ワクチン接種を受けた10代の若者100万人あたり10万件の《severe》な副作用の大部分は、致命的・永続的なものではなく、痛み、発熱、吐き気、頭痛です。

➡前提として知っておいて頂きたいことの補足:

  • タイトルで《severe》と敢えて訳していないのは、ワザとです。

  • 米国CDCやFDAが作成しているデータチャートにおいて使用される《severe》は日常語での意味とは異なっており、それを誤読したand/or悪用したのが今回の問題の原因です。

  • 以下でもわざと《severe》を訳していませんのでご理解下さい。

2023年9月の米国CDCの報告書のデータによりますと、mRNA COVID-19ワクチンは「10代の若者」に100万回接種される毎に「10万~20万件の《severe》な副作用を引き起こしている」のでしょうか?はい、これはデータに表示されたラベルですが、(日常語とは違う意味で使われていますので)誤解を招く言い回しで、ワクチンの痛みや痛みを実際よりも怖く感じさせています。米国FDAの《severe》な副作用の定義は、一般人の理解とは異なっているようです。ある感染症の専門家はLead Storiesに、米国FDAが評価する《severe》な副作用は「重篤で持続的な健康被害を意味するものではありません」と語っています。CDCの予防接種安全対策室は、Pfizer-BioNTech社のmRNA COVID-19ワクチンの接種を受けた12歳から17歳の人々のうち、接種後に医師の診察を受けたのは1%未満であったと述べています。

この主張は、2023年9月13日、作家で元ニューヨーク・タイムズ記者のAlex Berensonが、かつてTwitterとして知られていたSNS「X」で公開した投稿(アーカイブはこちら)に掲載されました。

投稿のキャプションには以下のように書かれています:

再び@CDCgovのデータから:
10代の若者に対する100万本のmRNA COVID-19 ワクチン接種により、以下を防ぐことが出来る。
0-1人のCOVID-19による死亡
そして10万-20万の重篤な副作用を引き起こす。
はい、その通り。

XユーザーのAlex Berensonさん: 「Again, from @CDCgov’s OWN data: 1 million mRNA Covid shots for teens will prevent 0-1 Covid deaths and CAUSE 100,000-200,000 severe side effects. Yes, you read that right. https://t.co/GXpgIw3DvC」 / X (twitter.com)

執筆時のツイッターでは次のように投稿されていました:

(出典:2023/09/21 木曜日 15:07:59 UTCに取得されたTwitterのスクリーンショット)

SNSへの投稿でBerensonが報告した情報は、ACIP(予防接種実施諮問委員会)の2023年9月12日の会合で発表された「ワクチンに関するエビデンスと推奨の枠組み:2023年-2024年(一価、XBB含有)COVID-19ワクチン」と題するスライドによるプレゼンテーション(アーカイブはこちら)から得られたものです。ACIPは米国におけるワクチンの使用に関する勧告を作成しています。今回の会議では、ACIPは2023年秋のCOVID-19ワクチンの更新を承認し、CDCはこれを受け入れました(アーカイブはこちら)。

ネブラスカ大学医療センター感染症科のJames Lawler博士は2023年9月22日、Lead Storiesの電子メールに、Berensonの投稿にある点までは同意すると述べています。同氏は次のように語っています;

Berenson は、mRNA COVID-19ワクチンを接種した被験者とプラセボを接種した被験者とでは、Grade 3反応のリスクが10%強増加するとして、私と同じように数字を解釈しているようです。残念ながら、我々の分析における類似性はここで終わっています。何故なら、Berensonは、これらのデータの意味に関して聴衆を意図的にミスリードし、リスクとベネフィットのバランスにどのように適合するかという重要な文脈を意図的に除外しているからです。

Fact Check: Vast Majority of 100K 'Severe' Side Effects Per 1M Vaxed Teens NOT Deadly/Permanent -- Soreness, Fever, Nausea, Headache | Lead Stories

FDAはGrade 3の反応を《severe》と定義していますが、これがBerensonの言う「《severe》な副作用」です。

Lawler氏によりますと、ランダムハウスから出版された著者であるBerensonは、ワクチンに対する恐怖と疑念を植え付ける明確な意図をもって、《severe》という用語を使っているとのことです。続けて彼は述べました:

適切な説明がなければ、人々がどのように不安を抱くかは容易に理解出来るでしょう。FDAと業界が「《severe》な有害事象」をどのように定義しているかを見ることは重要です。《severe》な有害事象というと聞こえがとても悪いですが、これは単に軽い炎症以上の反応を定義したものです。それは、その人が急性医療を受ける必要があることを示すものではありません。入院またはERへの受診がGrade 4の有害事象を定義するものです。

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FDAはGrade 4の反応を「生命を脅かす可能性のある事象」と定義しています。グレード5は死亡です。これらのレベルの反応は極めて稀です。CDCが発表したスライド・プレゼンテーションのデータによりますと、Moderna社製のmRNA COVID-19ワクチンの最初の臨床試験参加者のうち、Grade4の反応を示したのは0.1%未満でした。

Lawler氏によりますと、Berensonの投稿で挙げられている反応は殆ど全てGrade 3であるとのことです。定義上は《severe》ですが、「重篤な、又は永続的な健康被害はありません」とLawler氏は付け加えました。彼は次のように述べています:

