専門家によりますと、「地磁気嵐が健康問題を引き起こす」という証拠はないとのことです。

複数の専門家がAFP通信に語ったところによりますと、2024年5月に地磁気嵐が地球を直撃した後にシェアされた誤ったSNSへの投稿に反して、太陽嵐によって人体に影響が出ることを証明した信憑性のある研究はないとのことです。太陽フレアは主に科学技術に影響を及ぼし、電力網やGPS信号、人工衛星の運用に支障をきたす可能性があるということです。

「地磁気嵐は5月10日に発生する可能性があり、人体に影響を及ぼし、体内時計障害、不安、動悸などを引き起こすかもしれない」と、2024年5月9日に公開されたSNSプラットフォームXの簡体字中国語の投稿のキャプションに書かれていました。

「地磁気嵐は人々の睡眠に影響を及ぼし、日中の疲労や眠気を引き起こし、不可解なイライラを引き起こすかもしれない」と続いています。

この投稿は、眠れずに苦しんでいる人を映した映像と共に、虚偽の主張を繰り返す動画と共にシェアされていました。

2024年6月3日に取得された虚偽投稿のスクリーンショット

2024年5月、地球は地磁気嵐に見舞われました。

この嵐は2003年10月以来最も強力なもので、通常は地球の極地でしか見ることの出来ないオーロラ現象が、メキシコ、南ヨーロッパ、南アフリカまで見られるようになりました。

この現象は、太陽表面での大爆発によって引き起こされたもので、プラズマ、放射線、そして磁場までもが、太陽風に乗って信じられないほどの速さで噴出したものでした。

この虚偽の主張は中国のネット上で広く拡散し、嵐が睡眠障害を引き起こしたかどうかについての議論を呼び起こしました。Xではこちらこちら、Facebookではこちらこちらでシェアされました。

他にも、地磁気嵐が生理周期に影響を与えるという虚偽の投稿が浮上し、X上のこちらこちらでもシェアされていました。

また、下のスクリーンショットにありますように、中国のソーシャルメディアアプリ「小洪水」でもシェアされました:

2024年6月5日に取得された小洪水の虚偽投稿のスクリーンショット

しかしながら、科学者達は、これらの虚偽の主張を裏付ける証拠はないと述べています。

影響無し

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDaniel Verscharen准教授(宇宙・気候物理学)は、地磁気嵐が人間の健康に直接影響を与えるという証拠は存在しません、とAFPに語っています(アーカイブリンク)。

彼は、心臓病と宇宙天気(ペースメーカー等の医療機器への僅かな影響による可能性)との関連性を発見したと主張する研究に言及したものの、その発見は立証されておりません、と述べています。

「これは確認されておらず、またまだ議論の余地があります」、と彼は述べています。

ミシガン大学気候・宇宙科学工学科のDan Welling助教授もまた、彼と彼の学部生が、宇宙天気と人間の健康を関連づける研究は質が低く、結論の裏付けがないことを明らかにしました、と述べています(アーカイブリンク)。

「現時点では、これらの研究はどれも真剣には受け止められていません」、と彼は述べています。

宇宙気象は、鳥の移動、送電網の潜在的な混乱、無線信号の干渉、衛星運航への影響など、他の面でも影響を及ぼしています、と彼は付け加えています。

「宇宙空間に居いたり、飛行機で北極や南極の上空を飛んだりすると、放射線のリスクが高まります。「しかし、地上にいる間は大気が放射線から守ってくれます」、と彼は述べています。

また、ミシガン大学の気候・宇宙科学・工学の研究助手であるMojtaba Akhavan-Tafti氏は、5月にAFPに対し、地磁気嵐は鳥の渡りの妨げにつながり、鳥はナビゲーションのために地磁気を使っているためだと電子メールで語ってくれました(アーカイブリンク)。

しかしながら、同氏は「地上の地磁気嵐による健康への影響が科学的に調査された研究は聞いたことがありません」、と述べています。

いくつかの国の当局者も同様に、太陽活動が人間の健康に影響を与えるというネット上の主張を退けています。

中国の国営メディアCCTVは、中国国家衛星気象センター宇宙気象センターのGuo Jiangang所長の発言を引用し、太陽嵐が睡眠に影響を与える可能性を示唆する声もあるものの、「科学的にはまだ証明されていません」と述べています。

NASAも5月16日、「フレアからの有害な放射線が地球の大気を通過して地上の人間に物理的な影響を与えることはあり得ません」、と述べていますアーカイブリンク)。

米国地質調査所(United States Geological Survey)は、地球の磁場が人間の健康に直接影響を与えることはありません、と述べていますアーカイブリンク)。

「地磁気は、私達が依存している電気ベースの技術にも影響を与える可能性があるが、人間そのものに影響を与えることはありません」、と述べています。

AFPは以前、最近の太陽嵐に関する他の誤報をこちらこちらでファクトチェックしています。

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