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「本当に生きる」を考えた時、自分の授者を生かして作品を作りたいと思った。

(取材=伊藤聖夏 @seika777 映像・編集=中山駿 @nk_shun

日本オリジナルミュージカル作品のクリエーターを紹介するJOMTP(ジョムティーピー)。[#1 ] は2018年12月22日に初演を迎えるミュージカル「ZOO」のライター(作詞・作曲・脚本)菅野智樹さんです。

菅野智樹

作曲・作詞・脚本
1988年生まれ。静岡県出身。玉川芸術学部パフォーミングアーツ ピアノ専攻。高校時代にオリジナル曲の弾き語りや幅広いジャンルの音楽の伴奏を行う。大学でETC ( English Theatre Company ) でバックバンドとして参加したことがミュージカルとの出会いとなり、作品を書き始める。ミュージカルの伴奏や作曲などの活動を続ける中、2017年に自身が脚本、作曲、プロデュース全般を手がけるミュージカル「去年の夏」を上演。それ以降も作品を書き続けている。プライベートでは、2015年にクリスチャンになり、それ以降「神の存在」は作品制作はもちろん人生の大きなテーマとなっている。

堂本:菅野さんが大切にしている言葉って何ですか?

菅野:それは「本当に生きる」ということですね。

堂本:「本当に生きる」。

菅野:本当に生きてないって感じる時があったんですよね。みんなあると思うんです。例えば学校の授業中に「あれ、こんなこと別にしたいわけじゃないな」とか。授業中によく曲を考えたり、詞を考えたり妄想していました。そんな時に「試験の解答を書きたいんじゃなくて、今思いついた曲、歌詞を書きたいんだ」ってなるんです。

堂本:「その瞬間を生きる」というのとはちょっと違うんですか?

菅野:限りなく近くて少し違いますね。

堂本:そうなんですね。

菅野:音楽をやる上で親の反対もあったけど、今やりたいものは今しか感じてないかもしれないし、今しか表現できないかもしれない。それが「本当に生きる」ってことな気がします。それも全て神様の導きから来るものなんです。

堂本:菅野さんの作品を観ていると、クリスチャンの影響が大きいのかなと感じます。

菅野:2015年くらいにクリスチャンになったことが大きかったですね。以前から神様という存在を求めているところがあり、突き詰めて考え続けるとそこに答えが全てあるのかなと思います。

堂本:全ての答えがそこにたどり着くわけですね。

菅野:そうですね。なぜ生きてるかを考え続けると、なぜ生かされてるのかという考えにたどり着いて。何かが動いていることも全部、人を超えたもの(神)が作ってくださったものだと思うんです。その限られた中で、命を燃やすのが宿命ですね。

堂本:今後作品を作っていく上で、そういった考えは大事にしていきたいところですか?

菅野:そうですね。クリスチャンの教えを直接的ではなく、感謝とか喜びという形で作品に反映していくと思います。

堂本:ちょっと難しい質問なのですが、ご自身を5つの単語で表すならどんな単語になりますか?

菅野:まずは希望ですね。あとは、確信、成長、回帰、感謝ですかね。愛はまだ足りてないかな。

堂本:最初の希望から。これは自分に希望があるということですか?それとも希望を抱いてるということでですか?

菅野:人生の中には希望があるという感じですね。それと同じくらい闇もあるんでしょうね。人間の性質とかを見ると、闇の方が深いと感じます。それでも希望を見出し続けることが人間の性で。それはすごいことだと思います。

堂本:確信は?

菅野:前向きなんですよね。最後は神様の元に帰って、人生の役目を全うできると確信してるんです。

堂本:続いて、成長は?

菅野:成長し続けないと堕落しちゃうのが人間なので。その成長の先を希望に見出していますね。

堂本:回帰という言葉はあまり想像できないのですが、これはどういう意味ですか?

菅野:さっきの内容とかぶるのですが、神様の元に戻るというところですね。無邪気な赤ん坊を見ると思います。この子には無条件の喜びがあるなと。作品で子役を起用するのも、そういった目的というか理由があります。

堂本:そこを確信してるから恐るものがないという感覚なんですかね。

菅野:その通りですね。

堂本:では最後の感謝は?

菅野:全てに対しての感謝ですね。まずは酸素を吸えることが感謝ですよ。

堂本:作品を通して人に伝えたいことは何ですか?

菅野:一番は希望と喜びですね。作品を通して、「生きていることは喜びなんだ」ということを観る方にも自分自身にも伝えたいという感じですね。

堂本:なるほど。

菅野:あとは授者を活かすことですね。これは重要です。

堂本:授者?

菅野:授かったものです。それぞれの才能や素質を生かすことです。僕はミュージカルを作って授者を発揮していきたいですね。それがミッションです。

堂本:ありがとうございます。ご自身の経験や思ってきたことが作品にも反映されていますよね。

菅野:そうですね。自分の「本当に生きていなかった」時の経験だったり、悲しい思いをした時の経験がそのまま作品に反映されています。作品の登場人物は自分の分身みたいなところがあり、多かれ少なかれ誰かしらにも受け入れられる性質を含んでいるのだと思います。

(取材・文=堂本麻夏 撮影=中山駿 @nk_shun

ミュージカル「Zoo」

作詞・作曲・脚本 菅野智樹
人間以上に「人間らしい」絶滅危惧種になった動物たちが仕事を求めて動物園へやってくる。生まれながらにアイドルのパンダ「欲しいものは何でも手に入った。でもなんでお母さん….」。百獣の王のライオン「俺は昔はライオンキング!今は無職の元…ライオンキング」。鼻が長い象、首が長いキリン「でも何の役にもたたないんだ。だから、目立たないように生きてきた」。旧約聖書「創世記」に登場する「ノアの方舟」、大洪水で世界が滅びゆく中、神に導かれ船に乗れる者とそうでない者がいる。この動物園でも、神に導かれ生き残る者とそうでない者がいる。その差はいったい。

(イラスト=kuru)