太陽の画像は「ブラックホール」ではなく、「コロナホール」であり、電波信号への影響は軽微と予測されています。

Xに掲載された太陽の画像は、2つのブラックホールが地球に直接向いているのでしょうか?いいえ、そうではありません。画像の暗い部分は、GOES-16衛星の太陽紫外線撮像装置で見えるようになったコロナホールで、「ブラックホール」ではありません。コロナホールは地磁気嵐を発生させる可能性があり、その深刻度は1~5段階に評価されます。この画像が撮影された時点の宇宙天気は、全くなしから軽微と評価され、スケールの最も低い1でした。

この警鐘を鳴らす主張は、2024年1月23日にX(旧ツイッター)の@QTHESTORMによる投稿(アーカイブはこちら)の中に登場しました。その投稿には次のようなキャプションが付けられていました:🚦:

🚨🚨警報:太陽にある2つの巨大ブラックホールが今、直接地球に向いている !
TICK TOCK ...

XユーザーのQ ™️さん: 「🚨🚨🚨 ALERT: 2 GIGANTIC BLACK HOLES ON THE SUN ARE NOW POINTED DIRECTLY AT EARTH !!! TICK TOCK ... https://t.co/vKNaZxNVgJ」 / X (twitter.com)

記事執筆時のXでの投稿は以下のようなものでした:

(出典:2024/01/25 木曜日 16:48:34 UTCに取得されたXのスクリーンショット)

Lead Storiesは、NASA太陽物理学部門の太陽力学観測所のプロジェクト・サイエンティストであるDean Pesnell氏に、この画像が何を示しているのかを問い合わせてみました。彼は2024年1月25日に電子メールにて、暗い斑点はコロナホールであると特定しましたと述べています:

この投稿の意味するところは、何か悪いことが起ころうとしているということです。それは真実ではありません。私達はこの磁気圏の反応を研究し、電子が地球の遥か上空でどのように加速され、地球の上層大気によって止められるかを研究しています。https://www.swpc.noaa.gov、NOAAの宇宙天気予報はいずれも、低レベルの活動が存在し、24時間続くと予測しています。

Fact Check: Sun Image Does NOT Show 'Black Holes' -- They Are Coronal Holes, With Minor Impact To Radio Signals Predicted | Lead Stories

写真の暗い点はブラックホールではなく、コロナホールであり、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は次のように説明しています:

コロナホールは、極紫外線(EUV)や軟X線の太陽画像では、太陽コロナ内の暗い領域として見えます。コロナホールが暗く見えるのは、周囲のプラズマよりも温度が低く、密度が低いためであり、磁場が一極性に開いているためです。この開いた磁力線構造により、太陽風は宇宙空間に逃げやすくなり、その結果、比較的速い太陽風の流れが生じ、惑星間空間の構造解析の文脈では、しばしば高速ストリームと呼ばれています。

Coronal Holes | NOAA / NWS Space Weather Prediction Center

Xの投稿に写っている画像には、左側に白い文字で以下のように書かれたタイムスタンプ情報があります:

GOES-16 SUVI コンポジット 195 オングストローム 2024-01-23 22:56:34

X (twitter.com)

GOESは地理静止運用環境衛星(Geostationary Operational Environmental Satellites)の略で、SUVIは太陽紫外線撮像装置(Solar Ultraviolet Imager)のことです。宇宙望遠鏡は、地球の大気を透過することが出来ない紫外線光子を拾うことが出来ます。NOAAには宇宙天気予報センターがあり、太陽のライブ画像と現在の宇宙天気の状況を見ることが出来ます。Xの投稿に掲載されている画像は、このswpc.noaa.govのウェブサイトが元になっているようですが、時計回りに90度回転しています。

( 出典:2024/01/25 木曜日 22:47:52 UTCに取得されたXとarchive.orgのスクリーンショットをLead Storiesの方で合成した画像)

上のLead Storiesの合成画像は、Xに投稿された2024-01-23 22:56:34の太陽の画像と、約17時間前の2024-01-23 05:40:32にアーカイブされた画像との比較を示しています。同じ時間に撮影されたものではありませんが、コロナホールの大まかな大きさと位置はかなり一致しています。このサイトには、94から304オングストロームまでの太陽の紫外線波長の6つの画像(ここには写っていない)が掲載されています。白い文字で記したように、問題の太陽画像は195オングストロームの波長の紫外線を示しており、これはコロナホールが最もコントラストを持って現れる波長です。

下の画像は、2024年1月23日のアーカイブページの詳細で、24時間の観測された最大値、最新の観測状況、2日前の予測を含みます。別のページでは、スケールシステムについて説明しています。R、S、Gは電波ブラックアウト、太陽放射嵐、地磁気嵐を表します。緑色の四角は、人々に影響を与えるような宇宙天気はないことを示しています。R1と書かれた黄色い四角は、高周波(HF)無線通信への軽微な影響を示しています:

高周波無線: HF帯無線: 日光側でHF帯無線通信に弱いまたは軽微な劣化があり、時折無線が途切れます。

ナビゲーション:低周波航法信号が短時間劣化します。

NOAA Space Weather Scales | NOAA / NWS Space Weather Prediction Center


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