反省と更生のあゆみ〜第一歩目〜アンガーマネジメントとハラスメント撲滅へ

演出家の多田淳之介です。

劇団東京デスロックの主宰、演出を2001年から始めてまもなく20年。2003年から現在まで並行して劇団青年団の演出部にも所属しています。

2010年〜2019年には埼玉県富士見市にある富士見市民文化会館キラリふじみにて芸術監督を務めていました。就任当時は33歳で公共劇場の演劇部門の芸術監督としては歴代最年少での就任でした。2015年〜2019年は高松市のアートディレクターとして高松市の文化行政のお手伝いをしていました。

現在は劇団や外部からの依頼での作品創作、東京芸術祭APAFアジア舞台芸術ファームというアジアの人材育成プログラムのディレクター、芸術系の大学での非常勤講師や、学校や公立施設で子供や市民たちとのコミュニケーションワークショップや作品創作などをしています。1976年生まれの現在43歳、妻と5歳の息子と暮らしています。

長々とプロフィールを書きましたが、今回投稿に至った経緯や投稿の内容にも非常に関連があるので、舞台芸術業界では若くして公共でポストを与えられてきた40代の演出家だ、くらいのご理解をいただければと思います。

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タイトルの通り、この投稿は数回にわたり反省と更生のあゆみを記していくものです。では、何を反省し、何を更生していくのか。

これまでも特にEメールやSNSなどのネットコミユニケーションにおいて攻撃性が増し、アンガーマネジメントの必要性を周りから指摘されていました。その点は自覚もあり、感情的になっている場合は下書きをして時間を置いてから投稿するなどの対処はしていましたが、徹底されていませんでした。

その背景には、舞台芸術の業界で、特に公共ホールの事業、教育関係、アウトリーチ、人材育成など自分が密接に関わってきた事業に対して、自分の体験を過信し自分の見解と違うものへの批判に正義感を感じ、誰かが声を上げなくてはいけない、今自分が声を上げることで後進に良い環境を残せる、という単なる個人の思い込みによる妄想に取り憑かれ、感情的に攻撃をする自分を正当化していました。それが正義どころか自分のキャリアや社会的地位、権力を他者への抑圧に使っているパワーハラスメントでしかないということに気がつけませんでした。

この度、過去に自分の立場や権力に無自覚にパワーハラスメント行為をしていたことを自覚しました。感情的なEメールやSNSでの発言、対面でも酒席で感情的な発言をしたこともありました。まずはこの場を借りてお詫びします。本当に申し訳ありませんでした。

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ハラスメントの加害者の多くが自覚なくハラスメントをしています。全く言い訳になりませんが、正義感や相手のためだと思ってやっているケースは少なくありません。

自分もそうでした。

先日もSNS上で攻撃的な発言をしてしまい、これまでの自分のパターンと同じく、勘違いによる正義感を振りかざして相手の名誉や評価を傷つける発言でした。関係各所には謝罪をし、引き続きできる限りの罪滅ぼしをしていく所存です。(先方の名誉を損する可能性がある為該当の発言は削除してあります。)

この件をきっかけに、これまでいかに自分が勘違いをしてきたか、過去の自分がしてきたことがいかに誤りであったかを決定的に自覚しました。どれだけ厚顔無恥な振る舞いをしてきたか恥じ入るばかりです。誤解を招かないために記しておきますが、主宰する東京デスロックは自分の言動についてはもはや何も言えませんが、集団として年下や経験の浅い人が買い出しに行かされたり、年上に敬意を強要されたり、立場や年齢によって不当に権利を侵害される集団ではありません。ただ個人として、劇団ではハラスメント防止の意識を共有し、公的な立場も経験している自分はハラスメントをすることはないと思いこみ、年齢が上がったのに自分に対する疑いを持てなかった。年齢が上がると難しいことかもしれませんが、やらなくてはいけないことでした。

今、舞台芸術の業界で自分の世代によるハラスメントの被害が増えてきています。どの口が言うかというのはわかっています、本当にすいません。自分としては、自分の未熟さを痛感したこの機に、自分が得ている立場や権力を他者への抑圧に使ってしまった事例とひとつひとつと徹底的に向き合い、まずは自分がこれ以上被害者を出さないために更生することを表明し、これまでに裏切り傷つけてしまった方々への反省の意を込めて、自身の未熟さ、至らなさを含め更生の過程を記していこうと思います。

そして、個人の問題を世代の問題にするつもりはありませんが、20代、30代と信じてきた自分の感覚がハラスメントそのものになる40代の記録として、少しでもハラスメント撲滅に役立つことを願っています。

反省をどう表すかということの難しさ、様々なご意見があると思います。現在は反省と更生の為1ヶ月の自主謹慎期間とし、公的な要素の強い立場で行う仕事は停止しています。反省と更生が今後問われると自覚しています。SNSなどインターネット上での発信もこちらへの投稿以外は謹慎します。ハラスメント行為には最大の注意を払いながら劇団での作品創作は続ける予定です。まずは家族や劇団、近しい人の協力を仰いで更生の足がかりにしたいと思っています。

