【あたおか主張論破】マンモグラフィは乳癌による死亡リスクを増加させるものではなく、減少させるものです。

【主張】

  • マンモグラフィは癌を予防しない。

  • マンモグラフィは乳房をX線に曝露し、組織を損傷するため、癌の発生を助長する。

【詳細評定】

《事実無根》

  • 科学的データに基づきますと、定期的なマンモグラフィは乳癌死亡率の低下と関連しており、マンモグラフィが癌を引き起こすという主張とは正反対です。

《誤りです》

  • マンモグラフィで使用される放射線量は、我々が環境から受ける年間放射線量よりも低くなっています。

  • 定期的なマンモグラフィの利点は、X線放射線に関連する潜在的なリスクを上回ります。

【キーポイント】

  • マンモグラフィは、腫瘍の可能性を含む乳房組織の異常を検出するのに役立つ医療画像技術です。

  • 発表された科学的研究によりますと、40歳以上の女性で毎年マンモグラフィーを受けている人は、乳癌を早期に発見出来る可能性が高く、その結果、治療が成功し生存出来る可能性が高くなります。

  • マンモグラフィはX線を使用しますが、放射線量は低く、定期的なマンモグラフィの利点は起こりうるリスクを上回ります。

【レビュー】

乳癌は公衆衛生上の大きな問題です。米国では女性に2番目に多い癌であり、女性の死因の第2位を占めています。米国癌協会は、2024年には米国で30万人以上の女性が新たに浸潤性乳癌と診断され、4万人以上が乳癌で死亡すると推定しています。ヨーロッパでは、乳癌は最も多く診断される癌であり、女性の癌による死因の中で最も多い癌です。

乳癌を早期に発見するために、米国癌協会は1976年に年1回のマンモグラフィ推奨し始めました

しかしながら、自然療法家のBarbara O'Neillは、マンモグラフィーは癌を予防するどころか、むしろ癌を助長すると主張しています。2024年5月にTikTokに投稿されたインタビューで、O'Neillはマンモグラフィーについて質問され、「予防のために押し付けられているが、予防にはならない」と述べています。彼女は更に、繰り返されるマンモグラフィが乳癌の一因となるのは、乳房に放射線が照射されるからであり、検査中に乳房組織が損傷されるからだと付け加えています。この映像はTikTokで160万回再生さ れていました。Facebookにも投稿されました

O'Neill は医療関連の資格を一切持っておらず、健康に関する誤った情報を広めた前科があります。ニューサウスウェールズ州医療苦情処理委員会は、重炭酸ナトリウム(重曹)で癌が治ると患者に告げたり、妊娠や育児に関する誤解を招くようなアドバイスを広めたと認定し、彼女に医療サービスを提供することを一切禁止しました。

残念ながら、以下に述べますように、O'Neillの主張は誤りです。

マンモグラフィが乳癌のリスクを増加させることはありません

従来のマンモグラフィは、乳房を板で挟んで圧迫し、その板を通してX線を送ることで撮影します。通常の骨格X線画像で骨が白く写るように、乳房内の密度が高い領域は画像上で白く写ります。

このようにマンモグラフィでは、乳房内の異常な形状や異常な位置にある高密度組織を検出することが可能です。密度が高い部分は腫瘍ではないかもしれませんが、それを検出することで、医師は組織生検等の追加検査を行なうべきかどうかを決めることが出来ます。

乳房をプレートで圧迫することで、組織を(動かないように)固定する補助となり、X線撮影中に人が動いた時に発生するブレを軽減することが出来ます。また、X線がプレートからプレートへ移動する距離が短くなるため、低線量の放射線を使用することが可能になります。

乳房を圧迫すると、不快感や痛み、更には小さな組織の損傷を知らせる痣が出来ることがあります。しかしながら、O'Neillの主張とは逆に、乳房の損傷が癌の原因になることはありません。この件に関して、カナダ癌協会は次のように述べています

  • マンモグラフィで乳房を圧迫しても乳癌にはなりません。

  • 圧迫によって、既にある腫瘍が大きくなったり広がったりすることはありません。

X線は電離放射線の一種です。つまり、十分な高線量のX線に繰り返し曝されると、遺伝子の突然変異が起こり、癌になる可能性があります。しかしながら、マンモグラフィに使用されるX線は低線量です。

