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白衣性恋愛症候群RE:Therapy 感想

steamのオータムセールで半額になっていたのを機に、前々からいつかやりたいと思っていた白衣性恋愛症候群をプレイした。続編であるところの白衣性愛情依存症は既にプレイ済みで、自身のゲーム体験としては続編から本作に戻ってくるような形となった。両作は世界観に繋がりこそあるものの基本的に話としては独立している為、発売順通りにプレイしなくとも大筋の理解に大して支障は無かった。ただ愛情依存症は、舞台である帝都看護がなぎさ先輩の出身校だったり、癒しの手絡みの話が登場したりと、恋愛症候群を先にプレイしていると少しニヤニヤできるファンサービス的場面があるのはそうである。僕はうっかり愛情依存症からプレイしてしまったので、それらの伏線(?)を本来とは逆のおかしな時系列で回収することになってしまった(それはそれで面白くはあった)。


〇医療モノとしてのリアリティ

さて、本題である恋愛症候群についてだが、本作の最も大きな特徴はドキュメンタリーさながらの医療現場のリアルな描写にあると思う。本作では普段は患者としての立場からしか見ることのない看護師の業務の裏側を、新人看護師という比較的プレイヤーに近しい視点から垣間見ることができる。ステルベン(患者死亡)の場面や、看護師に八つ当たりしてストレス発散するしょうもない患者(貴女だよ堺さん)への対応からくる苦悩には、とても作り物とは思えないような臨場感があった。それもそのはずで、ライターである円まどか氏は実際に医療従事者として現場で働いた経験がある方だということだ。本作ではライター氏の実際の経験に基づくリアルなエピソードや、看護師という仕事ならではの喜びや葛藤が惜しみなく表現されていたように思う。

また、看護師特有の要素だけでなく、全ての働く人に共通する「仕事あるある」のようなエピソードもふんだんに盛り込まれている。特に主任と山之内さんの上司二人組の言葉には妙なリアリティと含蓄があり、プレイ中にうっかり嫌な記憶を思い出してしまった人も多いのではないだろうか。因みに僕も主任さんのお説教から昔の上司の顔を連想してしまい暗澹たる気分になったりした。

本作はこういった毒の部分も含めて看護現場のありのままを表現しており、そういった意味で医療モノ、ひいては仕事モノとしてかなり本格志向な作品に仕上がっていると感じた。それを少女漫画チックなカワイイ絵柄でコーティングして食べやすくした、みたいな。僕はこの手の「ビジュアルは綺麗だが中身はがっつり本格志向」みたいなゲームに食指を伸ばしがちらしく、好んでプレイしているような気がする(例えばArcaea然り、シャドウバース然り、アトリエ然り)。因みに前述した続編の白衣性愛情依存症ではキツい描写は大分マイルドになっている印象で、毒がある作品が嫌いな人には愛情依存症の方をおススメしたいところ。


〇オカルト要素の非調和

本作の気になった点を挙げるなら、癒しの手関連のオカルト要素の扱いだ。本作が医療モノとして本格志向の作品であったことは前述の通りだが、そのリアル寄りの世界観とオカルト要素の非調和が個人的にはかなり気になった。患者の命を救おうと必死になっている描写がある一方で、癒しの手などというトンデモ要素がしれっと別の患者を救っている。読者側からすると危機感も何もあったものではないのである。僕は本作の特色は現実に根差した医療の描写にあると思っているので、臨場感を阻害しかねないオカルト要素など一切合切まとめて排除してしまうくらいで丁度いいとさえ思っている。オカルト要素を排除する事によってノベルゲーム的な伏線やオチに相当する部分が無くなってしまう問題など、この世界観に癒しの手が存在する違和感に比べればあまりに些細な問題と言えよう。全編山之内さんエンドや堺さんエンドのような看護師としての物語を描けばそれでよろしい。


〇選択肢とルート分岐

これは気になった点という程ではないのだが、選択肢による分岐はかなり煩雑なように思えた。本作はそもそも選択肢の数自体が多く、エンディングのパターンも多いので、狙ったエンドに行くのはそこそこ骨が折れる。正直に白状すると、なぎさ先輩のルートに中々入れずに痺れを切らした僕は途中で自力攻略を諦めて誠也の部屋で選択肢をカンニングしてしまった。調べてみて分かったのだが、どうもなぎさ先輩のルートに入る為には、安直になぎさ先輩を優遇するような選択肢ばかりを選び続けてもダメらしい。時には敢えて蔑ろにするような選択肢を選ぶことによって、本人の不安や嫉妬を煽る必要があったのだ。いや、わかるかw。

共通5.5での選択肢。ここで敢えて山之内さんの肩を持つことがフラグになるらしい。

さらにルートに入った後、グッドエンディングに行く為には1/2の選択肢を5回全て正解しなけらばならない(単純な確率論では1/32)。

印象的なbutを含む多彩なエンディングは本作の魅力の1つだと思うので一概には言えないのだが、分岐が複雑すぎると自分みたいな根性無しがすぐ攻略サイトを見てしまうので、バランスの取り方が難しい。エンドや選択肢の数は据え置いたうえで、もう少し選択の結果を分かりやすく物語に反映するのがいいんかな。


〇終わりに

そんなわけで白衣性恋愛症候群、大変楽しゅうございました。ただでさえ貴重な百合ゲームに+@の面白さがある作品はそうそうないので、プレイ後の満足度は高かった。工画堂スタジオの作品は好きなので、まだ手を出していない新作の「夢現リマスター」は機を見てそのうちプレイしたいと思っている(というか既に買ってあるので、こんな文章書いてる間にも始められる状態だったりする)。どんなに遅くとも今年中には取り掛かりたいね。


〇おまけ ヒロインランキング

完全主観によるヒロインランキング。
不等号の数は壁の厚さを表している。≒は=以上>未満。


なぎさ先輩>>あみ>まゆき≒主任≒山之内さん>沢井>堺さん


今までヤンデレというジャンルにあまり関心は無かったのだが、なぎさ先輩は個人的にかなりアリだった。旧知の間柄で仲もいいのに、敢えて名字で沢井呼びするのがいいね。沢井が好きすぎて自宅に監禁して喉を焼いちゃってもそれは愛ゆえの所業であり、致し方ないと思うんだ。


ここまでご覧いただき有難うございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
























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