第0回開催しました!

8月25日に第0回ハラスメント防止について話す会(仮称)【Over40】を開催しました。
急な開催にも関わらず、11名の方にご参加いただき、ご参加いただいた方本当にありがとうございました。

第0回ということで参加者の募り方からして模索状態でしたが、ひとまずオンラインフォームでの申し込みとしてみました。
匿名性をどれくらい担保するかというところは今後の課題ではあると思いますが、今回は申込みではお名前と年齢とメールアドレス、あと任意でご職業を伺いました。
開催当日はズームの表示名自由、カメラオンオフはできればオンでお願いします(オフでも大丈夫です)という案内で、全て匿名にしようと思えばできるという設定でしたが、ほとんどの方がカメラオンでお名前も表示してご参加いただいていました。今回は40歳以上という括りで、ハラスメント防止について考えていることをいくつか項目ごとに話してもらうという場の設定だったので、結果的には完全に匿名よりもある程度話す方のバックグラウンドやパーソナリティがわかったので話も受け取りやすかったのではと思います。。今後テーマ設定次第では完全に全員が匿名という場もあるとそれはそれで可能性はあると思います。

参加していただいた方は40代から60代までの方で、40代の方が大半でした。60代の方は、40代の人たちがどう考えているのか知りたかった、ともおっしゃっていました。
参加の条件としては舞台芸術に従事している方、舞台芸術が好きな方としていて、作家、演出家、俳優、制作者、舞台スタッフ、トレーナー、稽古施設運営、ライター、観客、元医療関係者、などさまざまな立場の方が参加してくれました。
40代以上という設定にすることで、それぞれ環境は違えども昭和〜平成のハラスメント社会を経験しているという前提が共有できているのは、話をするにも聞くにもよかったと思います。被害の経験や加害の可能性についても共有があり、参加していただいた皆さん総じて40歳以上で話すという場についてはとてもポジティブに感じていただけたようでした。
今後もさまざまな集まり方の一つとして可能性を感じました。

話す会自体は一人ずつあらかじめお願いしていたお題についてお話しいただけることをお話しいただく。他の方はひたすら聞く、という進行でした。後半の方は前半の方の話を聞くことで気づきがあったというお話もしてくれました。
とにかく、1人が話し、それをひたすら聞くということを続けました。
その行為はある種の居心地を作ったと思います。
発言しなくてはいけないプレッシャー、発言したいけどタイミングが難しい、などというストレスが無かったのは良かったと思います。
ただ誰かの発言によって窮屈な気持ちになる人が居た場合の対処は今後考えるべきことではあると思います。
誰かの発言中に発言する必要はないという条件はとても良かったので、他の人の発言に対してのリアクションの手順を整理したいと思います。

お題は以下の五項目でした。

○ハラスメントが起きないために日頃気を付けていること
○自分がハラスメント加害をしないために気をつけていること
○おすすめの教材、講座、書籍
○過去にあった困った状況や現在困っていること
○今後どういった勉強会や取り組み、対策などがあると良いか

僕も入れて12名で予定の時間を15分ほどオーバーして2時間15分ほどでした。この構成でやるならば10名程度2時間というのが目安になったかなと思います。当日していただいたお話や、終わってからいただいたフィードバックからもいくつかシェアさせていただきます。


○年齢について

この世代で集まることで、お題に関わらずおのずと年齢が上がることについてのお話がありました。
・年齢が上がり、経験が増えるということは、加害の可能性を高めることなのだと気がついた。
・あくまで自分の一意見のつもりで言ったことが、「あの人が言ったから」という強制力や影響力を持ってしまう。
・自分が20代の時に40代は怖かった。いつの間にか自分も怖がられる側になっていた。
・この歳になると自分自身の存在が加害になるくらいのつもりで考えている。

○ハラスメント対策について

普段自分がいる環境でハラスメントが起きないように、自分が加害をしないように気をつけていることもさまざまお話いただきました。
それぞれの環境でのお話なので分かりにくいかもしれませんがご容赦ください。