米国癌学会は、年間マンモグラフィの平均放射線量は0.4ミリシーベルト(シーベルトは受ける放射線量の単位)と説明しています。比較として、米国では環境中の自然放射線により、毎年3ミリシーベルトの線量を浴びます。つまり、我々はマンモグラフィで使用される線量の7倍の放射線量を毎年浴びていることになるのです。

そのため、米国癌学会は次のように述べています

  • マンモグラフィの有益性は、放射線被曝による可能性のある害を上回ります。

同様に、米国国立生体画像・生体工学研究所は次のように述べています

  • 大部分の女性にとって、定期的なマンモグラフィのメリットは、この放射線量がもたらすリスクを上回ります。

定期的なマンモグラフィは乳癌死亡率の減少に有効です

マンモグラフィは癌を予防しないというO'Neillの主張も不正確です。実際、定期的な検診は癌の早期発見を可能にし、早期診断は生存の可能性の増加と関連しています。英国癌研究協会によりますと、早期癌と診断された女性は全員、少なくとも5年間は生存するという結果が出ています。この統計は、癌の進行が遅い段階で診断された場合、10人中3人に減少します。

科学的研究でも、定期的なマンモグラフィが乳癌死亡率の低下と関連していることが示されました。英国で実施された無作為化臨床試験では、女性を20年以上追跡調査した結果、40歳から48歳まで毎年マンモグラフィを受けた人は、40歳代に毎年マンモグラフィを受けなかった人に比べて、その後の10年間の乳癌死亡率が減少することが明らかになりました[1]。

別の研究では、スウェーデンで乳癌検診プログラムに参加した女性と参加しなかった女性との間で乳癌の転帰を比較しました。この研究では、検診プログラムへの参加は、診断後10年以内に乳癌で死亡するリスクが60%低いことと関連していることが判明しました[2]。

オランダの研究では、マンモグラフィ検診プログラムに参加した女性は、検診を受けなかった女性よりも早い段階で癌の診断を受け、これらの女性は生存の可能性が高いことが報告されています[3]。カナダとスウェーデンの研究でも、定期的なマンモグラフィが乳癌死亡率の低下や生存期間の延長に関連していることが判明しています[4,5]。

しかしながら、乳癌死亡率の低下という点で、定期的な検診による意味のある効果が報告されていない研究もあることに留意する必要があります[6,7]。末期癌はより新しい治療法で治療可能となるため、長年に渡る癌治療の改善により、早期癌発見の利益は減少する傾向にあるのかもしれません[6]。

定期的なマンモグラフィには、過剰診断といった限界もあります。これは、本来なら症状が出ず、癌にまで進行することのなかった腫瘍を検出してしまうリスクです。過剰診断の結果、患者は不必要な精神的苦痛を受けたり、不必要な治療や外科的介入を受けたりすることがあります。

定期的なマンモグラフィが癌死亡率に及ぼすプラスの影響が、治療法の向上により時間の経過とともに減少する一方で、過剰診断のリスクが変わらないのであれば、検診プログラムのリスクと利益のバランスが徐々に変化する可能性もあります [6] 。

とはいえ、米国癌協会は、過剰診断は一貫して比較的僅かなリスクだと説明しています

  • 過剰診断はそれほど頻繁に起こるとは考えられていません。

  • マンモグラフィで過剰診断される可能性のある乳癌の割合の推定には幅がありますが、最も信憑性の高い推定値は1%から10%です。

定期的なマンモグラフィ検診が乳癌死亡率の低下と関連することを一般的に示す科学的研究を考慮した場合、複数の医療機関がマンモグラフィ検診を推奨しています。米国産科婦人科学会は、癌のリスクが平均的な女性に対して、40歳から75歳まで年1回または2年に1回のマンモグラフィ検診を推奨しています。米国放射線学会は、40歳から毎年マンモグラフィ検診を受けることを推奨し、米国癌学会は、45歳から54歳までは毎年検診を受け、その後は2年ごとに検診を受けることを推奨しています。欧州では、欧州委員会が45歳から2~3年に1度の検診を推奨し、50歳からは2年に1度の検診を強く推奨しています

結論

  • 定期的なマンモグラフィ検診は、Barbara O'Neillの主張とは逆に、癌の成長を引き起こすことも、助長することもありません。

  • 定期的なマンモグラフィ検診はその逆なのです。

  • 癌の早期発見を可能にすることで、マンモグラフィは癌治療の成功を向上させ、生存の可能性を高めます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?