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具体的な更生のための行動としては、まず自分の場合、怒りのコントロール、アンガーマネジメントが必須だと思っています。調べてみるとやはりハラスメントと直接的な関係にあり、さしあたって先日アンガーマネジメントによるパワーハラスメント防止の講座を受講しました。

自分に照らし合わせてみると、直接のパワーハラスメント構造(パワーハラスメントは社内や同じグループ内での直接の上下関係で起きる場合を差し、例えば取引先の上司や店員と客という関係は当てはまらない)ではなくても、自分が優位性を感じる状況なら攻撃性が増すということがわかり、自分の抱えていたインターネットコミュニケーションでの攻撃性の問題はここに由来していたのだと思います。インターネット上での対面ではない関係は一方的に攻撃できる関係でもあり、相手からすぐに攻撃されない状況を優位性と錯覚し、パワーハラスメントに極めて近い構造で攻撃していたのだと自覚しました。それに気づかず、特に相手が雇い主であったり劇場や指定管理者、自治体という大きな存在であることで、これはハラスメントや攻撃ではなく批判の声だと思い込み、全く自分の行動を客観視することができていませんでした。自分の年齢やキャリアに対する自覚も足りていなかったと思います。

怒りの多くの原因はcore beliefと現実とのギャップ、「〜べき」なのに違う、という思い込みだそうです。おそらくアンガーマネジメントの書籍などには最初の方に書いてあることだとは思いますが、当事者、加害者として見事に言い当てられた思いです。考えてみれば当たり前です、どうでもいいと思ってることに対して怒りが生まれるわけがありません。どうでも良くないこと、自分の信念とも呼べることに対して怒りは生まれやすい。自分が怒ってきたことを振り返ってもそうであったと思います。だから様々な理由をつけて正当化してきてしまいました。信念を守るために怒るというと怒りを正当化しているように聞こえるかもしれません。正当な怒りというのもあるのだと思います。ただ問題は怒りではなく怒った後の行動で、自分の場合もそこに大きく問題がありました。

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アンガーマネジメントは直訳すると「怒りの管理」ということになりますが、受講した講座によると「後悔しない怒り」という意味で考えているそうです。怒り自体は否定せず、もちろんできるだけ怒らないに越したことありませんが、生きていく上で怒らないということは不可能です、悪や不当なことに対しては怒るべき時もあるでしょう。「後悔しない」という言葉もいろいろな捉え方があると思いますが、自分は「後悔しない=誰も傷つけない」と解釈することにしました。どんなに正当性のある怒りだろうと、それによって誰かを傷つけることには何の正当性もない。本当に当たり前すぎて、こんなことすら理解できずにいたのかと思うと本当に恥ずかしすぎる。ちゃんと恥をかこうと思います。わかっていませんでした、すいませんでした。

子育てをしていると子供に対してどう怒るか、叱るかということに毎日直面します。親という最強の立場とパワー、教育という免罪符も与えられています。毎日上手くいかないことばかりですが、今は呪文のように何かあるとまずは頭の中に「べき?」と問いかけるようにしています。「後悔しない=誰も傷つけない」という考え方も子育てにも当てはまると感じています。怒ると叱るの違いもその辺りにあるのかもしれません。

知ったような書き方になってしまいましたが、アンガーマネジメントはまだほんの入り口の知識を得ただけで具体的なトレーニングはこれからですが、過去の自分の行動がいかに他者を無自覚に傷つけていたのかを突きつけられる日々です。恥ずかしながら誰もがハラスメント加害者になる可能性があるということをこれまでも見てきたつもりでした。年齢的にもキャリア的にもハラスメント防止の環境を作らなくてはいけない立場でもあります。これまで自分のことを信用して仕事や友達付き合いをしてくれた方々に対してどう説明をしていけばいいのか。少なくとも自分の立場や権力に無自覚にパワーハラスメントを行ってきたことを自覚したということは表明すべきだと思いました。具体的にはSNSでの発言やEメール、Slackなどのインターネットコミュニケーションツールでのやりとりで顕著に現れる傾向にありました。対面でのハラスメントが無かったとは言いません、少なくとも酒席で自分の立場や権力に無自覚に感情的な発言をして関係者に謝罪をした件もあります。最近のSNSへの投稿についてハラスメント性があると友人からの指摘を受け、ようやく自己を振り返ることができ、深い反省とともに更生を始めることにしました。そういう状況であれば現在お願いしている仕事は取り下げたいということも当然あるかと思いますので遠慮なく連絡ください。

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第一歩目の投稿として、まず謝罪と更生の表明させていただきました。今後もアンガーマネジメントの経過報告を中心に反省と更生の記録を投稿していきます。今回のように整理し切れていない投稿になるかと思いますがご容赦ください。自分でもまだ自覚し切れていない点含め、様々なご指摘、ご意見あると思いますので、お叱り含めいただければと思っております。

ご心配をおかけしてしまった方もいると思いますが、家族、友人、金魚や小鳥や古代魚や亀やカメレオンに囲まれ変わらず過ごしています。更生するにも元気でないとできませんから、元気にやっています。

最後に、現在ご迷惑をおかけしている仕事相手の方々、重ね重ね本当にすいません。お恥ずかしい限りですが、引き続き何卒よろしくお願い致します。

多田淳之介



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