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「(ク)第269号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」の最高裁判所弁論に対する当会の見解

「(ク)第269号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」の最高裁判所弁論に対する当会の見解


9月26日、最高裁判所大法廷において「(ク)第269号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」に関して代理人により弁論が行われた。

その弁論内容とそれによって下される可能性がある判決の問題点について当会の見解を示す。


抗告人は性同一性障害特例法(以下、特例法)の5要件のうち「4.生殖能力喪失要件」「5.外観要件」について憲法第13条(基本的人権)・第14条(平等権)に基づく違憲判決を求める、もしくは家庭裁判所による柔軟な判断を求めた。


・「要件のみなし緩和」に関する見解

抗告人は弁論において「特例法の趣旨に則れば、家庭裁判所の柔軟な判断によって要件のみなし緩和が望ましい」旨を述べた。

特例法の趣旨とは、性同一性障害者全般を対象としており、戸籍と自己の認識する性別を一致させることで本人の苦痛を解消するという趣旨を指すと思われる。

これについて、趣旨に則れば、柔軟な判断が下されるべきという抗告人の主張は尤もである。

しかし、当会としては特例法制定時に「女性・女児の生存権や尊厳」に関して全く議論された形跡がない点を指摘したい。

現状においても戸籍を女性に変更した男性による犯罪が女性の犯罪として扱われる事例や、女性の性的羞恥を毀損する発言など「女性・女児の生存権や尊厳」が著しく侵害されてきた。

女性スペースの利用に関する問題も深刻であり、当会が行った公衆浴場及び商業施設の女性専用エリア利用に関するアンケートにおいても「女性スペースの利用は生物学的女性に限ってほしい」という意見が約9割を占めている。

特例法の趣旨に則った判決として、「4.生殖能力喪失」「5.外観要件」を家庭裁判所の判断で緩めるのならば、その影響は抗告人のみに留まらない。

判決は今後、全ての特例法利用者に影響し、男性器の挿入を伴う性的暴行や望まない妊娠といった、「女性・女児の生存権や尊厳」を侵害する事例が発生することが懸念され、これは断固として許容することはできない。


・「憲法解釈の変更」に関する見解

抗告人は弁論において「憲法第13条(基本的人権)・第14条(平等権)に基づく違憲判決」を求めた。

①憲法第13条(基本的人権)について

抗告人は憲法第13条に基づいた基本的人権を根拠として、「性別のあり方を自分で決められる権利」・「自覚する自身の性別を否定されない権利」を主張し、それに基づき「自身が自覚する性別の取り扱いを他者に求めることが許される」と主張した。

しかし、憲法13条については、「公共の福祉に反しない限り」尊重されるとある。

「自分自身をどの性別だと思うか」については内心の自由の範囲に留まるが、自身が自覚する性別の取り扱いを他者に求める権利は生来と反対の性別の取り扱いを他者に強制するものであり、他者の行動様式を変容させ、公共の福祉を著しく損なうものである。

また、身体的弱者である女性・女児にとって、男性を女性として扱うことを強制されることは憲法第25条生存権の侵害にも繋がる断じて許し難い事態が生じうる。


②憲法第14条(平等権)について

抗告人は憲法第14条を根拠として、「『女性としての社会生活』を送っている抗告人に対して要件を適合しないことは違憲である」と主張した。

しかし、憲法第14条については「『性別』において差別をされない」とある。

特例法においても生物学的に性別は明らかであるとされており、性別とは生物学的性別のみを指す。

加えて、「女性としての社会生活」とは社会的性役割に基づくものであり、女子差別撤廃条約第5条においても、「男女の定型化された役割に基づく慣行の撤廃の実現」が求められている。

これを訴えとして認めることは女性差別を助長するものであり、認めてはならない。


以上のことから、当会は今回の判決に伴う「要件のみなし緩和」や「憲法解釈の変更」によって女性・女児の生存権や尊厳が著しく侵害される可能性を指摘する。

また、「要件のみなし緩和」「憲法解釈の変更」についてはどちらも特例法の趣旨に則ったものであり、法の目的からすれば、抗告人の主張はいわば当然の訴えである事を指摘したい。

しかし、特例法は既に憲法第13条(基本的人権)、憲法第14条(平等権)、憲法第25条(生存権)を侵害している女性迫害法であり、これ以上その存続は断じて許されない。


以上のことから、最高裁判所に対しては、

⑴特例法制定時に「女性・女児の生存権や尊厳」が議論されていないこと

⑵「性別のあり方を自分で決められる権利」は他者の行動様式を変容させ、公共の福祉を著しく損なうこと

⑶「女性としての社会生活」は社会的性役割そのものであり、これを判決に考慮することはすなわち女性差別の助長に繋がること

を踏まえ、いかなる要件の緩和や憲法解釈の変更も認めない旨の判決を下すことを強く求める。

以上、当会の見解とする。

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