【あたおか】特許申請書類の添付画像は「太陽シミュレータ」ではなく、自律組み立て式宇宙望遠鏡に関する物とのことです。

NASAのJames Webb宇宙望遠鏡も太陽シミュレータであることを、「太陽シミュレータ」と称する特許申請の図面が証明しているのでしょうか?いいえ、そうではありません。2003年の特許出願に含まれる図は、「自律的に組み立てられる宇宙望遠鏡」のためのものであり、「太陽シミュレータ」を描いたものではありません。当時まだ開発中だったJames Webb宇宙望遠鏡は、特許出願の中で3回言及され、その設計と特許で提案された無人組立式宇宙望遠鏡を対比させています。

この主張は、2024年5月13日に@erekowhiteがTikTokに投稿した動画(アーカイブはこちら)に登場しました。投稿には次のようなキャプションが付けられていました:

太陽フレアと太陽ストームは実在しない‼️、これらの研究は@GejiSamaによるもので、一緒に議論することになった。啓蒙と覚醒を願って。#foryou #fyp #fypシ #foryoupage #earth #geocentric #middleeast #muslim #revertmuslim #arabtiktok #science #news #tiktok #tiktoknews #viral #trends #solarstorm #solarflare

SUN FLARES & SUN STORMS ARE NOT REAL‼️ this studies are from @GejiSama... | gejisama | TikTok

記事執筆時点での TikTok における投稿の主要な場面のスクリーンショットは以下のようなものでした:

( 出典:2024/05/23 木曜日 14:40:34 UTCに取得されたTikTokのスクリーンショット)

この4分33秒の動画には、様々な陰謀論的主張が含まれています--最近オーロラが広く見えるようになった太陽嵐は、中国が放出した偽のプラズマ太陽によるものであり、雨、雲、宇宙へ行くこと、惑星は全て偽物である、というものです。このファクト・チェックでは、偽太陽の主張の基礎となっている、こちらの主張に焦点をあてていきます。

上のスクリーンショットは、動画の約2分58秒から撮られたものです。スクリーンショットに写っている上の画像は、2003年10月28日の特許出願US20050088734A1の画像であり、下の写真は2017年のNASAゴダード宇宙飛行センターのウェブ望遠鏡を示しています。ナレーターは次のように語っています:

こんな写真を見たことがあるだろう。これは太陽シミュレータの特許だ。これは、高高度の気象観測気球から届く太陽の反射である。とても似ているだろう?ジェームズ・ウェッブ望遠鏡に似ている。この望遠鏡は実は太陽シミュレータで、NASAはCGI写真を編集するので望遠鏡は必要ない。この偽物の太陽は危険だ。本物の太陽の5倍も熱く、17分間だけで華氏1億5800万度を達成するという。これらは全て本物の太陽を模倣し、クリーンなエネルギーを生産しているように見せかけている。これが彼らの夢なのだ--核融合を起こすことが。

SUN FLARES & SUN STORMS ARE NOT REAL‼️ this studies are from @GejiSama... | gejisama | TikTok

ナレーターはこれが太陽シミュレータの特許だと主張しています。Google Lensで逆画像検索したところ、ボーイング社が2003年10月28日に出願した特許出願US20050088734A1へのリンクがGoogle Patentsデータベースに収録されていることが判明しました(下の写真)。画像は26のスライドショーの最初のものです。要約では、この自動的に組み立てられる宇宙望遠鏡について説明されています:

複数回の打ち上げにより軌道に投入されるモジュール部品を用いて、宇宙空間で分割されたフィルドアパーチャ望遠鏡('AAST')を自律的に組み立てる方法に関する。一実施形態では、複数のインターロック式モジュールミラーバック構造セグメントが、エッジトラスの有無に関わらず衛星に導入される。これに複数のモジュール式セグメント光学系が結合され、主凹面鏡が形成される。別の実施形態では、ミラーバッキング構造とモジュール光学系セグメントは単一のモジュールユニットとして形成され、これらのユニットの複数が結合されて主凹面鏡を形成する。このモジュール化された構成により、宇宙飛行士を使用するしないに関わらず、実質的に無限の大きさの主鏡を宇宙空間で形成することが可能となる。

