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ありがとうみかんいろ

先週、13年間乗り続けてきたバイクを手放した。
ヤマハのSRV250 ルネッサというバイク。

ずっと乗り続けていきたかったのだけれど、フロント周りを中心にあらゆる部品が劣化。

バイク屋さんに修理を頼もうにも年式が古すぎてフロントブレーキのマスターシリンダー本体などヤマハの絶版部品が多く範囲に限界があった。

ある程度延命は出来てもかなり高額になったり、やっても部品供給の不安は拭いきれない状況で、色々な面での不安から諦めた。
命を載せられないと思ってしまった。

分かってはいたけど売却価格はかなり少額で、長年乗ってきた身としては正直切なかったなぁ。
なのでよかったら思い出‥というより身の上話を聞いていっていただけると幸いです。

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13年前。

インターンで在学中から働いていた会社より内定切りにあっていきなりニート。つい先月まで一緒に学校で昼飯を食っていた仲間が日中仕事をしている中引きこもりになった。

暇すぎて友人に借りた"ジャジャ"という漫画にハマって既発巻を全て読破。
「カフェレーサーに乗りたい!」と有り余る時間とインターンで貯めた金を使い中型免許を取得。
なんだか生きる活力が湧いてその後まもなく就職した。

とある駐車場に止まっていたルネッサを見てそのスタイルに一目惚れ。
すぐにグーバイクで調べ、あまりの在庫の少なさに驚愕しながら、片道1時間半かけて隣県のバイク屋に赴き初任給を頭金にぶち込んで即決購入。

「お前が就職したらバンドをやろう」
前から声を掛けてもらっていた歌声と性格がやたらいい奴とバンドも組めた。
これから全てが前向きで楽しいことが始まりそうな予感がしていた。

‥しかし入った職場の雰囲気は最初から最悪で、俺の役割はそいつらの不平不満の矛先みたいなものだった。

なのではっきりいって俺は先輩ほぼ全員にいじめられていたので(休憩時間含む)、仕事の日はバイク通勤している間だけが心休まる時間だった。
自我が崩れそうなとき、大声出して走ってもルネッサのVツインのエンジン音が掻き消してくれるのだ。だよね?

俺にはバイクとバンドがあれば他はどうでもよかった。

昔の住居周辺に駐車場が無さすぎ、停めてたコンテナ
月額1.5万円弱 更新料別 都心ではありません
高すぎなんだけど


その頃ルネッサを購入したYSPの店主が脚立から落っこちて腰を強打。
「もうこの身体ではバイクの面倒は見られない」と身辺整理をはじめあっという間にお店を閉めた。親切な店主だったのだが‥困った時見てもらえるバイク屋がなくなり途方に暮れた。
今でも元気で生きているのかなぁ‥

それから自分で出来る範囲のメンテはするようになって、より愛着が湧いた気がする。バイク乗りはみんな同じ気持ちでしょうか?
致命的なトラブルはただの一度もなかった。
高校の時地元のクソバイク屋で買った欠陥バイクと大違い。

安心してそこそこの距離を走ることが出来るので、関東圏や、新潟、静岡などはよく行った。昔はこの辺無料キャンプ場が多くて貧乏人の俺は助かった。
ツーリング先では色んな人との出会いもあって、ルネッサは単なる移動手段ではなく、いつも色んな景色を見せてくれた。

千葉で買える同じみかんカラーのてるてるぼうず

それから月日が経ち、組んでいたバンドは解散。仕事も他にやりたいことができ別の会社への転職を決めた。
最終勤務日が近づく中、休みの日に前述の先輩のうちの一人に挨拶にいった。気が進まなかったが、最後のけじめとしてだ。

久々に会う先輩は以前となんだか雰囲気が違うようだった。態度が柔らかい感じというか。

俺は以前からこの先輩と敵対しているグループの一派にこっそり属していると周りから噂されていた。実際は何度か飲みに行っただけで俺はどこの派閥にもいなかったんだけど。
それもあって先輩は今後俺が仕事上で何か邪魔してくることはなくなったと思っているからこういう雰囲気なのかなと思った。
少なくとも過去の出来事を引け目に感じるような人では絶対にない。

挨拶と感謝の意を伝え、ひとしきり世間話をしてその場をあとにしようとしたとき。

先輩「表のみかんいろのはあんたが入社した頃から乗ってるバイクだよね?」
俺「そうです」
今日乗ってきたルネッサのことだった。
覚えてたんだ。

先輩「大事に乗ってるんだね。バイクは詳しくないけど、こまめに手を入れているのは私にもわかる。これだけは言わせて欲しいんだけど、なんだかあのバイクを見て、きっとあんたのこれからの人生もうまくいく気がする。」

俺「なぜですか?」
適当なことを言ってるのかと思い笑みを作りながらもトゲのある返しをしてしまう。

先輩「あれはこの会社に入ってすぐ買ったバイクだったよね?ある意味あんたの"初心"でもあるわけじゃない。それをこれだけ長い間ずっと大切にするってこと、なかなか出来るものじゃないから。私も昔はそういうのあったけど、とっくに壊してしまった。」

言葉が出なくなってしまった。
クソ、なんでこんな奴に俺は感極まってんだ。
別に過去のことを謝られたわけでもないのに。今まで散々酷い目に合わされてきたじゃないか。

先輩「あんたが会社で◯◯や◯◯を頑張ってやってきたこととか、実はずっと見ていた。転職先の会社も聞くところによると良くない噂はあるよね。でもあんたは大丈夫だと私は思う。応援してるよ」

俺が言われて喜ぶことを雑に話してるだけなんだ、とまだ捻くれたことを心の片隅に考えながらも何故だか涙がでてしまい、とまらなかった。
貰った言葉に対してお礼を言うことだけが精一杯だった。

だけど、先輩の言葉でとにかく前に走っていける気はした。

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俺の青春を共に走り抜けてくれた相棒、みかんいろのヤマハ SRV250ルネッサです。

形としては俺の前から無くなってしまうけれど、これまで一緒に走った道は忘れません。駄文にお付き合いくださりありがとうございました。
環境、経済的に許されるなら、まだまだお前に乗りたかったよ。

引渡し前日のルネッサ

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