極低温電子顕微鏡に言及した文書は、Pfizer社のCOVID-19ワクチンに酸化グラフェンが含まれていることを証明するものではありません。

FDAに提出されたPfizer社の資料には、SARS-CoV-2タンパク質の顕微鏡研究において、酸化グラフェンを一工程で使用したことが記載されていますが、その資料への言及を、COVID-19ワクチンに酸化グラフェンが含まれていると偽るソーシャルメディアの投稿が見受けられます。

事例は(こちら)と(こちら)で閲覧可能です。

毒性がある酸化グラフェンは、2021年にロイター通信が取り上げたように、COVID-19ワクチンの成分ではありません(こちら と こちら) 。

【問題の文書】

問題の文書は、「ワクチン抗原としてのSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(P2 S)の構造的・生物物理的特性評価」と題されています。これは、米国のCOVID-19政策やワクチンに疑問を持ち、情報公開法とテキサス連邦裁判所への訴訟を通じて、FDAによるPfizer-BioNTech社製COVID-19ワクチンの承認に関連する数千ページを入手した団体Public Health and Medical Professionals for Transparencyが2023年2月1日に発表したものです(アーカイブはこちら)。この件に関するロイター通信の報道は(こちら)と(こちら)から閲覧可能です。

この文書の3ページに記載された概要によりますと、この研究は、Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチンに使用されているコロナウイルスのスパイク・プロテインの物理的特性を明らかにすることを目的としています。

ユーザーは、7ページの「3.4 Cryo-EM of P2 S」(スクリーンショットはこちら:ibb. co/5KtzQXJ)のセクションを指摘しており、この項では、電子顕微鏡の一種を用いてタンパク質を可視化するために採用された方法が説明されています。

酸化グラフェンへの言及は、以下のように記載された項の第1文に見出すことが出来ます: 「TwinStrepタグ付きP2 Sについては、0.5 mg/mLの精製タンパク質4 μLを、酸化グラフェンを新たに重ねた金のQuantifoil R1.2/1.3 300メッシュグリッドに塗布しました」

【極低温電子顕微鏡】

イギリスの王立生物学会の説明によりますと、極低温電子顕微鏡は、試料を超低温で凍らせて「生体試料の構造配置」を研究する技術だそうです(こちら と こちら)。分子サンプルの異なる視点を組み合わせることで、その構造を3Dモデルに変換することが可能になります。

UC San Francisco(UCSF)による極低温電子顕微鏡の説明動画があります(こちら)。

酸化グラフェン(GO)は、研究対象の冷凍サンプルを置く「グリッド」を作るのに有用な材料であると、UCSFのYifan Cheng教授(生化学・生物物理学)らはJournal of Structural Biologyに掲載された2018年の論文で説明しています(こちら)。

極低温電子顕微鏡では、酸化グラフェンはグリッド作製用の基板としてよく使われますが、これは試料に酸化グラフェンが含まれていることを意味しません、とCheng氏はReutersに語ってくれました。

「この方法では、小さな液滴(2μl)の試料をメッシュ状のグリッドに塗布し、その後、グリッド/試料を液体窒素温度に浸透冷凍し、電子顕微鏡に装填して数千枚以上の画像を撮影します。グリッドを作成する際、より良い極低温電子顕微鏡用グリッドを作成するために、一般的にGO基板が使用されます。本サンプルはGOを含んでいません。」

FDA プレス担当のAbby Capobianco氏はロイター通信に対し、Phizer社がFDAに文書を提出したことを明らかにしました。

「酸化グラフェンは、7ページの文章に含まれており、特定のタイプの顕微鏡を用いたSARS-CoV-2スパイクタンパク質の構造的特徴付けの研究のための実験手順を部分的に説明しています。酸化グラフェンは、タンパク質の観察を補助するための材料です。酸化グラフェンはワクチンの成分ではありません」と彼女は述べています。

ロイター通信の問い合わせに対し、Pfizer社の広報担当者は、Pfizer-BioNTech社のCOVID-19ワクチンの全成分リストを掲載したリンクを送ってきました(こちら、6ページ目参照)。酸化グラフェンは記載されていません。

「我々は、酸化グラフェンがPfizer-BioNTech COVID-19ワクチンの製造に使用されていないことを確認しています」と広報担当者は述べています。

Pfizer 社は、出回っている文書について、それ以上のコメントはしておりません。

【評定】

  • 誤りです。

  • Pfizer社のCOVID-19ワクチンに酸化グラフェンは含まれていません。

  • この文書では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のサンプルを低温電子顕微鏡で観察するためのグリッドに酸化グラフェンが使用されていることに言及しています。

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