US20050088734A1 - Autonomously assembled space telescope - Google Patents
(出典:2024/05/23 木曜日 17:17:03 UTCに取得されたpatents.google.comのスクリーンショット)

下の写真の高解像度コピーは、ストックイメージサイトAlamy.comで見ることが出来ます。そこには次のようなキャプションが付けられています:

2017年4月25日に公開されたこの写真では、NASAの技術者がクレーンを使ってJames Webb宇宙望遠鏡を持ち上げ、メリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターのクリーンルーム内に移動させています。宇宙に打ち上げられますと、Webb望遠鏡の18分割された金色の鏡は、宇宙初期に形成された最初の銀河からの赤外線を捉えるように特別に設計されており、望遠鏡が今日星や惑星系が形成されている塵雲の内部を覗き見るのに役立てられます。James Webb宇宙望遠鏡は、NASAのハッブル宇宙望遠鏡の研究的後継機です。これまでに建設された宇宙望遠鏡の中で最も強力なものとなる見込みです。ウェブ宇宙望遠鏡は、NASAとESA(欧州宇宙機関)、カナダ宇宙庁が主導する国際プロジェクトです。NASA写真:Desiree Stover/UPI

In this photo, released on April 25, 2017, NASA technicians lift the James Webb Space Telescope using a crane and moved it inside a clean room at NASA's Goddard Space Flight Center in Greenbelt, Maryland. Once launched into space, the Webb telescope's 18-segmented gold mirror is specially designed to capture infrared light from the first galaxies that formed in the early universe, and will help the telescope peer inside dust clouds where stars and planetary systems are forming today. The James Webb Space Telescope is the scientific successor to NASA's Hubble Space Telescope. It will be the mos Stock Photo - Alamy

ナレーターは、一つの主張と別の主張を切れ目なく融合させていきます。この図は太陽シミュレータであり、NASAはCGIを使うだけなので望遠鏡は必要ないと言った後、次のように言います:

この偽物の太陽は危険だ。本物の太陽より5倍も熱く、華氏1億5800万度の温度を17分間記録したという。

TikTok - Make Your Day

彼女が引用した「偽の太陽」の統計データは、中国の合肥にある「人工太陽」と呼ばれる中国の実験用先進超伝導トカマク(EAST)炉に関する報告から得られたもので、宇宙ではありません。華氏1億2600万度或いは1億5800万度という、17分間保持された温度が何度であったかの報道には若干の食い違いが見られました。この数字はファクトチェックの焦点ではないものの、どちらの数字もEAST炉の記録に関する報道に関連したものであり、James Webb宇宙望遠鏡とは何の関係もないことを立証しています。

中国国営メディア新華社通信は2021年12月31日、「人工太陽」が世界新記録を樹立したと報じています。中国科学院プラズマ物理研究所のGong Xianzu研究員のコメントを引用して伝えています:

我々は2021年前半の実験で、摂氏1億2000万度のプラズマ温度を101秒間達成しました。今回、摂氏7000万度[華氏1億5800万度]に近い温度で定常プラズマ運転が1056秒間維持され、核融合炉の運転に向けた科学的・実験的な基礎が確立されました。

中国国営メディア新華社通信による

Google検索によりますと、同じ摂氏7000万度の17分間の記録に言及する際、報道では1億2600万度或いは1億5800万度という一貫性のない数字が引用されていることが分かります。

TikTokの動画の1分38秒(左下)では、レンズフレアを伴う太陽の動画画像が、2つの太陽であると誤って表現されています。0:59秒(下中央)で、ナレーターは中国が人工太陽を公開したと言っています。これは2021年12月23日に中国の文昌発射場から打ち上げられたチャン・ツェン7Aロケットの映像であり、人工太陽ではありません。Lead Storiesは2022年1月10日、Instagram(右下写真)に掲載されたこの主張を論破しました

(出典:2024/05/23 木曜日 23:01:43 UTCに取得されたTikTokとInstagramのスクリーンショットをLead Storiesが合成した画像)

太陽フレアとNASAに関するその他のファクトチェックは、こちらこちらをご覧下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?