【あたおか】米国の出生証明書が数十億ドルの価値のある債券なんてことはありません。

アメリカの出生証明書は、《American Bank Note Company》と記されていることからも分かるように、個人的な取引に合法的に使用可能な数十億ドル規模の債券なのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。この主張は、《sovereign citizen》運動のメンバーが推進する陰謀論の一つです。この緩やかに組織されたグループは、アメリカ連邦政府は民間人に対して法的管轄権を持たないと考えています。一方、《American Bank Note Company》は米国の通貨を製造しているわけではなく、現在は廃業した印刷・製版会社であり、その製品には一部の人口統計記録用紙も含まれていました。

この主張は、2024年2月3日にTikTokで公開された動画(アーカイブはこちら)に「最新情報: 彼らはあなたの出生証明書を債券にした...何十億もの価値があるよ!」というキャプションで登場しました。(ハンガリー語から英語への翻訳はLead Storiesのスタッフによるものです)。これは、2013年8月2日にBrian Kelly's blogというウェブサイトに掲載された投稿(アーカイブはこちら)のハンガリー語訳です。英語の原文は以下の通り:

私達の出生証明書に《American Bank Note Company》って書いてあるのを知らなかった?今日は点と点が繋がりすぎて、エクソシストに出てくる少女みたいに、頭がグルグル回って緑色のゲロを吐き始めるかもしれない。ごめん、気持ち悪い。でも、それくらい不穏なものなんだ......。

アメリカ合衆国が破産を宣言し、全てのアメリカ人を国債の担保として差し入れ、全ての金を没収して支払い手段を無くした時、アメリカ合衆国はまた、新たな支払い手段を提供する法的責任を負った。しかし、現実的には、これはアメリカ人一人ひとりに何か支払うものを与えることを意味し、その「何か」とはあなたの信用である。

あなたの社会に対する価値は、当時も今も保険数理表を使って計算され、出生時にこの「平均価値」に等しい債券が作られる。現在は100万円から200万円だと聞いているよ。この債券は出生証明書を担保としており、出生証明書は譲渡可能な証書となる。この債券は抵当に入れられ、その価値が無制限になるまで取引される。実際のところ、あなたはアメリカ中のどの店に行っても、目につくものなら何でも買うことが出来るはずで、店員に「免除口座にチャージして下さい」と言えば、その免除口座は9桁の数字で識別される。これはあなたのEINで、Exemption Identification Numberの略である。

Brian Kelly's Blog: UPDATED: Your Birth Certificate Was Made Into a Bond...it's Worth Billions! (briankellysblog.blogspot.com)

記事執筆時のTikTokでの投稿は次のようなものでした:

(出典:2024/02/07 水曜日 15:29:56 UTCに取得されたTikTokのスクリーンショット)

米国政府が「破産」しているという《sovereign citizen》の主張は、公民権団体である南部貧困法律センター(SPLC)の分析(アーカイブはこちら)で概説されていますように、1933年に国内取引のための金本位制を放棄するという決定について言及しているものです。この「インチキな歴史の教訓」は、主権在民イデオロギーの礎石を形成している、とSPLCは述べています:

1933年に米ドルの裏付けが金ではなく、連邦政府の『全面的な信頼と信用』になって以来、政府は国民を担保に、将来の収入能力を外国の投資家に売り渡し、事実上全てのアメリカ人を奴隷にしてきたと主張します。この売り渡しは、出生証明書の発行と、赤ちゃんの社会保障番号を申請するようにという病院のアドバイスによって、出生時に行なわれると主権在民主義者は主張します。《sovereign citizen》によりますと、政府はその出生証明書を使って赤ん坊の名前で企業信託を設定し、米国財務省の秘密口座に60万ドルから2000万ドルまでの資金を提供するというのです。

Sovereign Citizens Movement | Southern Poverty Law Center (splcenter.org)

米国財務省のウェブサイトに掲載された警告(アーカイブはこちら)では、この主張には根拠がないと断言されています:

いくつかのインターネット上のブログや 動画では、米国の出生証明書が譲渡可能証書(支払いを約束する文書)であるという誤った主張がなされています...。実際のところは、出生証明書は買い物に使うことは出来ませんし、政府が保有しているとされる貯蓄債券を要求するために使うことも出来ません。

Birth Certificate Bonds — TreasuryDirect

一方、米国財務省のウェブサイトでも説明されていますように、政府が全ての米国人について「免除口座」を保持しているという主張は、詐欺師が人々から金を詐取するために悪用した作り話です:

「免除口座」は誤った用語であり、これらの口座は架空のもので、財務省のシステムには存在しません。これらのブログや 動画は、あなたの出生証明書債券が借金を帳消しにしたり、金銭や有価証券を回収する手助けになると約束しています。一部のインターネットサイトでは、その方法に関する動画や Web セミナー、コーチングの販売までしています。このような手口を使って財務省から利益を得た者は一人もいません。しかしながら、詐欺師達はインチキ商品を売ることで、この話から利益を得ようとしているのです。

Birth Certificate Bonds — TreasuryDirect

最後に、ニューヨーク市税務審判所への提出書類(アーカイブはこちら)によりますと、TikTokの動画に映っている出生証明書にその名が刻まれているAmerican Bank Note Companyは、1995年にAmerican Banknote Corporationに合併された印刷・彫刻会社でした。

同社のウェブサイトにある声明(アーカイブはこちら)によりますと、同社の前身の一つが1795年に始まったばかりのアメリカ政府のためにドル紙幣を印刷したのは事実です。しかしながら、1877年に米国製版印刷局(U.S. Bureau of Engraving and Printing)が米国の現金供給を一手に引き受けるようになって以来、民間企業が米国の通貨を印刷することは出来なくなりました(アーカイブはこちら)。

American Banknote Corporationの運用マネージャーであるDan Reed氏は、2024年2月8日にLead Stories宛の電子メールで次のように述べています。彼は以下の様に書いています:

当社は信頼性の高い印刷会社であり、出自証明書や出生証明書など様々なものを製造してきました。しかしながら、出生証明書が国家通貨のような価値を持つということについてはよく知りません。

Fact Check: US Birth Certificates Are NOT Bonds Worth Billions Of Dollars | Lead Stories

Lead Storiesは、裁判番号が現金に使えるという同様の《sovereign citizen》の主張を、こちらで論破しています。


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