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Haze - NOIZE


ミスiD出身の香椎かてぃ改めKATYがボーカル/ギターを担当するZ世代バンドHazeの一体何が凄いの?って、それは一昨年の2021年にMVと同時リリースされた”煙霧”に集約されてると言っても決して過言じゃあない。

というのも、それこそインディーズ時代の赤い公園がリリースした黒盤こと『透明なのか黒なのか』の”透明”のアウトロを彷彿とさせる、オルタナ然とした空間表現を「ジャーンジャギジャーンジャギ」と奏でるギターメイクと緩いドラムのビート感、そしてMVもMVで冒頭のギターの手元のカットからヤニを吸って煙を吐くKATYのイキリ仕草、そのタイミングとショットが完璧過ぎるのと、とにかくギターの歪み方とかMVに映ってるロケーションとかモデルとして映える各メンバーの個性的なビジュアルとか、何から何まで在りし日の赤い公園をフラッシュバックさせた件について。正直この時点で、KATYを女王様とする馴れ合いコミックバンドなんかでは決してない、正真正銘のバンドとして活動していこうという明確な意志を感じ取ることができる。

このHazeの音楽性としては、ぶっきらぼうでありながらも倦怠感を内包した、そしてほんのり焼け焦げたKATYのパンキッシュな歌声と、香椎かてぃ時代に培ったダーティな遍歴から抽出された刹那的な歌詞を以って、「NOISE」の「S」をZOCの「Z」およびZ世代の「Z」にモジッたタイトルの「NOIZE」すなわち「ノイズ」に対する意識の高さを覗かせるオルタナティブなギターメイクと、その一方でキーボード担当のSUKUKによるJ-POPというよりも”ポスト・ポップ”的にアプローチする、俄然在りし日の赤い公園を彷彿とさせる甘味と毒味が闇鍋のごとくゴチャまぜになったサウンドスタイルは、各メンバーの個性と個性が絡み合ってバンドというフォーマットならではの相乗効果を生んでいる。

昨年のアニメ業界で大バズリした『ぼっち・ざ・ろっく!』といえば、引きこもりの陰キャである主人公の”ぼっちちゃん”こと後藤ひとりがギターを始めて結束バンドを結成する物語だ。その結束バンドと対極にあるコワモテ風のビジュアルとは裏腹に、このHazeも引きこもりを題材とした”引きこもりロック”を歌うぐらいには、言うなればリアル『ぼっち・ざ・ろっく!』を実演している結束バンドのライバル候補の一つで、それこそ四畳半の狭い部屋でパンキーなロックを演奏するMVも『ぼざろ』とのシンクロ率を高めている。そんな陰キャたちが古き良きジャパニーズ・パンクの反骨精神溢れるド直球のロックンロールを叫ぶ姿は、Hazeというバンドのユニークな創造性と将来的なポテンシャルの高さを裏付けている。

実はHazeの心臓部がKATYではなく、ベーシストのHANAである可能性を示唆すると同時に、このHazeがKATYのワンマンバンドではないことを証明する”ロリポッチュ”は、キーボードが奏でるバブルガムなティーンポップネスと、それこそtricotで言うところのヒロミ・ヒロヒロを想起させるHANAのエモい歌声をフィーチャーした曲で、兎にも角にも「最悪KATYがいなくてもなんとかなる」くらいの存在感を放つHANAの才能に魅了される請け合い。

メンバー全員が参加する冒頭のガヤガヤした雰囲気からして、否が応でも赤い公園の白盤こと『ランドリーで漂白を』をフラッシュバックさせる”ギャルガル”は、外に出れない引きこもりの陰キャが恋い焦がれる激しい夏を妄想する歌詞と『ぼっち・ざ・ろっく!』の9話「江ノ島エスカー」における後藤ひとりが奇しくもシンクロする、それこそ夏フェス(サマソニ)に映えること必須の陽キャッチーな常夏ロックチューン。そして、このミニアルバムのラストを飾る”死んだふりBABY”は、ゴリゴリのZ世代がいい意味で昭和っぽい(あやまんJAPANっぽい)ノリの曲を演奏するギャップに萌える。

決して「赤い公園の正統後継者が現れた」みたいな事は言わないが、それでもインディーズ時代の赤い公園の傑作で知られる白盤/黒盤と(MVの演出に至るまで)否が応でもシンクロする尖りまくったサウンドメイクは才能の塊でしかないし、だから余計な期待を寄せてしまうのも事実。それこそ、THE LAST ROCKSTARSみたいなクソダサバンドに代表されるように、男がしょうもないロックやってるのに対して、少なくとも日本では女の方がカッコいいロックンロールやってる事を、そのゆるふわな態度と楽曲の中身で示している。マジで結束バンドとともに今年のサマソニに出演させるべき逸材だと思う。

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