・飲み会などで年齢が上の男性がいる場合は近くで飲むようにしてハラスメントが起こらないよう目を配る。
・自分が年上であったり権力的な立場にある時は今自分が発言すべき状況か一呼吸置いて考えてから発言する。
・稽古場は秘密の場所ではなく、常に開かれている。ここで起きていることは、いつ公開しても恥ずかしくないし、誰も傷つけないということを作り手みんなが認識することでハラスメントはガクッと減るんじゃないかと考えて稽古場の運営をしている。
・稽古場施設の利用者たちの環境がブラックボックスにならないよう利用者の方への日々の挨拶を欠かさないなど、風通しを作るようにしている。
・劇団でハラスメントガイドラインを設定しているが、そのことを特に対外的に発信はしていない。ハラスメント対策をしている、ハラスメント講座を受けたということなどを免罪符にはしたくない。
・稽古初日にハラスメントガイドラインについて共有する。
・とにかく人の話を聞く。
・稽古場でだれもが発言しやすい空気づくりを心がける。
・ワークショップの参加者や生徒など初めて会う相手は事前にできるだけ情報を集める。
・人の身体に触る仕事なので、事前に医学書を見せるなどして、理由の説明や、同意を必ずとる。
・軽口を言うときなどにも威圧的になっていないか気にするようにしている。
・年下に対してもいきなりタメ口では話さない。
・おまえという呼び方はしない。
・自分が年上の現場では、演出家が力が入ってしまい圧迫演出のようなことが起きた場合には、休憩を提案するなどしてハラスメント防止に努めている。
・今この瞬間の考えが正解ではないので、常にアップデートを心がけている。
・稽古場でだれも孤立しないよう相談役になれるよう心がけている。
・とにかく話を聞く。
・ハラスメントに興味を持って勉強を始めて一年位してから、自分が被害者でマイノリティだということに気がついて人生の見え方が変わった。そして自分の被害に気づくと同時に加害にも気づき、とてもショックだった。被害を学ぶだけではなく加害をしないために学ばなくてはいけないと思い学んでいる。
・現場が上手くいかない時に個々のやる気のせいなどにせず、個々の事情を聞きながら問題解決を目指す。
・安全な場であることをまず大事にすること。
・忙しい時に人の話を聞く余裕がなくなりがちなので、仕事を抱えすぎないようにしている。
・自分の意見を通したいだけなのか公演の成功を目指して発言しているのか気をつけるようにしている。
・個々の仕事上の役割を明示する。
・個々のできること、苦手なことなど事前に聞いておく。
・稽古場で何が起きているのか観察をし続けるようにしている。演出家が熱が入って緊張感が高まるなど。
・ハラスメント傾向のある人の現場には参加しないようにしている。
・ハラスメントガイドラインを何回も読み返す。読むたびに改めて納得することもある。
・20代の人とは日本語であっても意味することが自分とは違うこともあるので、よく観察し、今話されている言葉の意味を理解することに努めている。言葉の意味が掴めるまではできるだけ発言は控えている。質問をされたときも、本当に質問をしているのか、仲間に入れてくれようとしているだけなのかわからないことも多いので、確認や質問をしたり、それも圧にならないように気をつけながらやっている。
・家族に対する態度に本質的な部分が出ると思うので気をつけるようにしている。

○過去や現在で困っていることなど

・50代、60代の人たちにハラスメントを理解してもらうのが難しく、若い人たちとの板挟みになることがある。
・稽古場で自分の発言に俳優が傷ついているのではないかと考えてしまう。
・地方にいると女性のお茶汲みなどの慣例が残っていてが女性本人も差別を認識できていない状況がある。
・年齢の差や立場などの違いのある相手に対して、どうやって圧力をかけずに自分の意図を伝えたら良いのか、どういう言語を手に入れれば良いのか。
・年齢が離れている人に対して置き換える言葉が見つからずに途方に暮れている。
・パワハラ演出家の元で作品を作っていて毎公演終わったらもうやめたいと思っていた。
・昔の舞台スタッフあるあるだが、ナグリ(カナヅチ)を投げられたことがある。
・ハラスメント講習を受けたという人から強めのハラスメントを受けた。
・年下の人たちの言葉がまるで外国語のように意味が受け取れない時がある。
・年上に対して、受け止めてくれるべきだと思って失礼な物言いをしてしまったことがある。
・声の大きい出演者に若手の制作者が強く言われキャストと話すのが怖くて現場に行けなくなってしまったという現場があった。
・自分はセクハラをしない、女性を大切にすると公言している男性が、女性は弱いもので対等では無いという差別的な考えに気がついていない。
・ハラスメントを訴えても捉え方の違いだと言われてしまう。
・ハラスメントや差別的だと感じる時は、自分の話を聞いてもらえない時や、権力者の都合で物事が進んでいる時。
・時間のない時や、間に合わせないといけない時に圧力をかけがち。
・観客からの製作サイドへの心無い発言に傷つきやめていく人たちも見てきている。

