時には「急に無口になって、急に控えめ」になる母たちの表情を「スンッ」と表現する

私はこの「スンッ」という表現がとても好きだ

例えば冠婚葬祭、例えば年末年始

大勢が集まって団らんしている中で、祖母や母親はせっせと料理を運び飲み物を運び
一段落したと思ったら、端に座って父や叔父の歓談を笑顔で頷きながら、相槌ぐらいしか打たない祖母や母

私が、よそいきという単語を知らない幼い頃から何度も目にした表情を、「スンッ」は端的に表している
明らかに普段通りではない、さまざまなものを圧し殺している表情の違和感に、朝ドラがフォーカスを当ててくれるとは思わなかった



「スンッ」よりさらに心に刺さる場面の話もしたい

兄と花江の結婚式で、酔った父が「寅子が歌いま~す!!」と叫び、盛り上がった会場の空気もあって、やむなく寅子は歌うこととなる

寅子が笑顔で歌いながら、語りの尾野真千子(これもものすごくちょうどいい)は寅子の代わりに心情を述べる

お母さんの言う通り結婚は悪くない…とはやっぱり思えない

なぜだろう?親友の幸せは願えてもここに自分の幸せがあるとは到底思えない

というか 何だ したたかって

なんで女だけニコニコ こんな周りの顔色窺って生きなきゃいけないんだ?
なんでこんなに面倒なんだ?
なんでみんなスンッとしてるんだ?

なんでなんだ?


歌っているとき、時折げんなりした表情になりながらも、無理に笑う寅子
やるせなさを圧し殺しながら、女として求められる「ニコニコ」した表情を保とうとする葛藤が痛いほど伝わる伊藤さんの演技がたまらなかった

4/4の放送のこのシーンの伊藤さんの熱唱をぜひ!見てほしい!

良さは4/5放送以降も止まらない

以下の引用は、法律の勉強をしたい寅子に反対する母・はるのセリフである
はるは寅子が頭脳明晰であることも承知の上で、法律の道で生きたい寅子の主張をいさめる

なれなかった時は?
なれたとしてもうまくいかなくて辞めなくてはいけなくなった時は?
夢破れて、親の世話になって、行き遅れて嫁のもらい手がなくなって
それがどんなに惨めか想像したことある?

今行こうとしている道であなたが心から笑えるとはお母さんは到底思えないの
どう進んだって地獄じゃない

頭のいい女が確実に幸せになるためには頭の悪い女の振りをするしかないの

母が反対するのは、何も寅子に嫌がらせをしようとしているのではなく、むしろ娘の幸せを願っているからこそだ

昭和初期における、女性の最大公約数な幸福は、確かに良き男性との結婚なのだろう
旦那の隣で、物分かりのいい良き妻でいる

たとえ男性陣の主張に誤りがあっても、それに横から意見する女性は、でしゃばりだとか生意気だと眉をひそめられる

とくにこの昭和初期で、女性が平穏な幸せを得るためには、もののわからない「頭の悪い女の振り」をするのが近道なのだ

馬鹿げていると、はる自身も思っているだろう
それでも大切な娘に、確実な幸せを願う母の愛情が強く伝わる


寅子が法律の道に進むことは、松山ケンイチ演じる桂場にも反対される
「甘やかされて育ったお嬢さんは泣いてくじけてしまうだろう」という桂場の主張に、啖呵を切って反論したのは
寅子のお見合いを勧めているはずの、母・はるである

母は、決して寅子の敵ではない
当初はお見合い用の着物を仕立てるために、呉服屋を目的としていたはずが
啖呵を切った母は、勢いそのままに呉服屋を通りすぎた本屋で、はっきりと言う

「六法全書ください!」



「女性」に求められる役割の歪さ、狭さ、飲み込むものの大きさを描いた上で
物語の序章としても完璧な流れ!

これからの放送がとてもとても楽しみだ!

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