過酸化水素の静脈注射は危険であり、医療上の有用性は認められておりません。

【主張】

  • 過酸化水素の静脈注射は、

    • 薬も、手術も、化学療法も、組織医療による他の療法もなしに、実質的にあらゆる病気の自然治癒を可能にする。

    • 感染症や自己免疫疾患と闘うことが可能である。

【詳細評定】

《誤りです》

  • 公衆衛生ガイダンスによりますと、過酸化水素を内服することは、危険であり、医学的な効果も確認されていないため、避けるべきとされています。

  • 過酸化水素を注射すると、血液中に気泡が発生し、空気塞栓症を引き起こす可能性があり、致命的となる可能性があります。

【キーポイント】

  • 過酸化水素は、無生物の物体や表面に対して有効な消毒剤です。

  • しかしながら、(生物が)過酸化水素を摂取したり、注射したりして内服すると、使用する過酸化水素溶液の強さによっては、深刻な健康問題に繋がることがあります。

  • 高濃度の過酸化水素水を飲み込むと、救急処置が必要な火傷になることがあり、過酸化水素水を血液中に注入すると気泡が発生し、空気塞栓症になることがあります。

【レビュー】

16,000人以上のフォロワーを持つ占星術師で元ラジオトークショー司会者のFarley MalorrusがFacebookにアップした動画は、過酸化水素の静脈注射により「薬なし、手術なし、化学療法なしで、実質的にあらゆる病気を治癒することが可能となる」と主張しています。この動画には14,700件以上の「いいね!」と7,200件以上のシェアがありました。

過酸化水素は、コンタクトレンズのような無生物の消毒薬としてよく使われる化学物質です。フリーラジカルを発生させることで微生物を死滅させ、様々な細菌、真菌、ウイルスに対して効果を発揮します。過酸化水素は、以前は傷口の消毒によく使われていましたが、皮膚を刺激し、却って害を及ぼす可能性があることが研究により判明したため、現在では推奨されていません

また、過酸化水素は歯科医院で歯を白くするために使われ[1]、洗口液としても人気があります。しかしながら、歯科医師であり、米国歯科医師会の広報担当者であるAda Cooper氏は、マウスウォッシュとして使用する人は、過酸化水素の濃度を1.5~2%に保つ必要があるとUSA Todayに対して述べています。また、過酸化水素が組織にダメージを与える可能性があるため、マウスウォッシュを長時間口の中に入れておかないように注意する必要があります。

過酸化水素は、無機物に対しては有効な消毒剤ですが、摂取や血液への注入といった内服は危険であり、医学的な効果も確認されていません。過酸化水素はすぐに水と酸素に分解されるため、血液中に注入すると気泡が発生します。これが空気塞栓症に繋がり、命に関わることがあります。 まず、気泡が血液の循環を妨げ、脳卒中や心臓発作に発展する可能性があります。

COVID-19のパンデミックでは、呼吸器感染症の治療のために過酸化水素を口や鼻に吹きかけると効果があるとされる主張が盛んになされていました。過酸化水素は呼吸器の炎症や炎症を引き起こす可能性があり、既存の呼吸器疾患を悪化させるだけなので、安全ではないとHealth Feedbackは以前のレビューで説明しています。

過酸化水素を飲み込むと、過酸化水素溶液の濃さによって、様々な悪影響があるとPoison Controlは説明しています。 少量であれば、胃の調子が悪くなることはあっても、長期的な影響はありません。しかしながら、高濃度の溶液を大量に摂取した場合、火傷をしてしまい、救急処置が必要になることがあります。

食品用過酸化水素は、過酸化水素を35%含むもので、その名前に反して摂取しても安全ではありません。この名前は、特定の食品の加工や漂白などの目的で食品産業で使用されていることに由来します。しかしながら、過酸化水素がHIVから不整脈まで、あらゆるものの万能薬として宣伝されてきたとPoison Controlが指摘しています。過酸化水素の医療効果に関する主張は信憑性の高い科学的証拠に基づくものではなく、過酸化水素がそのような病気を治すことを説明するもっともらしい生物学的メカニズムが存在しないにも関わらずです。

過酸化水素は、ある種のがん研究でテストされていますが、これには重要な注意事項が含まれています。過酸化水素を皮膚腫瘍に塗ることで腫瘍が縮小し、外科手術で腫瘍を除去しやすくなるかどうかを調べた小規模研究があります[2]。この研究では、過酸化水素の注射は行わず、腫瘍の外科的切除が必要であったため、過酸化水素を「治療薬」として使用したわけではありません。

過酸化水素を腫瘍に注入し、放射線治療の効果を高めるかどうかを確認した研究があります[3]。この場合、過酸化水素は静脈内投与のように血流に注入されることはありませんでした。また、過酸化水素は、癌治療で実績のある放射線治療と並行して使用され、単独でも治療そのものとしても使用されませんでした。

過酸化水素は、無機物の消毒に有用であり、歯科医の監督下で歯を白くしたり、マウスウォッシュとして使用することもありますが、過酸化水素を内服することで「殆ど全ての病気」を治療出来るという証拠はなく、注射や摂取することで深刻な害をもたらすという証拠は数多く存在しています。

引用文献

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?