○おすすめの書籍など

本当にたくさん紹介していただいてありがとうございました。
限られた時間の中でのご紹介だったので一言程度ですが、紹介してくれた方からのレコメンドも付けています。

●書籍

・性的マイノリティについて知らないと、ふとした一言が差別になってしまう。


 ・ハラスメントは差別の一種であるということを知り、差別とは何かを学ぶために読んだ本。レイシズムとは何かというと、レイシズムは人を殺す。


・人を殺すということの最たる例として戦争について。従軍慰安婦について。


・ハラスメントとは何か?モラルハラスメントの事例が辛くなるほど載っている。


・ケアするのは誰か?なんてことを気にする人すらいないという現状、ケアというのは女性の無償労働によって支えられている。


・女性について学ぶと声を上げたくなる、でも声を上げると叩かれる。そんな時に、黙らなくていいんだと思えた一冊。


・辞書のように使っています。なんか言われて変だなと思った時に、この本でしらべると、これはこういう意図があってこんな意地悪で言ってるんだということがわかる。


・自分(女性)はそんなにマイノリティじゃないと思ってたが、これを読んで女性(自分)はマイノリティだということがよくわかった。そして一ページごとに怒ることができます、怒り噴出です。女性が無視されているということがよくわかる。全ての表現者の方には読んでほしい。今までの日本の平和だった基準で作品を作ってしまうと、自ずと女性を存在させない状態の作品になってしまう。現在の不平等を理解して作品を作ってほしい。そうでないと観客として辛くて見ていられない。


・カップルで考えるとDVが起こるので、シングルで考えよう。
人間に必要なのは安全と自信と自由と成長。笑えないけどこの4つは今の日本に無いのでは?


・上野さんが男性を信じる理由に「信じるに足る男性に出会ったから」という言葉があり、そういった存在を目指そうと思えた。


・男性から見たホモソーシャルの滑稽さ。


・男の子がこれから起きるであろうジェンダーバイアスに負けずにフラットな視点を持ってほしい。


・風の木クリニックの精神科医高橋和巳先生。虐待を受けてきた子どもたちを支えるカウンセラーのスパーバイザーをされていたり、心の傷を抱えて大人になり二次障害として鬱になったり心の病を持つ人を診てきている先生。この先生はただただ聴く。相手の傷や苦しみを受容すること。「聞き方」が具体的に書いてある。慶應の文学部を出ている先生で文章も読みやすいです。


(すいません、以下2冊チャットでお薦めしていただいたと思うのですがチャットの保存をしそびれてしまって、紹介だけさせていただきます、すいません。)


話す会終わった後いただいたフィードバックで紹介いただきました。


●講座

・先日青年団の和田華子さんの「俳優・劇作家・演出家・制作者に向けたLGBTQ勉強会」に参加させてもらった、そこでもいろいろ参考文献なども教えてもらった。安易な置き換えは危険だが、いろいろなことにも置き換えて考えられる。


●Web記事
若い人たちからは自分の心情が丸見えなんだということがよくわかった。とても勉強になった。


ハラスメントと差別は同じなのか?


話す会の翌日に高校生とのワークショップをされた方から後日ご紹介いただきました。例えばワークショップで高校生たちの抱えるコンプレックスに触れることが、ハラスメントにつながってしまうかもしれない。


○今後の取り組みなどについて

・草の根が大切なので今回のような集まりは大切だと思う。
・耳を傾けてくれる人と手をとっていきたい。
・どのように圧力をかけずに自分の意図を伝えられるか講習があれば受けたい。
・ざっくばらんに話せる場があると良い。
・精神科の看護師としての経験を活かして、話を聞いて必要であれば医療に繋げる取り組みをしたい。
・ハラスメント傾向のある現場の情報共有。
・40代以上と区切ることでハラスメント傾向のある発言にも突っ込めると良い。
・ハラスメント傾向があると噂になっている現場にも、同世代から、そう言われてますよと突っ込めると良い。
・セクハラとパワハラ、ハラスメントと差別、加害と被害、さまざま違いがあるので細かくトピックを分けて話せるといい。


第0回を終えて、次回に向けて。

第0回は、2時間強、少なくとも僕にとっては本当に学びの多い時間でした。参加者の方からも貴重な時間になったというフィードバックもいただいて、本当にありがたい限りです。
人が話す、聞くという行為についても考えることも多く、話す、聞くということが、ハラスメント防止に直結することもあり、おそらくあの場では、この文字情報以上の情報共有がなされていたのではないかと思います。
ここまで読んでいただいて、40代以上の方は共感してもらえる部分もあるかと思います。
ただ若い世代の、例えば20代の方が読んだ時にはどういう感想を持たれるのか。
今後いかに若い世代との場を作れるかとは考えていますが、その場を作るのに自分がふさわしいかどうかは冷静に考えなくてはいけないので、さまざまな可能性を含めて考え続けていきたいと思います。
第0回を経て、ついに第1回を開催したいと思っていますが、それについては次回の投稿で進めていければと思います。
40歳以上という設定は何度か続けたいとは思っています。テーマや匿名性についても考えたいですが、第0回を経ていただいた場の設定についてのフィードバック、特に安全性の担保についてなどをアップデートして開催できればという予定ではおります。第0回はクロストークの時間は結局取らなかったので、第0回の参加者の方からも40代以上だからこそお互い突っ込めると良いのではというお話もあり、その通りだと思うので、安全性も考えながらその仕組みも上手く設定できればとは思っています。

とにかく本当に第0回にご参加いただいた方々ありがとうごいました。
みなさま今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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