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騎手娘 第2話「第一歩」

第2話「第一歩」 

図書館で競馬について調べてから数日後、美月はいつもとは違う気持ちで目覚めた。窓の外はまだ薄暗く、夜明け前の静寂が部屋を包んでいた。ベッドから起き上がり、しばらくの間、天井を見つめていた。いつの間にか、美月の頭の中は競馬のことでほとんどが占められるようになっていた。

「私も何か始めたい」

その思いは、彼女を行動に駆り立てた。朝食を済ませた後、美月は再びパソコンを開いて、地元の競馬学校について調べ始めた。サイトには「厳しい訓練」と「高い競争率」の文字が並んでいたが、それでも彼女の心は揺らがなかった。

「大変そうだけど、やってみたい」

学校では、いつもと違う美月の様子に、友人たちは驚きを隠せない様子だった。特に親友のさくらは、何かを察したように彼女に近づき、心配そうに声をかけた。

「美月、最近どうしたの?何かあったの?」

美月は、さくらに競馬学校への興味を打ち明けた。初めは驚いたさくらだったが、すぐに笑顔で応援の言葉を送ってくれた。
「美月が馬に乗ってるなんて想像もつかないけど、面白そう!応援するよ!」

放課後、美月は一人で地元の競馬場へと足を運んだ。テレビで見る競馬とはまた違う、生のレースを自分の目で見てみたいという思いが、彼女をそこへと導いた。競馬場に着くと、その迫力に圧倒される。
レースが始まると、彼女は最前列に座り、目を輝かせて馬たちを見つめた。駆け抜ける馬たちの速さ、騎手たちの技術。その全てが、彼女の心を強く打った。

「すごい…こんなにも力強くて、美しいなんて…」

その日のレースには女性騎手はいなかったが、美月の心は競馬の魅力に完全に引き込まれていた。帰り道、彼女の心は決まっていた。競馬学校への応募をするという決意だ。

家に帰り、両親にその思いを伝えると、彼らは驚き、そして心配したが、美月の目に宿る真剣な輝きを見て、理解を示してくれた。

「分かったわ、美月。でも、本当に大変な世界よ。覚悟はいいの?」
「うん、覚悟はできてる。私、本気だから」

その夜、美月は部屋で競馬学校の応募書類に目を通していた。夢への第一歩を踏み出すための、大切な書類。彼女は深呼吸をして、ペンを手に取った。これが、彼女の新しい挑戦の始まりだった。

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