Lancetに投稿されたプレプリント論文には、剖検された死亡例の74%がCOVID-19ワクチンによるものであったとは記されていません。

  • 以下は昨年7月にファクトチェックされたものです。

  • プレプリント段階ではLancetにリジェクトされています。

  • ファクトチェック記事の内、当時のLancetの見解、Lead Storiesが当時掴んでいた各著者についての情報のみ和訳を付けておきます。参考にして下さい。

2023年7月5日にLancetに投稿されたプレプリント論文は、レビューした剖検のうちの74%の死因がCOVID-19ワクチンであることを突き止めたのものでしょうか?加えて、それはLancetが掲載した正規の研究報告だったのでしょうか?いいえ、どちらも事実ではありません:このプレプリント論文は、Lancetが「我々の審査基準に違反している」と言ったため、同医学誌への論文の投稿段階を通過することはありませんでした。その結果、この論文は査読を受けることはありませんでした。査読とは、同じ分野の専門家(同業者)による精査を受けることであり、学術的な科学的質を保証するために必要なものとされています。

この主張は、The Daily Scepticが2023年7月6日に発表した記事(アーカイブはこちら)に掲載されており、タイトルは "Lancet Study on Covid Vaccine Autopsies Finds 74% Were Caused by Vaccine -- Study is Removed Within 24 Hours " となっています。記事の冒頭は次のようなものでした:

COVID-19ワクチン接種後の325件の剖検に関するLancetのレビューによると、死亡例の74%がワクチンによるものであった--しかしながら、この研究は24時間以内に削除された。

Lancet Study on Covid Vaccine Autopsies Finds 74% Were Caused by Vaccine – Study is Removed Within 24 Hours – The Daily Sceptic

このファクト・チェックを書いている時点では、この記事はThe Daily Scepticのウェブサイト上で次のように表示されていました:

( 出典:2023/07/06 木曜日 15:12:30 UTCに取得されたThe Daily Scepticのスクリーンショット)

Daily Scepticの記事は的確で、"A Systematic Review of Autopsy Findings in Deaths after COVID-19 Vaccination"(COVID-19ワクチン接種後の死亡における剖検所見のシステマティック・レビュー)と題された論文全文は、研究というほどのものでなく、The Lancetのウェブサイトにはあまり掲載されていませんでした。論文の「手法」の項で、著者らは「2023年5月18日までに発表されたCOVID-19ワクチン接種に関連する全ての剖検・剖検報告のシステマティックレビューを実施した」と主張しています。論文によりますと、PubMedScienceDirectのデータベースを用いて情報を収集したということです。

Lancetの見解:

論文投稿後すぐに削除されたことについて、Lancetは次のように述べています:

このプレプリントはPreprints with The Lancetによって削除されましたが、その理由は研究の結論が研究方法によって裏付けられていないからです。Preprints with The Lancetは、掲載された論文が当社の審査基準に違反していると判断した場合、その論文を削除する権利を留保します。

A Systematic Review of Autopsy Findings in Deaths after COVID-19 Vaccination by Nicolas Hulscher, Paul E. Alexander, Richard Amerling, Heather Gessling, Roger Hodkinson, William Makis, Harvey A. Risch, Mark Trozzi, Peter A. McCullough :: SSRN

また、このウェブサイトには、査読のために投稿されたこのような論文に関する注意書きが掲載されています:

ここで入手可能なプレプリントは、Lancetの出版物ではなく、また必ずしもLancetジャーナルで査読中のものでもありません。これらのプレプリントは、査読を受けていない初期段階の研究論文です。また、予備的なものであり、査読を受けていないことを強調することなく、一般読者に向けて発表すべきではありません。

A Systematic Review of Autopsy Findings in Deaths after COVID-19 Vaccination by Nicolas Hulscher, Paul E. Alexander, Richard Amerling, Heather Gessling, Roger Hodkinson, William Makis, Harvey A. Risch, Mark Trozzi, Peter A. McCullough :: SSRN

Lancet誌のpreprintsに関する詳細は、こちらをご覧下さい。

米国CDC:翻訳省略

米国FDA:翻訳省略

VAERS:翻訳省略

論文執筆者

  • この論文の著者の何人かは、反ワクチン界では有名な人物です。以下はその一例です:

Peter McCullough

  • テキサス州の心臓専門医であり、COVID-19ワクチン懐疑論者であるMcCulloughは、VAERSに記録された事象を参照することでワクチン接種を思いとどまらせ、また米国FDAや米国CDCの警告にも関わらず、治療薬としてイベルメクチンを宣伝することで批判を浴びてきました。

  • McCulloughは以前、Baylor Scott & White Health社に所属していましたが、同社は2021年9月、同氏がBaylor社との関係を引き合いに出して主張を強め続けることを阻止するため、接近禁止命令を申請しました。

  • McCulloughに関するLead Storiesのファクトチェックはこちらから。

Harvey Risch

  • エール大学公衆衛生大学院教授のRischは、COVID-19の治療薬としてヒドロキシクロロキンを提唱する米国の第一人者です。2020年6月15日、米国FDAはクロロキンとヒドロキシクロロキンの緊急使用許可(EUA)を取り消し、この薬は「COVID-19の治療に有効である可能性は低い」としています。

  • Rischに関連するLead Storiesのファクトチェックはこちらから。

Roger Hodkinson


  • Hodkinsonはカナダの医師であり、病理学者でもあります。

  • 彼はCOVID-19は「疑うことを知らない一般大衆に対して行なわれた史上最大のデマ」であり、「単なる悪いインフルエンザ」であるという主張でよく知られています。彼の主張はどちらも事実無根です。

  • Hodkinsonに関するLead Storiesのファクトチェックはこちらから。

William Makis

  • Makis(⇦リンク切れ)は核医学放射線科医であり、腫瘍学者ですが、カナダ政府やカナダの専門医団体であるCollege of Physicians and Surgeons of Ontarioが「mRNA注射やあらゆる種類のワクチン接種を拒否する人々に対して精神科での薬物療法を義務付けている」という考えを喧伝しました。どちらの団体もそのような姿勢を支持しているわけではありません。Pfizer社とModerna社のCOVID-19ワクチンはどちらもmRNA注射です。

  • Makisに関するLead Storiesのファクトチェックはこちらから。

  • COVID-19ワクチン接種に関するその他のLead Storiesのファクトチェックはこちらから。

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