Grade 3には、注射部位の4インチ以上の腫れや発赤、処方された鎮痛剤の服用、安静時の不快感といった幅広い症状が含まれます。全身的な反応としては、102度以上の発熱、心拍数や血圧の上昇、頭痛、疲労感、日常生活に支障をきたす筋肉痛等があります。

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Lawler氏は、《severe》な副作用と見做されるものを彼自身が経験したことを語ってくれました:

mRNAワクチンの2回目の接種を受けた時のことですが、軽い頭痛と疲労感がありましたので、 いつもはしないことですが、夕方の5時か6時に2時間ほど昼寝をしました。翌朝にはすっかり元気になりましたが、これは通常の日常生活に支障をきたしたため、厳密にはGrade3の事象にカウントされるでしょう。

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米国CDC

米国CDCは、2020年後半にmRNA COVID-19ワクチンが使用可能になって以来、同様の安全性数値を観測しています。2023年9月22日、予防接種安全対策室からの電子メールには、次のように書かれています(強調部分は彼らによるものです):

Pfizer-BioNTech社のブースター接種用mRNA COVID-19ワクチンを12歳から17歳の人々に280万回接種した後に観察されたことは、ワクチン接種後に医師の診察を受けたのは1%未満であったということです。詳細はこのリンクを参照: 12~17歳におけるCOVID-19ワクチン・ブースター接種の安全性モニタリング--米国、2021年12月9日~2022年2月20日|MMWR (cdc.gov)

17歳の890万人以上が1次シリーズのmRNA COVID-19ワクチン接種を受けた後も同様でした: ワクチン接種後に医師の診察を受けたのは同様に1%未満
です。 12~17歳の青少年におけるCOVID-19ワクチンの安全性--米国、2020年12月14日~2021年7月16日|MMWR(cdc.gov)

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その他の利点

CDCのプレゼンテーションのスライド65は、BerensonのSNS投稿で紹介された2枚のうちの1枚ですが、Lawler氏はこのスライドを単独で見ると、特に誤解を招きやすいと感じると指摘されました。そのスライドは以下の通りです:

(出典:2023/09/25 月曜日に発表されたCDCスライド65枚目)

Lawler氏は、このスライドで強調されている情報を「重要な点」として挙げ、Berensonは「10代の若者のワクチン接種を追加しても、100万人のワクチン接種に対して1人の死亡と100人未満の入院しか防げない」と指摘しているけれども、Lawler氏によりますと、そのメリットはもっと広範なものだということです:

議論されていないのは、ワクチンによって予防可能となるロングCOVIDとCOVID-19感染後の健康影響の大きな犠牲についてです。CDCの3ヶ月以上続く症状という非常に限定的な定義によりますと、青少年または10代の若者(12~17歳)の約2%がロングCOVIDを経験しており、ほぼ1%が現在もロングCOVIDを経験しています。アメリカの10代の若者(12~17歳)の2%は、ほぼ3ヶ月以上COVID-19感染後症状を経験したことがある54万人に相当します。ロングCOVIDは、体力やパフォーマンス、睡眠、認知機能や集中力、社会的交流に重大な影響を及ぼす可能性があります。ロングCOVIDを予防するワクチンの有効性を調べた複数の研究の平均に基づきますと、ワクチン接種によってロングCOVIDのリスクを40%低減する可能性があります。これは、ワクチン接種によってロングCOVIDを予防することが出来た10代の若者20万人以上に相当します。10代の若者や保護者に、1日だけの不快な症状と、3カ月以上続くCOVID-19感染による衰弱の可能性のどちらを選ぶかと尋ねたら、答えは簡単だと思います。

上記のリスク・ベネフィットの計算では、ワクチン接種が家庭や地域社会での感染を予防する効果については触れていません。ワクチン接種を受けていない子供や10代の若者は、家庭内や地域社会全体でCOVID-19の二次感染を起こす割合が高くなります。これにより、重症感染や死亡のリスクが最も高い高齢者やその他の人々への感染リスクが大幅に高まります。

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Lead Storiesへの電子メールでの回答の中で、CDCは、2023年秋にCOVID-19ワクチンを接種することの是非について、プレゼンテーションのスライド70枚目がより明確に示していると述べています:

(出典:2023/09/25 UTCに発表されたCDCのスライド70枚目より)

Lead Storiesへのメールの最後に、Lawler氏は次のように付け加えています:

ワクチンや薬にリスクが全くないものはありません。しかしながら、COVID-19ワクチンに関するデータは明確で、ベネフィットの方の圧勝です。何十億回接種しても、本当に懸念される副作用の発生率は極めて低い安全性の記録を持っています。また、COVID-19の蔓延を抑え、あらゆる年齢層におけるCOVID-19の結果を軽減する上で、多大な影響を及ぼしています。ワクチンに対する恐怖を煽ることは、人々にSNSや 政治的得点をもたらしますが、結果として現実の人々に実害をもたらすのです。

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更に詳しく

その他のLead Storiesによるワクチンに関する主張のファクトチェックは、こちらをご覧下さい。


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