イスラエルの救急医療データを用いた研究では、COVID-19ワクチンが心臓障害を引き起こすことは証明されていません。

【レビュー】

ソーシャルメディアユーザーが、最近発表されたCOVID-19ワクチンが心臓病を引き起こすことを証明すると偽っている研究結果を共有しています。

その例は(こちら)と(こちら)で見ることが出来ます。

SNSの投稿は、"Just the News" による「MITの研究で、COVIDワクチンが緊急の心臓の問題の急増と『有意に関連している』ことが判明』と題する記事(こちら)にリンクしています。

「イスラエルにおける40歳未満の人口におけるワクチン展開とCOVID-19第3波の緊急心血管系イベントの増加」と題された研究は、2022年4月28日に発表され、こちらで見ることが出来ます。

本研究では、《16~39歳人口における心停止及び急性冠症候群のEMS通報量とCOVID-19感染及びワクチン接種率等の潜在的要因との関連》に着目し、2019年から2021年のイスラエルの国家救急医療サービス(EMS)のデータセットを検証しています。

本研究の著者らは、2021年1月から5月の間、2019-2020年と比較して、そのような通報が25%以上増加していることを発見しました。彼らは、「因果関係を立証するものではないが、この調査結果は、ワクチンによる未検出の重篤な心血管副作用に関する懸念を引き起こし、ワクチンと心筋炎との間にすでに確立された因果関係を強調するものである」と指摘しています。

この研究自体は、COVID-19ワクチンとの相関関係を証明するものではありませんが、ソーシャルメディアの投稿では、相関関係があることが示唆されています。

著者らは、心筋炎やその他の心血管系疾患とCOVID-19ワクチンとの関連性を測定する際に直面する課題を自ら概説しています。その内容は以下の通りです。:

  1. 「有害事象の自己報告システムは、自己報告バイアスと過少報告および過剰報告の問題があることが知られている」(Reutersは、オープンソースの報告システムを使用する際の問題点を、こちらで調査している)。

  2. 「心筋炎は、複数の症状が報告されている特に罹患しやすい疾患である」-例えば、しばしば過小診断される。

  3. 「心筋傷害と心筋炎はCOVID-19感染者の間で流行し」、感染の波は接種の波と重なっている。

この研究では、心臓の問題の原因が何であったのか(=感染症かワクチン接種か)かは調べておらず、また、この年齢層で心臓のイベントが増加した他の可能な原因についても調べたり説明したりもしていません。

この研究は、COVID-19ワクチンと救急車の出動を促すような心臓の問題との相関関係を証明するものではないとして、ネット上で批判されています(osf.io/zj4xr/)(こちら)。

ロンドン大学クイーン・メアリー校の臨床疫学者、Deepti Gurdasani博士は、ロイターに対し、電子メールで、「COVID-19やワクチン接種と関連があるかどうかという個々の評価なしに、《集団レベルで》心臓のイベントを研究するのはむしろ異様だ 」と述べています。

Gurdasani氏は、多くの大規模な研究が、ワクチンに関連した心筋炎だけでなく、COVID-19に関連した病気やより重症化しやすい心筋炎についても一貫した対策を示しており、ワクチンの利点はリスクを遥かに上回ると述べています。

「他の研究では、個別のレベルで、過去のウシやワクチン接種を考慮して研究しているのとは対照的な生態学的デザインをしているこの研究では何も追加の知見は出ず、いかなる要因にも因果関係を割り出すことも出来ないであろうと思います。」とGurdasani氏は述べています。

Reuters Fact Checkは、心筋炎とCOVID-19ワクチンについてこれまでに分かっていることについての解説を掲載しています(こちら)。

COVID-19感染症の全体的なリスクは、若い男性であっても、COVID-19ワクチン接種後の心筋炎発症に伴うリスクを遥かに上回ると、専門家は述べています。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのオペレーション・リサーチ教授であるChristina Pagel氏は、ロイター通信に次のように語ってくれました:
「現在、多くの国で、ワクチン接種後とCOVID-19感染後の心臓の転帰に関する個人レベルのデータを調べた質の高い研究がいくつか行われており、その結論は明確で一貫しています。若い人(特に男性)において、mRNAワクチン接種後に心筋炎のリスクが上昇しますが、それはごく僅かであり、COVID-19感染による心筋炎リスクよりも遥かに低いです。」

ロイターへの電子メールで、彼女は以下のように言っています。:
「これらのコホートでは、ワクチンの利点は、リスクを遥かに上回ります。」

MITスローン経営大学院のオペレーションズ・マネジメント教授で、この研究の著者の一人であるRetsef Levi氏はロイターに対し、彼らが見つけた相関関係は因果関係を証明するものではないと電子メールで述べています。

「私は、この論文をどう解釈しても、ワクチンがEMSコールのこの増加を引き起こしたことの証明を示唆することはないと強調します」とLevi氏は言いました。「この論文は、問題を広くチェックし、あらゆる可能性のある原因を探るよう呼びかけているだけです。」

2022年5月5日、この研究に注釈が加えられました。それは次のように書かれています:
「読者は、この論文の結論が、編集者によって検討されている批判の対象であることに注意して下さい。全ての関係者に完全な反論の機会が与えられれば、更なる編集部の回答が続くと思われます。」 (こちら)

【評定】誤解を招く表現です。

2021年1月から5月にかけて、心血管障害の救急車出動件数が増加したことを指摘する研究は、それがCOVID-19ワクチン展開に起因するものであることを証明するものではありません。

【因みに昨日Twitterでは既に以下のように呟きましたが】

なる #デマ吐き羆 のnote記事は全否定されますwww。

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