(頭おかしい奴らの)主張とは裏腹に、FDAは、(一貫して)COVID-19の治療や予防にイベルメクチンを使用しないよう勧告し続けています。

【主張】

  • FDAは現在、イベルメクチン(COVID-19用)の処方は問題ないと言っている。

【詳細評定】

誤解を招くものです:


  • 米国FDAはイベルメクチンの使用に対する姿勢を変えておらず、COVID-19に対する薬剤としての承認はしていません。

  • しかしながら、米国FDAは、米国の医師は合法的にイベルメクチンの適応外処方が可能であるため、この行為を阻止することは不可能であると再度表明しています。

  • 米国FDAはツイートで、イベルメクチンに関する推奨事項の変更を否定しました。

【キーポイント】

  • COVID-19治療薬としてのイベルメクチンの有効性については、多くの誤解を招く主張がなされてきました。

  • 寄生虫に対する有効性は認められているものの、イベルメクチンの抗ウイルス効果は不確かなままであり、臨床試験ではCOVID-19に対する決定的な効果は示されていません。

  • 保健当局は、副作用の可能性と信憑性の高い裏付けがないことから、COVID-19への使用に注意を促しています。

  • 米国FDAは、最近のソーシャルメディアへの誤った投稿に反して、その姿勢を変えていません。

  • 同局は、イベルメクチンはCOVID-19の予防にも治療にも承認されていないと主張しています。

【レビュー】

COVID-19パンデミックの初期段階から、エビデンスが欠如しているにも関わらず、イベルメクチンがCOVID-19の治療や予防に有効であると宣伝する誤解を招く主張が数多くなされてきました。最近では、米国FDAがその立場を再考し、COVID-19に対するイベルメクチンの処方を許可したとのソーシャルメディア上の主張が見受けられます。このレビューで説明します通り、この新しい主張もまた誤解を招くものなのです。

米国FDAには医師がCOVID-19にイベルメクチンを処方するのを阻止する権限がありません。そのため、COVID-19に対するイベルメクチンの使用を「現在」許可しているという主張は、米国FDAの説明を誤って伝えることになってしまうので注意が必要です。FDAは引き続きイベルメクチンの使用に反対しており、ツイートで上記主張を否定しています。よって、米国FDAがこの薬をCOVID-19に対して有効であると見做すようになったという表現は誤りです。

イベルメクチンは抗寄生虫薬であり、ヒトと動物の両方の寄生虫感染症の治療に数十年に渡り使用されてきました。イベルメクチンは、河川失明症、ストロンギロイド症、疥癬を含む様々な寄生虫に対して非常に有効であることが証明されています。

イベルメクチンは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果が実験室の細胞で報告された[1]後、COVID-19の治療薬として大きな注目を集めました

COVID-19治療のためにイベルメクチンを調査した臨床試験の結果はまちまちで、結論は出ていません[2]。より大規模な研究では、プラセボ薬と比較してCOVID-19患者の回復時間の改善は見られていません[3,4]。

イベルメクチンはCOVID-19に対する安全かつ有効な治療薬とは考えられていません。

裏付けとなる証拠がないため、WHO米国国立衛生研究所(NIH)米国FDA欧州医薬品庁(EEA)といった公衆衛生当局や規制機関は、COVID-19の治療や予防にイベルメクチンを使用することを推奨しておりません。

こうした勧告にも関わらず、COVID-19に対するイベルメクチンの処方は大幅に増加しました。2020年12月までに米国で処方されたイベルメクチンの量は、2019年と比較してほぼ7倍になっていました[5]。

2021年には、COVID-19の治療や予防のためにイベルメクチンを処方箋で入手したり、動物用製剤を服用していた人々の間で中毒事故が多数報告されました[6]。

米国FDAは、安全性と有効性の科学的証拠に基づいて、特定の用途の医薬品を評価し、承認する責任を負っています。そのプロセスには、医薬品の有益性がそのリスクを上回ることを確認するための厳格な前臨床試験と臨床試験が含まれます

適応外処方とは、FDAが明確に承認していない目的で医薬品を使用することを指します。医療提供者は、承認された薬剤が患者に有益であると考える場合、適応外処方を合法的に行なうことが可能です。この慣行は一般的であり、特に複雑な病状に対処する場合、医療上の柔軟性を可能にするものです。

イベルメクチンは特定の寄生虫感染症に対してFDAの承認を受けていますが、医療従事者が選択すれば、適応外で処方する権限を有しています。

米国FDAはCOVID-19に対するイベルメクチンを承認していないし、その勧告も変更していません。

米国FDAに対する民事訴訟では、米国FDAがCOVID-19に対するイベルメクチンの服用を推奨しないよう広報資料を作成したことは、米国FDAの権限を逸脱し、医師が適応外処方を行うことを妨げたと主張しました。

2023年8月8日の公聴会で、米国FDA側の弁護士は、米国FDAが以前に公言していたことと同じように、医師は米国FDAの承認なしにイベルメクチンや他の薬を適応外で処方する権利があると表明しました。これは米国FDAの権限の限界を正しく説明したものですが、この声明は、FDAがイベルメクチンに関する立場を変更したかのように誤解を招く形で使用されました。

この主張に対し、米国FDAは次のようにツイートしています

FDAはイベルメクチンをヒトと動物における特定の用途に承認していますが、COVID-19の予防や治療に使用することを承認したわけではなく、 その用途に安全あるいは有効であるとのお墨付きを与えたわけでもありません。

XユーザーのU.S. FDAさん: 「We’ve seen lots of chatter about ivermectin in the last week. Some of what you’re seeing in videos and social media posts isn’t true. Here are the facts: ⬇️⬇️」 / X (twitter.com)

FacebookTikTokに投稿され、合計130万回以上も視聴された動画は、「米国FDAは現在、イベルメクチンを処方してもよいと言っている」と主張し、COVID-19への使用に言及しています。これでは視聴者は、米国FDAがCOVID-19に対するイベルメクチンの有効性について立場を変えたと誤解してしまいます。しかしながら、これは事実ではなく、FDAは医師が適応外処方をする法的権利を常に有していることを再確認しただけなのです。

同様に、Gateway PunditZero Hedgeの記事の見出しは、それぞれ「 FDAの弁護士は医師がCOVID-19のためにイベルメクチンを処方することが可能であることを認めた」、「FDAはイベルメクチンの爆弾発言をした」と主張しています。この「認める」或いは「爆弾発言」という言葉は、FDAが隠そうとしていた新しい情報であるかのように読者を誤解させるものです。医薬品の適応外使用は、FDAも含めて既に広く認められている一般的な慣行であり、FDA弁護士の発言はFDAによる暴露ではありません。

結論

FDAのイベルメクチンに対するスタンスは変わらず、COVID-19については未承認のままです。パンデミック以前から、医師は適応外でイベルメクチンを処方することが可能であり、これはFDAの管理外です。民事訴訟において、FDAの弁護士はこの行為が合法であることを認めましたが、推奨はしていません。

引用文献

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