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本日、日本最終日

2022年5月8日、今日は、TOKAS本郷で開催している個展の最終日ですが、私にとっても日本での最終日となりました。昨日は荷物をトランクルームに移動させて、今朝粗大ゴミをまとめて回収してもらい、横浜の家の鍵を返してこれから成田空港に向かいます。

二年半ぶりの「海外」に行く緊張もありますが、いま持っている「留学」の在留資格は夏には失効してしまうので、日本に戻る予定をしている9月に入国できるかはまだ定かではない不安のほうが大きいです。一昨日、水際対策を緩和する検討に入ったニュースを見て少しほっとしていますが、それでも戻って来られない可能性を見込んで、今回は引っ越しに伴い電気、水道、ガス、インターネットの解約に加えて、保険、年金も全て解約して国外への転出手続きをしました。でも、行き先も三ヶ月という短期の予定なので、しばらく定住する場所はなくなってしまうのです。

不確実な要素が多いですが、幸運なことに、今、行くしかないという大きなチャンスをいただきました。Bauhaus Dessau Foundation/バウハウス・デッサウ財団主催のBauhaus Lab Global Modernism Studies/バウハウス・ラボ・グローバル・モダニズム・スタディーズ)というリサーチプログラムで8人のリサーチャーのうちの一人に選出され、今日から8月末まで渡独することになりました。

1919年に開校したバウハウスは2019年に100周年を迎えて、その一年の間に多数の展覧会や上映会が開催されていたので、日本国内では馴染みのある名前かもしれません。ナチスの圧力を受けて、美術学校としてのバウハウスは1933年に閉校してしまいましたが、今回はバウハウスの精神と理念を引き継ぐ本場で研究できることは何よりもうれしいです。しかも、Walter Gropius/ヴァルター・グロピウスが設計を手がけた、あのBauhaus Building/バウハウス・デッサウ校舎の中に自分のワーキングスペースができるのです!一生に一度のとても貴重な経験になることに間違いないので、気を引き締めてがんばっていきたいと思います。

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Bauhaus Labは毎年一回三ヶ月間実施され、毎年異なるグローバル・モダニズムに関するテーマを取り上げるリサーチ・ラボです。どの年でも興味深いものばかりですが、ある家具、あるいは素材、建築を切り口に、そのものに関係する社会的背景とデザインにおける社会的意味を考察し、再考するプロジェクトが多いです。

例えば、以前は校長室にあったグロピウスの机がイギリスやアメリカまで海を渡った“亡命(exile)”の経験を辿ることで、あるオブジェ(モノ)のナラティブ(物語)を語り直すことを試みるプロジェクト(Bauhaus Lab 2016: Desk in Exile)。1960年代に西洋のデザインシステムを用いながらインド現地で調達できる低コストの木材や布で作られたあるラウンジチェアを取り上げて、冷戦下の社会でのトランスカルチュラル・ダイアログ(異文化間対話)におけるデザイン法を考察するプロジェクト(Bauhaus Lab 2017: Between Chairs)、またはカナダの低価格住宅で実験的に導入された硫黄コンクリートブロックに焦点を当てながらインフォーマル(非公式)かつ伝統的な建築手法について考察するプロジェクト(Bauhaus Lab 2020: A concrete for the „other half“)などのリサーチプロジェクトがありました。

今年は南アフリカの反アパルトヘイト運動の一環として1980年代にタンザニアで建設された亡命者のためのキャンプ(liberation camp)について調査します。これらのキャンプの建設は、東独の建築家やエンジニアたちも深く関わっていたそうですが、人種隔離を打ち破る新しい社会づくりの実験場であっただけでなく、冷戦時代に国際連帯と反アパルトヘイト運動の精神で東独と西独が協力し合った数少ない例でもあります。人種差別から解放された建築と居住環境をさまざまな角度から見つめて、8人のリサーチメンバーがコラボレーションして研究を進める予定です。さらに、南アフリカとタンザニアへのフィールドワークも行い(アフリカ初上陸!)、8月にバウハウス校舎でリサーチ成果を展示します。

しばらくドイツに行きますが、日本語を忘れないように日本語で文章を書く習慣を身につけたいのと、まったく新しい環境に飛び込む自分が日々考えたこと、感じたことをしっかりと言語化したいと思ってこのnoteを始めました。今後はドイツでの日常生活やバウハウスでリサーチする中で気づいたこと、リサーチの内容などを紹介していきたいと思います。

では!いってきます。

日本語添削:原田梨奈


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