イベルメクチン vs. COVID-19を喧伝するプロ・イベルメクチングループの研究について知っておくべきこと

去年の6月の記事ですので、オミクロン変異種対応及びブースター接種まで完了された方の増加等に対応した情報更新は逐次必要となるとは思いますが、和訳を付けます。参考にして下さい。

【概要の和訳】

  • ある研究《実際には、COVID-19患者にイベルメクチンを使用して行なわれた試験のレビュー》では、COVID-19の死亡の大きな減少が 『イベルメクチンを使用することで可能である。』と主張しています。

  • この研究は、イベルメクチンがCOVID-19の使用に承認されるように運動しているグループに所属する研究者によって行なわれ、彼らはその研究においてその所属を宣言していません。専門家は、レビューの根拠となったイベルメクチンの試験は質が高くないと述べています。

  • FDAは、COVID-19の予防または治療のためにイベルメクチンを服用しないよう警告しています。

【本文和訳】

抗寄生虫薬イベルメクチンはCOVID-19の「特効薬」になりうるか?

私達は、イベルメクチンがCOVID-19の感染を「基本的に消滅させる」ことを示す「山のようなデータ」といった虚偽の主張を評価しています。イベルメクチンがCOVID-19の治療に役立つことを示唆する限定的な研究もあれば、有意な影響を示さない研究もあります。多くの研究はサンプルサイズが小さく、その他の制限もありました。

同時に、イベルメクチンは治療の可能性があるとして一概に否定されているわけではありません。

新しい研究は、公衆衛生当局がより多くの研究が必要であると述べているにも関わらず、コロナウイルスによる死亡が減少したと主張し、この議論を再燃させています。

"Epoch Times"の見出しによりますと、『新しい研究はイベルメクチンとCOVID-19による死亡数の「大幅な減少」とをリンク付ける物である。』と書かれています。

この研究では、死亡者数を減らすことが可能かも知れないというだけですから、この見出しは大げさです。この研究は、COVID-19の患者に対してイベルメクチンを投与した臨床試験のレビューです。

しかも、この研究はイベルメクチンをCOVID-19用に承認するよう運動しているグループの研究者が行ったものです。この団体と関係があるにも関わらず、著者らは研究の中で利益相反がないことを宣言しています。

WHOは、COVID-19治療ガイドラインの中で、この薬について「滅多に効かないw証拠」を挙げて、「臨床試験の状況を除いて、COVID-19の患者にイベルメクチンを使用しないことを推奨する」と述べています

FDAは、「COVID-19の予防や治療にイベルメクチンを使用すべきではない」と述べています。イベルメクチンは、寄生虫やシラミなどの寄生虫による症状の治療にFDAの承認を受けていますが、大量に服用すると「危険であり、重大な害をもたらす可能性がある。」と述べています。

ここでは、COVID-19を予防または治療する方法として、この薬の好ましい見出しを生成する研究について、我々が知っていることを開示します。

研究レビュー試験

American Journal of Therapeuticsに掲載されたこの査読付き研究は、6月17日に発表され、ニューカッスル大学人口健康科学研究所の消化器内科の研究員であるAndrew Bryantが主導しています。

研究者らは、研究結果を分析し、イベルメクチンを投与された人とそうでない人の死亡率について調べたということです。研究者らは以下のように結論付けました。:

「中程度の確実性のエビデンスにより、イベルメクチンによってCOVID-19による死亡を大幅に減少させることが可能であることが判明しました。臨床経過の早い段階でイベルメクチンを使用することで、重症化する人数を減らすことが出来るかもしれません。明らかな安全性と低コストは、イベルメクチンがSARS-CoV-2の世界的な流行に大きな影響を与える可能性があることを示唆しています。」

彼らは、「医療専門家は、治療と予防の両方において、その使用を強く考慮すべきです。」と付け加えました。

研究の裏付け

専門家によると、この研究が依拠する臨床試験は質が高くないとのことです。

ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの上級研究員であるAmesh Adalja博士は、この研究はメタアナリシス(=他の分析の分析)であり、「その強さは、それを構成する基礎研究に依存している。」と述べています。

一般的に、肯定的な利益を示すと称するイベルメクチン研究の殆どが、質が低く、バイアスの可能性があります。このことが、国立衛生研究所やアメリカ感染症学会にイベルメクチンが推奨されない理由です。」と彼は言っています。「真の有用性を発見出来るのは、厳密にデザインされた無作為化対照試験のみです。」と述べています。

メタアナリシスが正しいと仮定すれば、イベルメクチンは「更なる研究に値すると思われる」とコロンビア大学メディカルセンターの疫学教授Stephen Morseは言いました。

当初は有望と思われたが、より厳密な臨床試験に持ちこたえられない薬剤もあります。」とMorse氏は言います。『例えば、ヒドロキシクロロキンが「治療薬」であると主張する者がいますが、それを裏付ける強力なデータはありません。』と彼は言います。

「これは本当に問題で、非常に有望で有用かもしれないが、ホームランではない薬剤に非現実的な期待を持たせることになります。」とMorseは述べました。

ウェイン州立大学外科・腫瘍学教授で、カルマノス癌研究所の乳腺外科部長であるDavid Gorski博士は、6月の研究を批判しています。

「多数の小規模で低品質の臨床試験のデータをプールしても、魔法のように1つの大規模で高品質の臨床試験が出来るわけではありません」と、医学的な主張を評価するウェブサイトScience-Based Medicineの編集長でもあるGorski氏は書いています。

更に、「イベルメクチンをこの病気に対してテストした既存の少数の質の高い臨床試験は、一様に肯定的な結果を見出すことが出来ませんでした肯定的な結果が出たのは、より小規模で低品質の試験だけです。これは、この薬がおそらく効かないということを示すものです。」

Gorski氏はまた、研究者達が、利益相反がないと主張しているにも関わらず、BIRD(英国イベルメクチン推奨開発)グループに所属していることを指摘しました

BIRDは自らを 「世界中のCOVID-19の予防と治療のために、安全な薬イベルメクチンが承認されるよう運動している」と説明しています

この研究の共著者の一人であり、BIRDのリーダーであるTess Lawrieは、PolitiFactにメールで、彼女の研究は、「イベルメクチンを使用した場合、特に早期治療として採用した場合、COVID-19による死亡の大きな減少が見込まれることを示しています。」と述べています。

6月28日に発表された別のメタアナリシスでは、反対の結論に達しています。

この研究はコネチカット大学の研究者が主導し、アメリカ感染症学会の発行する査読付き雑誌Clinical Infectious Diseasesに掲載されました。その研究によると、標準治療やプラセボと比較して、イベルメクチンは「全死亡率を減少させなかった」ということです。この研究は、この薬は「COVID-19患者の治療には有効な選択肢ではない」と結論付けています。

BIRDは、このメタアナリシスを削除するか、その 「誤った情報」について警告を発するようジャーナルに要求することで対応したのです。

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